落語と能楽の囃子

『上方芸能』163号

落語の囃子《中之舞》と能の《中之舞》

昨日は神戸女子大学の古典芸能研究センターに行って、興味のある資料をひっくり返していたのですが、ちょっと気分転換に雑誌『上方芸能』163号(2007年3月)を読んでみました。天満天神繁昌亭の開席記念で、上方落語の特集号でした。

そこに笛方森田流の能楽師で、長年の落語ファンでもある帆足正規師がコメントを寄せてらっしゃるのですが、落語の囃子の《中之舞》は、能の囃子の《中之舞》を忠実に受け継いでいるといった内容でした。

帰宅して早速、桂枝雀さんのCD『枝雀落語大全』第7集の「鴻池の犬」を聞きました。この録音での出囃子が「中之舞」なのです。

最初に天、天と太鼓が入って、一拍おいてからオヒャーと笛が入る。(なお、この「天」は太鼓の打音を意味します。「オヒャー」は唱歌とよばれる、笛の音を文字に置き換えたもの)

能の囃子の《中之舞》でも、段が変わる部分では太鼓がホォ天、イヤー天と打ってから、一拍息をつめて笛がオヒャと吹き出します。つまり太鼓の掛け声が入ってないだけで、全く同じ。三味線は入ってますけどね。

試しに私が習っている大鼓の手を打ってみても、しっかり合います。本当に能の中之舞の囃子を忠実に受け継いでいるんですね。

生でも落語囃子の《中之舞》聞いてみたいものです。繁昌亭に通えば聞けますでしょうか。

《中之舞》だけでなかった共通の囃子

なお、桂米朝さんの『桂米朝艶笑落語 続いろはにほへと』というCDに入ってる《早笛》という囃子も、能の囃子《早笛》から来ているのではないかと思います。

ただ、この《早笛》のトラックはたった12秒しかありません(^^;) 笛の音がそれっぽいなぁと感じるぐらいで。じっくり聞くというわけに行かないのが残念。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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2件のフィードバック

  1. いちかわ より:

    鞨鼓もあったような覚えがありますねー。

  2. いちかわさん、コメントありがとうございます。
    桂米朝さんの出囃子が「三下り鞨鼓」ですよね。
    あまり気付いたことはありませんが。