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横浜能楽堂館長である山崎有一郎さんの米寿に企画された講座『米寿の能楽博士 能・狂言88の質問』を元に本にしたものです。 NHKの葛西聖二アナウンサーの司会と併せて、ユーモアたっぷりに語られます。例えば「五流全部の謡を制覇なされたという話、本当ですか。」「私はコンゴウリュウです」「ええっ!金剛流ですか?」「いや、金剛以外の四流は習ったから混合流です」というやり取り。本文の2ページ目にあるものですが、これで私はすっかり魅せられてしまいました。 能と狂言の基本知識から、少し分かってきたら知りたくなって来るような突っ込んだような話もあります。話によっては、学説と違うのではないかな、と思う部分が1つ2つはありましたが、それは読者がただ"能楽博士"の山崎さんを頼るのではなく、この本を読み終えた後もより深く知っていくことで補えば良いのではと思います。 そんな些細なことはともかく、この本の何よりの魅力は、研究家であった父の山崎楽堂さんについて、幼い頃から能や狂言に触れ、そして米寿を越えた今でも触れ続けてらっしゃる山崎さんの、能・狂言に対する「目」を感じることができることでしょう。この本の最後「能楽博士の蘊蓄V 能の観賞」にこそ一番大切なことが書かれている様に思いますが、これも山崎さんの経験を踏まえた上で、初めて重い言葉となって心に響いてくるのです。 読みやすいながら、能・狂言と山崎さんの懐の深さを感じる様な本でしょう。 (2004/10/29) |
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