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能・狂言の音楽といえば、囃子を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。囃子は楽器の演奏ですから、間違いなく「能・狂言の音楽」ですが、一方で謡もリズムと節回しという旋律を持つ声楽です。謡は能だけではなく、狂言でも多くの謡が謡われ、間違いなく謡も「能・狂言の音楽」であると言えます。 しかし、能・狂言の音楽は西洋音楽のように音楽のための音楽というのは少なく、あくまで能や狂言の演技のために謡われたり囃されます。しかし、演技に謡や囃子が従属しているわけではなく、囃子は能や狂言の中で演奏しているというよりは演技しているのではないでしょうか。 今まで述べてきた様に、能や狂言において純粋な音楽的要素だけを取り出すのは難しく、かつあまり意味がないので、結局、この『能・狂言の音楽入門』は能の音楽性に重点を置きつつも、能・狂言全体の解説書となっています。 「入門」とはいいつつも、謡・囃子などの解説はかなり専門的な内容があり、能を習って実際に演じたり、もしくは研究する人には必須かもしれませんが、「入門」だと思って手に取ると痛い目を見ます(私は見ました(笑))。しかし、ある程度の知識を身に付けた人には、より深い能・狂言の世界を案内してくれる本と言えるでしょう。 (2004/10/29) |
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