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観世銕之亟能がたり

(八世)観世銕之亟

暮しの手帖社 2000年08月

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 私にとって、この方の能は見ておきたかったと悔やんでならないのが、この本の著者・八世観世銕之亟(静雪)師です。兄の寿夫師もいくつかの本や写真、残された音声を聞く限り、非常に興味をそそられる方ですが、何せ亡くなったのが私の生まれる以前の話。時間的に無理です。しかし、静雪師に関しては私が能を見始めた後に没されたわけで、その点をどうしても悔やんでしまいます。

 私が紋付姿での舞囃子の写真だけでこんなに魅せられた方はいません。『勁き花』の表紙裏にある『野守』の写真や、この本にある『羽衣』の写真。装束によって飾らなくとも芯の通った強さ、制止している中の緊張した体が伝わってくるかの様です。写真ですらこうなのですから、せめて生の舞台を仕舞一番、謡一句でも味わいたかったと願って止みません。

 しかし、静雪師の言葉はこの本『ようこそ能の世界へ』に残されてます。元々、『暮らしの手帖』に連載されていたものに、静雪師が師事された銕之丞家歴代(華雪、雅雪、寿夫)とご自身についての章を加えて編集された本ですが、途中から体調を崩され、本が完成した時には既に他界された後、忌明けに静雪師の偲ぶ本として出版されたようなものだったといいます。(『勁き花』あとがきより)

 内容に関していうと、能の入門書なんでしょうが、辞書的な知識はほとんど書いてありません。曲目の紹介も必要に合わせて少し触れるだけで、そんなことよりも素直に感じることこそが能を見る上で大切なことであり、演じている側としても独り善がりにならず説明的にもならず、素直に感じてもらえる舞台を目指してらっしゃったことが書かれています。

 この本は能を感じる助けとなるように書かれているわけで、少し能を見慣れた方にも是非オススメしたい本です。私も理屈ばかりこねてないで、もっと素直に能を見るようにしようっと。

(2004/11/08)

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