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山本東次郎師の狂言論を説かれた『狂言のすすめ』の続編です。 前著と基本的な方向性は同じで、「喜劇」「笑い」といった観念に埋もれて見過ごされることの多い心理劇としての狂言を一曲一曲丁寧に掘り起こされています。 『狂言のすすめ』を書かれてから時間があいての著作であるだけに、東次郎師のお考えもより深められたのか、前著では少々考え過ぎではないかと思えた箇所もあったのですが、この『狂言のことだま』はすんなりと東次郎師のお考えに沿うことができます。 また狂言の本ではあまり触れられることのない、能との関わりについて第一章「能と狂言」、第三章「間狂言の役割」で触れられています。特に「能と狂言」では世阿弥の著書にある「幽玄の上階のをかし」を引用しつつ、狂言の理想を語られている箇所は、東次郎家だけでなく能と共に発展してきた狂言としては広くあって欲しいと思います。 「間狂言の役割」では謡本には書かれていないためか、研究ですら無視されることの多い間狂言ですが、アシライアイ(直接シテと関わるアイ)にこだわらず居語リや立チシャベリのアイでも能に欠くべからざるものであることがよく分かります。この本で最も感銘を受けたのが「幽玄の上階のをかし」のくだりです。読んで以降、この言葉が狂言を語る言葉としては最も好きなものとなりました。『狂言三人三様 野村万作の巻』で野村万作師が好きな言葉として挙げられたのを読んで、思わず喝采をあげたい気持ちになったほどです。 関西でも生の山本東次郎家の狂言が見たいなぁ。 (2004/11/25) |
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