久しぶりに東京で能と狂言を見ました
先週の後半から日曜日にかけて、法政大学能楽研究所と能楽学会大会に行くために、東京に行っておりましたのですが、ちょうど日程が良いので、初めて宝生能楽堂に参り、銕仙会定期公演を見てきました。狂言が《千鳥》でシテ山本東次郎。能が《江野島-道者》でシテ観世銕之丞。
取った宿が宝生能楽堂から歩いていける距離なので、法政大学能楽研究所を出てから、宿に荷物だけ置いてから宝生能楽堂へ向かったのですが、あまり時間に余裕がなく慌てていたら…なんとしばらく宝生能楽堂と真逆の方向へ歩いておりました(大汗) そんなわけで、遅刻してしまい、山本東次郎さんの《千鳥》が見られたのは後半のみです。ああ、せっかくの東京での狂言鑑賞が残念なことに。
でも、《千鳥》は楽しかったです。山本東次郎さんと相手の山本則俊さんのやりとりが安定していました。山本東次郎家の狂言を見るのは、もう何年ぶりのことでしょう。他の家の狂言とは少し異質なんですが、それが又とても面白かったです。でも、まだまだ私には「変わっている点」にばかり目がついて、本当に楽しんでいるとは思いづらい。関西でも見る機会があればなあ…と思います。京都で催された大蔵流五家狂言会が見れなかったのは痛いなあと反省しております。
能《江野島》は珍しい!
一方の能《江野島》は初めて見ました。観世流のみの上演曲ですが、その中でも上演の少ない稀曲。しかも間狂言が替の「道者」となると、この機会に見ておこうと、チケットを申し込みました。
実際の上演を見てみると、いかにも風流能で、シテ・ツレのほか子方が2人、ワキ方が3人、間狂言はたくさんと、とても出演者が多くて、時間もかかりました。龍神ものなので1時間ちょっとぐらいだらうと想像していたのですが、実際にはそれより1時間以上長く、2時間半ぐらいかかりました。
能《江野島》は『江島縁起』に拠った能らしいですが、五頭龍王が人を殺すので、弁才天が汝が悪心を翻し殺生を止めこの国の守護神とならば、夫婦の語らひを我為すべしと言ったところ、収まったと謡われています。これを聞いて、「暴れる不良が可愛いお嫁さんもらって用心棒に宗旨替えした」みたいな話だなと、低レベルの想像をしておりました(^_^;)
前場が終わると、替の間狂言「道者」が始まります。道者とは参詣客の意味なんだと見ていて初めて気付きました。
参詣ながら物見遊山気分なので、勧進聖からの勧進の案内を渋り、最終的には断ります。怒った勧進聖が祈ると、鵜の精が現れて威力を示し、畏れ入った道者たちは勧進に応えるという内容でした。以前に見たことがある《白髭》の同名の替間「道者」と似ていますが、《白鬚》の方は鵜の精ではなくて、鮒の精です。
面白かったのは勧進聖が、腰に柄杓をさしていたこと。茶屋でもやっているのだろうか、と想像していたところ、道者たちに勧進を勧める場面に柄杓を差し出して、柄杓のすくう部分に、勧進の銭を入れるのだと分かりました。《白髭》の道者はどうだっただろうか。記憶が曖昧で思い出せません。
能《江野島》後シテ五頭龍王は、袷狩衣に半切、赤頭で面は真蛇。打杖ではなく、扇を持っていました。龍載が大きいなと思ったので、翌日の能楽学会大会の懇親会で、銕之丞先生に直接お尋ねしてみたところ、あれは「五頭龍」という《江野島》専用の龍載と仰せでした。
登場額は早笛ですが、走り出るというほどでもなく、重々しい出。白頭でも良いのではないか、というのが私の率直な感想でしたが、観世流大成版謡本に小書は「無シ」とあるので、勝手なこともできないですよね。
銕仙会 定期公演
2016年5月13日(日)18時~。於・宝生能楽堂
★大蔵流狂言《千鳥》
シテ(太郎冠者):山本東次郎 アド(主):山本則孝 アド(酒屋):山本則俊
後見:鍋田和宣
★観世流能《江野島-道者》
前シテ(漁翁)/後シテ(五頭龍王):観世銕之丞 前ツレ(漁夫):北浪貴裕 後ツレ(弁才天):観世淳夫
子方(十五童子):長山凜三・馬野訓聡 ワキ(勅使):宝生欣哉 ワキツレ(従者):則久英志・御厨誠吾
アイ(勧進聖):山本泰太郎 アイ(道者):山本則重・水木武郎・山本則孝・寺本雅一・山本則秀
アイ(鵜ノ精):山本凜太郎
笛:藤田次郎 小鼓:吉阪一郎 大鼓:亀井広忠 太鼓:小寺佐七
地頭:浅井文義 後見:浅見真州・清水寛二・西村高夫
間狂言地謡:山本東次郎・山本則俊・山本修三郎
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