氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク(3)人妻編』集英社、1999年
さて、前に「人妻編以降は好きじゃない」と書いた問題の人妻編。
かつては物の怪憑きの姫と呼ばれた瑠璃姫も、筒井筒のエリート公達・高彬と結婚。今や右近少将の北の方としてしっかり新妻生活の真っ只中。これでやっと落ち付きのある女に、と思いきや…。
今まで番外編のみに登場した守弥や煌姫が本編に登場するほか、印象の薄かった瑠璃姫の継母が突然、思ってもいなかった濃いキャラクターであることが判明する巻でもあります。にぎやかな展開にならないわけがないですね(笑)
ところで何が好きではなかったのか、読み直して分かりました。ひとつに高彬をはさんで煌姫が、瑠璃姫に対して策謀的な行動を取る部分。いかにも少女ものらしい部分ですが、私は苦手。ましてや瑠璃姫は、煌姫を守弥の恋人だと思っているので、無防備なあたりが…。仕方ないのは分かるんですけど。前に煌姫は苦手だと感じていた理由もこのあたりにある気がします。こちらは今でも苦手で、そういう展開が予想されるページではなかなか読み進めることができませんでした。
ふたつ目に高彬が融を怒鳴ったりしたことから、見え隠れし始める帥の宮という人物の、分かり辛さ。そのため、人妻編以降のストーリーはほとんど覚えていません。もっとも、こちらは今読み直すと、見え方が変わって来る気がするので、かえって新鮮な気持ちで読むことができると思いますけれど。
ところで、この人妻編。最近になってマンガ版も出ましたが、見比べてみるとマンガ版では随分省かれたシーンが多いですね。瑠璃姫が高彬に、近江という女房に代筆させて送った手紙はごっそり削られてますし、白梅院(右大臣邸。高彬の実家)で守弥と会った時の、『源氏物語』話も。これは桐壷帝が桐壷更衣を忘れられず、そっくりだという藤壷女御を迎え入れる話についてですが、瑠璃姫の恋愛観の変化が実感的に語られていて面白い部分なんですけどね。
『源氏』といえば、瑠璃姫と小萩の〈葵の上〉ごっこも省かれてますが、これは是非入れて欲しかったです(笑) マンガじゃ説明的になってしまうかな…?
大事件を経て、高彬と結婚して。前巻でも書きましたけれど、瑠璃姫も変わってきてますよね。高彬に言わせると「瑠璃さんて、いつのまにか、ほんとに、なんていうか、変わったよね。昔は、袴の裾を蹴飛ばして、簀子を走りまわったり、几帳を蹴っとばしたりしてたのに」ってことでしょうか。成長も変化もしない人って、小説とはいえ、嫌ですもの。
それにしても、新婚ホヤホヤとはいえ羨ましい場面が多いです。特に『蜻蛉日記』にヒントを得て、忍んで白梅院に行ってるあたりは。何かとすぐに良い雰囲気になる高彬と瑠璃姫。大江(高彬の乳兄弟)でなくても、赤くなってしまいます。
あと高彬の嫉妬。これ、私は分かるなあ。ついでにこの巻からは旧版を読んでいますが、素朴な絵柄が好ましいです。絵を変える必要なんてなかったのに。
私も3巻の始めの頃の高彬を巡る瑠璃と煌姫の変な(苦笑)
攻防戦は好きでなかったです~(^^;)
ついでに高彬の妙な嫉妬も正直「うぜ~なあ」とか・・・。
情緒の欠片も無いもんで・・・(汗)
今後読み進めていくと柏木さんもお分かりになると思いますが
最後まできちんと読むと、最初の瑠璃と煌姫のズレは今後の話
への氷室さん流の「伏線」だったんだな~と気づきます。
本当に氷室さんは「さすが小説家!!!」と脱帽です・・・。
今後の話を先にチラリとばらしてしまうのは恐縮ですが、
煌姫のまた妙なポリシーだけれど、人間的優しさが出て来たり、
「あたくし、あたくし、こう申してはナンですが、(中略)
この土壇場で気づきましたけれど、あたくし、瑠璃姫が瑠璃姫
が好きなのですわ。」と友情を告げるシーン(⑦巻参照)など
とても好きです。
何故いまの③巻から⑦巻にてそうなるかは柏木さんがお読みに
なり、確かめて下さい(^^)
帥の宮に関する人物像のわかりづらさも氷室さんの「伏線」&
テクニックだと思われます。
いま恋愛も失恋もそれなりに経て高彬の嫉妬も共感できるように
なったと仰っている柏木さんなら、最後まで読んだら帥の宮の
痛いほどの切ない気持ち、そうせざるを得なかった気持ちに
男性側として思い切り同情してしまいそう・・・(笑)と
予想している私です(^^;)
さてどうなることやら。
瑠璃姫と小萩の「葵上ごっこ」の場面はいいですよね~(^^)
いくらそれ程本編とは関係ないとはいえ、マンガ版では削除
されているとのこと、個人的には残念です。
でも山内直実さんはホントお上手に「ジャパネス」の世界観を
原作をあまり壊さず大切にマンガとして成り立たせている方だな
とはマンガを読んでいても感じます。
あと小説版(原作)でやはり個人的に好きなシーンは
(またしても先の話で申し訳ない ^o^; ⑤巻の台詞です)
瑠璃と高彬の会話の場面で
「なんたって、あなた、子どものタネの張本人に抱きしめられて
(ややが・・・子育てが・・・子宝が・・・)といわれて、
女として、どういう顔してればいいのよ!(中略)冗談じゃないわよオオオオ!」という台詞、好きです(すごい笑えて)。
人妻編以降をあまり憶えていらっしゃらない柏木さんが瑠璃が
どうしてそうなったのかを知り、どう感想を持たれるのか、
今後の日記を大変楽しみにしております(^-^)
おまけ:旧版の素朴な絵柄を変えることなかったのに・・・
という柏木さんの意見に全く同感です。
私はすべて旧版しか持っておりません。
ゆげひさん、すみません、私はどうもダメでした。漫画の文庫を2巻試しに買いましたが、1巻目の途中でもう「やっぱり恋愛ものはダメだ」と悟りました。小説も映画もすべて、恋愛ものは苦手なのです。なんと表現していいのかわかりませんが、人間関係の煩雑さ、人の気持ちの複雑さ、また男女の思いの移ろいやすさ、というものに疲れてしまうのです。そういうの、実生活だけでたくさん!とか思ってしまって。。。きっと情緒のない人間なんでしょうね~。残念です~。
毎度『ジャパネスク』ネタを書くと、
真っ先にノンさんのレスですね(笑)
ありがとうございます。
まあ、現在続きを読んでいる途中なわけで、
いろいろと伏線だったんだな、とは感じております。
ただ、ここで書く感想はあくまで、その巻までを
読んだ時点での正直な感想ですので、、
続きは続きとして楽しみに読ませていただきます。
しかし、本当に私、これを一度読んだのかなぁ、と
思うぐらい記憶がないです(^^;)
もちろん、読んでいる内になんとなく、覚えのあるシーンも
ありますし、帥の宮編の最後もうっすらと覚えてはいるのですけど、
途中の経過が全く記憶から飛んでいます(笑)
旧版以来のファンの方は、素朴な絵柄を好まれるようですね。
まあ、新装版の絵がダメとは言わないのですが、味があるのは
旧版の絵ですよね。
★peacemamさん
あら、ダメでしたか。
残念ですけれど、仕方ないですよね。
しかし、『ジャパネスク』の最初って
恋愛要素がそんなに強かったですっけ?
兵部卿宮の二の姫との関わりの辺りでしょうか。。
まあ、全体の下地としては、恋愛が使われていますけれど。
『ジャパネスク』は全体としては随分、からりとした
印象ですけれどね。瑠璃姫も相手の高彬も、他のことはともかく、
男女間のことに関してはとても純ですし、
それを引っ掻き回そうという人物も、人妻編以前では
ギャグにしかなっていないので…。
妹が最近買っている少女マンガなどは人間関係がややこしくて。
最初面白いかな、と思っても、ドロドロしたものがどこかに
妙に入れてあって、ついていけない、と思ってしまいますが。
わざわざご報告下さって、ありがとうございます。