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六平太藝談
(十四世)喜多六平太

光風社出版 1973年10月

 明治から昭和を生きた名手で、シテ方喜多流十四世宗家の六平太師の芸談です。

 弟子の後藤得三師による聞き書きのようですが、本当に喋ってらっしゃること、そのままなのだろう、というのが想像できる文体です。それだけに人物を指すときは「じいさま」(十二世喜多六平太)、「友枝のじいさん」(友枝三郎)、「鈴さん」(坂戸金剛最後の宗家、金剛右京の前名・鈴之助のこと)といったような、ちょっと分かりづらい表現が出てくることもありますし、ちょっとした折に仰った芸に対する注意などを収録してあるようなので、専門的なところも多いですが、とにかく喜多家を再興した人物としての気迫あふれた本で、一気に読んでしまいました。

 喜多家を継いだ後の、分家・弟子家をまわっての修行中の苦労談なども多いですが、その結果会得された理知的で深い曲目理解が、少々難解ながらも読み応えがあって、楽しかったです。また谷干城の話などは明治・大正という時代を感じさせるものでもありました。

 この『六平多藝談』は、初め、戦時中の1942年に春秋社から出版され、その後いくつかの出版社から何度も再刊されたそうで、私の読んだ本はその中の1バージョンなのでしょう。

(2003/11/14)

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