29日の土曜日、京都観世会の若手による新企画「面白能楽館~お能でいっぷく~」のため、京都観世会館に行ってきました。
まず来場者数が非常に多い! 絶対に京都観世会館の収容人数は超えてたはずです。私が着いた頃(9時40分ぐらい)は正面席が埋まっていたぐらいで、まだまだ余裕があったのが、開演時間には立ち見がワラワラ。最初の半能『巴』の上演を少し遅らせて、会場整理が行われたらしいですが、大した効果があったようには見えませんでした(笑)
朝10時から17時までの間に舞台で能を3番見せ、それ以外の時間には舞台で能面・能装束の体験、ロビーで能面の解説や能装束着付の実演解説・絵本語り、2階の、普段は喫茶店になっている場所で、謡・仕舞の体験がなされていて、来場者が自由に行きたいところへ行く、という形になっていました。
中でも人気があったのは味方玄師による能面や能装束の解説。一階ロビーの端で行われていたのですが、凄い人数が集まって、後ろの通り抜けもできない程。内容も面白かったのですが、私は後ろの方でしたし、盛り沢山過ぎて、ちょっと書けません(笑)
謡・仕舞の体験は、私はお稽古を受けていたしと敬遠していたら、普通の謡や仕舞以外に、長刀や太刀・『土蜘蛛』の巣投げなど盛りだくさん。私は巣投げはやったことがないので、素投げをすることにしました。ちなみに本物の巣は使い捨てなので、千円の実費が必要でしたが…それぐらいなら安い!
作り物を巻くための布(”ぼうじ”と呼んでました)による練習を数回した後「これが実弾です(笑)」と本物を渡され、ついに来た緊張の一瞬! パァッと見事に開いて、指導の先生にも「普通はこんな飛ばないんですけれどね」と褒めていただきました。ただ奥の方で他の体験をしてらっしゃる方々を絡め取ってしまったのは申し訳ない(笑) しかし、巣投げは理屈を超えて楽しかったです。『花よりも花の如く』2巻で陽一さんが「一度やるとくせになるぞ。キモチいいよー」と言ってるのが分かってしまいました。
↑使用前 ↓使用後
三番あった能もなかなかの熱演。『巴』のシテ・梅田嘉弘師は力が入り過ぎたのか、ちょっと手が震えてるのが気になりましたが。『一角仙人』で、一角仙人が旋陀夫人の酒と色香でだんだん舞に誘われて行く様子が良いですね。堕落といえばその通りですが、男として一度は味わってみたいシチュエーションです(笑)
『土蜘蛛』は巣を散らしまくるサービス満点の演出で、ワキ正面最前列で見ていた私まで何度か掛かりました。番組には何も小書は書かれていませんでしたが、前シテの怪僧とワキの独武者が橋掛りで一瞬対峙する「入違之伝」。これ好きです。
頼光の語りが終わると、間狂言抜きの短縮バージョンだったのに、すぐ後シテの入った塚が出てきてびっくり。前シテの怪僧が着流しで着ていた青海波の厚板をそのままに、半切の袴と黒頭だけつけて法被は着ずに、面は塚の中で付けるという工夫の賜物です。法被なしでも、面がいかにも”悪鬼”という感じの、色の黒くて表情の厳めしいものだったので、かえって素早く暴れ回る雰囲気が出ていました。ワキ独武者は更に時間がないので、掛直垂の袖を肩まで上げて侍烏帽子を鉢巻に換えただけ。
京都高安流の原大師・小林努師のワキを拝見するのは久しぶりですが、いかにも質実剛健って感じが好きですね。ただ原大師が「崩せや崩せ人々よ」とワキツレを指しても、小林努師一人しかいないのは少し寂しかったです(笑) あと後ワキの登場の謡の言葉が、観世流謡本と全然違ったような…高安流謡本を見て確認してみたいものです。
実際の演能の前に、実演を交えた解説が行われましたが、あれはかなり良かったと思います。「向こうから出て来たのは旋陀夫人という美女です…美女には見えませんが、無視してください」とユーモアも交えて。初めて能を見る人にも優しい会だったと思います。
ともかくも朝10時から17時まで、とっても楽しい能楽漬けの時間でした。とりあえず能の配役のみ記しておきます。
面白能楽館 ~お能でいっぷく~
◆7月29日(土)10時~ 於・京都観世会館(京都市左京区)
★解説 井上裕久ほか
★観世流半能『巴』
シテ(巴御前)=武田大志
ワキ(旅僧)=小林努
笛=杉市和 小鼓=曽和尚靖 大鼓=石井保彦
地頭=河村和重
★観世流能『一角仙人』
シテ(一角仙人)=吉浪壽晃
ツレ(旋陀夫人)=分林道治
ツレ(龍神)=大江泰正・大江広祐
ワキ(官人)=原大
笛=杉市和 小鼓=曽和尚靖 大鼓=石井保彦 太鼓=井上敬介
地頭=杉浦豊彦
★観世流能『土蜘蛛-入違之伝』
前シテ(怪僧)/後シテ(土蜘蛛)=大江信行
ツレ(源頼光)=味方團
ツレ(胡蝶)=松井美樹
ワキ(独武者)=原大
ワキツレ(独武者の従者)=小林努
笛=杉市和 小鼓=曽和尚靖 大鼓=石井保彦 太鼓=井上敬介
地頭=浦田保浩
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→かえでの徒然雑記: 面白能楽館
→Rotter’s Blog:「面白能楽館」のインプレ
はじめまして! 山吹と申します。
お能の開催の案内を参考にさせていただいてます!
面白能楽館、私も行きました。 面白かったですよね~♪
私もはじめての書き込みです。
こみこみと申します。よろしくお願いします~
私も行きましたよ。京都在住ではないのですが、8時半に現地に
着いてしまいました(笑)能役者さんたちのご出勤と同時です。
でも、既に列はありました・・・
体験教室よかったですね。
私自身もお稽古をしてる身なので最初は遠慮していましたが、
一回試してみたらなし崩し的に・・。
蜘蛛の巣投げ(もちろんホンモノ)、太刀、薙刀など堪能しましたよ。来年も企画(予定)との噂です。
以前の話ですが、大阪能楽会館の能楽教室にも行かれてるんですね。私も参加しましたので、絶対どこかでお会いしてますね(爆)
本当に盛りだくさんで楽しかったですよね。
こみこみさん、来年もあるのですか?
また参加したいなぁ(笑)
私は面をかけて舞台を歩きました。
木目がよく分かるんですねぇ。驚きました。
今度は小面か般若をかけてみたいです。
はじめまして
ワタクシも行ってました。途中で泣く泣く帰らなくてはなりませんでしたが、とても楽しかったイベントですね。
またこういった催しをしていただきたいと思います。とてもたくさんの人が来られていて驚きました。能がとても身近に感じられたような気がします。
ワタクシの息子も「巣投げ」(投げ巣だと思ってました・・・(^▽^;))体験しました。本物を投げることが出来て息子も感激していました!
友人のご主人の味方玄師に加えて、笛が私のお師匠様だし、一角仙人の地頭は元お師匠様、土蜘蛛の胡蝶は後輩だったので、ぜひ行きたかったのですが、仕事を休めなかったので泣く泣く断念しました。
でもこんな会なら、初めての方もそうでない方も、また違った面から能楽と触れることができるので、ぜひ続けてもらいたいものです。(^^;)
な、なーんと!
土蜘蛛の糸を投げさせて貰えたんですか!?
うらやましいなぁ~。私も一回やってみた~い
よいな、よいな~。
家庭の事情で遠征がままならぬようになったので涙を呑んであきらめましたが、そうでなければ当然新幹線に乗ってかけつけました。
しろさん同様、蜘蛛の糸、私も投げたい~!
来年またあるようなら、ぜひ行けるように手を打たねば。
面白能楽館 その壱
本日、観世会館で『面白能楽館』という催しがあった。自称『伝統芸能継承者』を名乗
面白能楽館~お能でいっぷく~
学校のクラスメイト達と一緒に、 京都観世会の若手能楽師による新企画 「面白能楽館~お能でいっぷく~」に行ってきました。 観世会館に着くと、入り口には入場を待つ人たちの長蛇の列! こんなの初めて見ました!(笑) 会館内には、能装束が展示されていたり、 能楽分
いいな!
能も見たいし、蜘蛛の糸も投げたいです~。
解説も、とーっても工夫されてますねえ。
久々にお会いできましたね。
お顔を覚えててよかったです(^^;
『土蜘蛛』の高安流ワキ方の言葉、やっぱり観世流とは少し違うそうで。
とくに後ワキの一声は全く違うみたいですよ~。
お返事が滞ってまして申し訳ありません。
拝読させてはいただいているんですが。
★山吹さん
初めまして。コメントありがとうございます。
拙ブログ・拙サイトご覧下さってありがとうございます。
面白能楽館、名前の通り面白かったですね。
また催して欲しいものです。
★こみこみさん
初めまして!
最近また新しく書き込んでくださる方が
増えて嬉しいです。お返事が遅いのが申し訳ありませんが。
8時半に到着って早いですね!
私はまだ大阪にいたころではないかと思います。
既に列があったとは…ファン恐るべし。
でも、9時40分ぐらいでも余裕はあったんですけれどね(笑)
大阪能楽会館の能楽教室は大好きで、ほぼ毎年行ってるかも
しれません。もしお会いする機会がありましたら、よろしく
お願いいたします。
★かえでさん
毎年恒例のイベントになったら楽しいですよね。
面をかけたら、足の裏で舞台を感じるって部分、
確かにあると思います。
ただ私が舞台上で演じたことのある役って、
激しい役で、しかも修行不足の為、余裕がないので、
O槻先生に「舞台から落ちるよ」とひたすら言われた
覚えも(笑)
★YKさん
初めまして。コメントありがとうございます。
途中退場は残念でしたね。それでも息子さん共々、
とっても楽しまれて良かったです。
『土蜘蛛』の巣投げ、癖になりそうな面白さですよね。
次は仕舞とか、実際に謡にあわせて投げてみたくなる…(笑)
★とりあさん
とりあさんにとっては、とっても親しい出演者の多い催し方だったのですね。
京都で学生能楽部以来、ずっとお稽古を続けてらっしゃったら
そうなりますかね(^^;)
これからも是非とも続けて頂きたい催しですね。
★しろさん
『土蜘蛛』の巣投げは、当日のサプライズ企画でした。
私が投げた時はよく開いて、奥のほうで、仕舞の体験をなさっている方々を
絡めとってしまい、
「手足に纏わり。五体をつづめて。呆れ果ててぞ立ったりける」の
謡通りでした(笑) あきれ果てるの意味が違う!?
是非とも、しろさんもいつか機会を見つけて、投げて下さいね。
★杜若さん
遠征がままならないというのはちょっと残念でしたね。
とっても豪華で(これが1500円なんですから)、盛りだくさんの会でした。
来年もあるのでしたら、是非とも手を打って、手回しをして、
いらっしゃって下さいね。楽しかったです。
★花兎さん
能の実演と、部分部分の体験と、解説と、装束などの展示と…。
能楽に関して、体験できる限りのことを、若手能楽師の方々が
本当に工夫に工夫を重ねられた様子が感じられる催しでした。
大阪でも負けじとやって欲しいです。大阪ひいきの人間としては(笑)
★ちひろさん
久々にお会いできて良かったです。
携帯電話にメールが入った時には、どこから!?とびっくりしましたが。
やっぱり違ったですよね。
後ワキの謡は「土も木も。我が大君の…」だったと思っていたのが
全く違って。高安流の謡って何で確認できるんでしょうね。
前売り 買ってたんですけど いけなかったんですよねぇ。
大変だろうけど こんな企画続けていただけると うれしいです。
チケットを手に入れてらしたのに、
行けなかったなんて、残念ですね。
来年からも続いてくれたら嬉しいというのは同感です。
美樹先生が「え、柏木さんきてたの?声かけてくれたらよかたのに~」とおっしゃってましたよ。(笑)
ちなみに美樹先生は謡・仕舞のところにおられたそうです。
★とりあさん
京都の能楽師の方って、今ひとつ顔を存じあげないものでして…(^^;)
名前は入力するんで、馴染みがあるんですけれど。
松井美樹師も『半蔀』を拝見したぐらいで(苦笑)
謡・仕舞体験の受付を杉浦豊彦師がされてましたし、
杉浦家一門だったのでしょうか。