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「能楽への招待」というぐらいですから入門書です。しかし良くあるストーリーや見どころを解説したような本ではありません。観世流シテ方梅若家の一員としての実際の舞台上での演技、または練習を通して考え込まれた能の本質に関する入門書です。 例えば『翁』に関して。舞台上で面をつけた翁は舞に入るところで、梅若家に伝わる型附(振付を記した本)にはこう書かれているそうです。 「体ハソル心、両眼ヲフサグ」 実際に体を反らせるわけではなくて体を反らせる「気持ち」なって、そして面の中に隠された外からは見えない目を閉じる。演技的に何らかの意味があるのか不思議に思います。しかしその内面の動きを体現することこそ観客に何かを伝えるきっかけになる。梅若猶彦師はそう、説きます。 能舞台や装束、面、役柄、歴史といった基礎知識に関しての記述ももちろんあります。しかしそれ以上に能の演技とは?能の型とは?能の最高の境地とは?とそういったことを解き明かそうとした名著だと思います。 …後半になると一読ではちょっと理解しきれなかった部分も多いです。しかし、一応読んでおくことでいつかふと分かる日もあるかもしれません。 (2003/12/18) |
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