大蔵流狂言鑑賞会

 今日は休み。でも「28日は特に行きたい会もないのにぃ~」と言っていた私。しかし、当日になって阪急豊中駅前のゆやホールで、善竹家の「大蔵流狂言鑑賞会」があることを知りました。そんなわけで、慌てて見に行く私。少し遅刻してしまい、『千鳥』の途中に到着。そのため、主人役が誰か分かりません(苦笑)

大蔵流狂言鑑賞会
◆7月28日(金)18時半~ 於・ゆやホール(大阪府豊中市)
★大蔵流狂言『千鳥』
 シテ(太郎冠者)=善竹隆平
 アド(酒屋)=善竹隆司
 アド(主人)=上西良介
★大蔵流狂言『水掛聟』
 シテ(聟)=善竹忠亮
 アド(舅)=善竹忠重
 アド(妻)=上吉川徹
★大蔵流狂言『伯養』
 シテ(勾当)=善竹忠一郎
 アド(座頭伯養)=善竹隆司
 アド(檀那)=道下正裕

 この狂言会、大学一回生の時以来、何度見に行ってるのだろう? 小じんまりとしているけれど、好きな会です。善竹忠重先生・忠亮師親子の狂言はちょくちょく見ていますが、善竹忠一郎師ご一家(忠一郎師・隆司師・隆平師)の狂言は少し久しぶり。

 『千鳥』はお代も払わずに、酒屋からなんとか酒樽を持って帰ろうとする知恵者の太郎冠者の話。話好きの酒屋に、尾張の津島祭の話をして気を引きますが…。

 善竹隆平師・隆司師ご兄弟の掛け合いは、騙す方と騙される方との、ほど良い緊張感があって。でも「対立」というほどでもない。親しい話仲間という間柄で、最後の流鏑馬の話をしているあたりでは、「馬場退け、馬場退け」「お馬が参る、お馬が参る」と二人で楽しんでやってるという感じがとても良かったです。

 それにしても最後に太郎冠者が酒樽を手にして橋掛りまで行った時、酒屋が慌てて「この樽を何処へ持っていく」と声を掛けますが、そのやりとり。「これか。これは頼うだ人へ」「頼うだ人へ」「お馬が参る」(笑) 大好きなセリフです。

 『水掛聟』、耕作人の聟と舅の間で起こった、田の水争いを描いた曲。お互いに相手の田から自分の田へ水を取っている内に争いになってしまいます。

 これも大好きな狂言です。二人ともドロドロになりながら、水や泥を掛け合ってる姿が、なんだか微笑ましくて。もちろんお百姓にとって、田の水は死活問題なので、悠長なことは言ってられないのでしょうけれど…。

 最後に舅と聟が組み合っていると舅の娘、聟にとっては妻である女性が登場しますが、最後は聟と一緒に舅を打ち倒して帰ります。その時の言葉。「のう愛しい人。こちにおりゃれ」「参るぞ」。激ラブですね(笑) 最後に「やるまいぞ」と帰る舅の背中に、親の悲哀をちょっと感じたりして。

 『伯養』は、初めて見た狂言ですが、伯養という名前の座頭(盲目の芸能者)と勾当(座頭よりも位が上の盲目の芸能者)が、同じ家に琵琶を借りに来て争いになる話。十徳に狂言袴・能力頭巾の座頭に対して、勾当は水衣に長袴・沙門帽子で、いかにも偉そう。お互いに目が見えない同士で相撲を取る場面で、どなたかのセリフ忘れか、少し流れが途切れてしまったのは残念でしたが。

 しかし、曲名は『伯養』ですが、シテは勾当。しかも伯養の名前も、歌争いの時に「庭中に。歯欠けの足駄脱ぎ捨てて。はくよう(履く用・伯養)なくて谷へほうかす」という狂歌でバカにするために無理につけてある名前かな、と感じる…。忠一郎師の勾当姿は素敵でしたが、前の二曲に比べるとあまり出来の良い狂言じゃないかも、と感じました。

 しかし、改めて善竹狂言っていいな、と感じた会でした。私が狂言を見るようになったころ、身近にあったのが善竹家の狂言なので「刷り込み」をされているんだとは思いますけれど…好きなものは好きなんです(笑)

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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2件のフィードバック

  1. 夜久乃 より:

    主人は、上西良介さんでした。。

  2. ありがとう。早速訂正しました。