この本は元々は八世観世銕之亟師の三回忌追善能の際に観客に配布されたものですが、私は東京の観世能楽堂に行った時に能楽堂内の檜書店にて購入したものです。同人誌のようなシンプルな装丁の目立たない本なのですが、かえって手作り感が出てよい感じです。

　機関誌『銕仙』などに師が書かれた文章の集積で、飾り気のない普段からの能に対する姿勢が現れるとともに、銕之亟師の若いころとその後との文章が並んでいたりして、考え方の変化が見えるのが面白いです。

　表紙を開いてすぐのページにある師の舞囃子『野守』の写真は、購入の時に『野守』の舞囃子を舞うことが決まっていた私の、一つの理想の形となったものでした。当然ながら、写真の気迫には遠く及ばないものではありましたが、舞台の前に何度もこの写真を見て思いを深めたものでした。師が『野守』について書かれた文章もあります。

　一般に流通している本ではありませんが、発行元の銕仙会のサイトで購入することができます（はず）です。

（2003/11/14）