若手能 京都公演 第二部
2005年9月3日(土)15時~ 於・京都観世会館
★観世流能『自然居士』
シテ(自然居士)=田茂井廣道
子方(少女)=分林寛奈子
ワキ(人商人)=則久英志
ワキツレ(人商人)=御厨誠吾
アイ(雲居寺門前の者)=茂山正邦
地頭=浦田保親
笛=相原一彦 小鼓=曽和尚靖 大鼓=谷口有辞
★大蔵流狂言『清水』
シテ(太郎冠者)=茂山あきら
アド(主人)=網谷正美
★金剛流能『黒塚』
前シテ(里女)/後シテ(鬼女)=今井克紀
ワキ(山伏祐慶)=梅村昌功
ワキツレ(供山伏)=御厨誠吾
アイ(能力)=網谷正美
地頭=今井清隆
笛=左鴻泰弘 小鼓=伊吹吉博 大鼓=井林久登 太鼓=井上敬介
昨日、久しぶりに京都観世会館まで「若手能 京都公演 第二部」を見に行って来ました。能を見て楽しむという上では邪道だと思うのですが、今度羯鼓の大鼓を打つ機会があるので、『自然居士』目当てに行きました。しかし、そんな私の思惑を吹き飛ばして、純粋に楽しめる良い能を見せていただきました(^^) ということで、感想は『自然居士』のみで。
京都雲居寺で造営の資を募るために自然居士が説法をしていると、少女が現れ、両親の追善のために小袖を捧げる。そこへ荒々しい男たちが現れ、門前の者の静止も聞かず少女を連れ去ってしまう。自然居士は少女が自分を人商人に売って両親の追善のための小袖にしたことに気付き、説法を切り上げて男たちの後を追う。琵琶湖で人買舟に追いつき、小袖と交換に少女を返すように迫ると、人商人たちは、自然居士の弁舌と座りこんで動じない態度を持て余し、少女と引き替えに舞を見せろという。自然居士は様々な芸能を見せ、最後に少女を連れて都に戻るのであった。
シテの田茂井廣道師はとにかくカッコよかったですし。「命を取らう」「命を取るともふっつと下りまじい」なんてセリフが効いてました。少女を助けるためには決して退かない鉄壁の意思というのが、感じられて…。
私は『自然居士』を、「捕われの少女を助け出さんがために今、自然居士が志賀唐崎に走る…!」みたいなコピーを付けてもおかしくない、”ヒーローもの”の能だと思っています。冗談ではなくて、変わっているけれど、面白い能だと思っているんです。
去年、中世文学の講義で『自然居士』について発表したときには、教授に「自然居士は少年です」と何度もご注意を受けました。確かに面は喝食ですし、となると…少年があまり年の違わない少女を助けるために頑張る冒険活劇…といった感じになるんでしょうか? でも、今の能の演じられ方だと、どうしても自然居士は青年のように感じてしまいます~。
ワキは関西では珍しく宝生流でしたが、福王流や高安流に比べると、より感情を表に出すような演じ方をするんですね。『自然居士』の人商人のような意地の悪いワキだと、それが上手く効いて、シテの真っ直ぐさをより引き立てるように感じられました。
でも、最後の羯鼓の前では、宝生流の場合だけ「元より鼓は」とワキが謡うんですよね~(普通は地謡)。ワキから地謡が引き継ぐことで、全体で盛り上がっている雰囲気がでるように思います。もうどうせ少女は返すのだし、自然居士と一緒に囃してしまおう、という少しヤケの入った状態なんでしょうか(笑)
目的だった囃子も、大小鼓が谷口有辞師&曽和尚靖師の「心味の会」コンビで、とてもレベルが高く…私程度では真似も参考にもできませんでしたが…(汗) まあ、心に描く目標とゆーことで(苦笑) (そういや、地頭の浦田保親師もアイの茂山正邦師も心味の会メンバーですね)
それにしても、大阪公演は宣伝活動が成功しているようで、ここ数年ほど大入りなんですが、それに対して京都公演は随分寂しかったですね。宣伝の仕方次第でもっと入って悪くないでしょうのに…。
■関連記事
→大鼓の稽古『自然居士』
→千鳥の酒樽・日記:若手能京都公演 第二部
→「きらくなぺーじ」管理人の部屋: 若手能 京都公演
若手能
「GALLERY
はねうさぎ」
から目と鼻の先、
京都観世会館へ
もう一つの若人の
挑戦を観てきました。
第15回 能楽若手
研究会(京都公演)
通称「若手能」です。
はじめまして。
T.B.してくださいまして、
有難うございました。
乏しい内容の記事ですので、
恐縮致しておりますが、
私もつけさせて頂きました。
田茂井廣道師は本当に
かっこよかったですね。
見所がもっと賑わって
欲しいものです。
コメントありがとうございます。
カッコ良い『自然居士』が見れて、
とても得した気分でした。
若手能って値段も安いですし、
もっと客入りがあっても良さそうなのですけれどね。
>>、「捕われの少女を助け出さんがために今、自然居士が志賀唐崎に走る…!」
このキャッチコピー最高です!!!
こんな「観てみたい!!」と思わせるキャッチコピーを考えてチラシなどに載せるのも必要だと思いますね。
あと、舞台写真(装束付)とかも…
「自然居士」は凄く良かったです!
田茂井廣道さんのシテは初めて観させて頂きましたが、カッコ良いとしか言いようがない。田茂井さんの解説は一度聞いたことがあるのですが、すごく分かりやすく、当日配布された自作のレジュメも要点だけ書かれていて、もう脱帽でした。心の底から能を愛していらっしゃるのでしょうね。
「京都観世能」(井上裕久さんの道成寺)のチケットは、即完売で取れなかったのですが、田茂井さんの道成寺は何としてでも観てみたいです。
>>このキャッチコピー最高です!!!
自分で書いておいて何ですが、ちょっと恥ずかしいっす(笑)
でも、ありがとうございます。
能の催しって、私のような素人でも「宣伝がヘタ」だと思います。
内容の充実が大切なのはもちろんですが、
内容があるのに、客入りの少ない催しは残念ですものね。
私も田茂井廣道師のシテは初めて見ましたけれど、
ステキでしたよね。また観たい方です(^^)
田茂井師の解説といえば、「義経を謡ふ」のシリーズの
ナビゲーターもされているようですね。
一度は聞いてみたいものです。
田茂井師の『道成寺』は11月19日の
「十二世林喜右衛門三十三回忌追善別会」ですね。
観たいチケットが多くて困ります(苦笑)