勘九郎とはずがたり

勘九郎とはずがたり
中村勘九郎(十八代目中村勘三郎)『勘九郎とはずがたり』集英社、1994年

1989年~91年にかけて、十数回に分けて記録された歌舞伎役者・中村勘九郎(現・中村勘三郎)さんの芸談?というか、喋ってるそのままです(笑) 途中で「すいません、カンパリソーダもらえます?」といったお酒かお茶、コーヒーなどに関する言葉がどこかに入ってたり。もちろん会話の録音をそのまま文字にしているわけはないのですが、敢えてお酒などの言葉を削らないで残してある、そこが勘三郎さんの味なんだと思います。

私の歌舞伎デビューは先月の「浪花花形歌舞伎」ですが、歌舞伎を見に行こうと思った直接のきっかけは勘三郎襲名前後のテレビでの特別番組でした。私は普段テレビを見ないですから、本当に偶然です。そして思ったのが「よく分からないけど、歌舞伎って面白そう」ということ。勘三郎さんにはそう思わせる魅力があります。

そして「とりあえず、お試し的な値段で見れる歌舞伎」として見た浪花花形歌舞伎がとても面白かった。そんなわけで徐々に歌舞伎にハマりかけの私が次に手を出したのが、この『勘九郎とはずかたり』です。さおりさんのブログを読んで知って、Amazonで注文。

わんぱくだった子ども時代、家族や仲間…。前半は芸談というより、プライベートの話。約15年近くも昔の話ですから、今では20歳を超えた次男・七之助さんの小学校入学式の話があったりもします。

あと奥さんのことをこんなに話されている役者って初めてです。他には亀井忠雄師(能楽大鼓方)の奥さんが、歌舞伎囃子方の田中佐太郎さんって話ぐらいかな? もっとも奥さんも同じ歌舞伎役者である中村芝翫さんの娘だからでしょうが。

しかし、お二人のなりそめのくだりは、彼女なしの私にはツラいです(笑)

 彼女が大人になってから、しばらくぶりで帝国ホテルで食事をしましてね。…『好江ちゃん、歌舞伎役者の中で、誰か好きな人いる?』…そしたら『ええ』ってうなずくんです。『誰?教えて』…まあ、当時の私のことですから、自信がありましたしね。…『尾上松緑のおじさま』だって。ガクっときたのが印象的でした。

当然といえば当然でしょうが当時、勘三郎さんは相当モテていたんでしょうね。いや今でもかな? 自分に自信がある人って(中には過信してるヤツもいますが)、魅力的に見えますもの。ましてや役者ですしね。

後半になると芸の話が増えて来ますが、やっぱり笑い話も多いです。しかし、演技はとにかく心なんだ、というその一線はしっかり通ってます。

ますます勘三郎さんの歌舞伎見たくなりました。お金の都合さえつけば、大阪での「中村勘三郎襲名披露 七月大歌舞伎」のチケット、買ってしまうかも…。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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9件のフィードバック

  1. みゆみゆ より:

    私も以前、歌舞伎にはまってしまった時、いろんな関連本を読みまくり、この本も読みました。
    勘九郎さんの本は、その場でお話を聞いているみたいな語り口で、引き込まれます。
    奥さんとの話も多いのも特徴ですよね。
    結婚を申し込む時の芝翫さんからの言葉
    「真っ白な布を、染めてください。」と、、、
    でも今は自分が染められているっていうのには笑えました。
    あと、個人的に贔屓の仁左衛門さんの本もお薦めです(^^)

  2. さおり より:

    ゆげひさん、トラックバックありがとうございます。
    言われてみれば、奥さんのお話をこんなにたくさんされる方は、珍しいですね。
    特番の中で写っていましたが、「中村勘九郎」時代の色紙、最後の一枚を奥さんに贈っていましたね♪
    みゆみゆさん、こんばんは~。
    本当に、その場で話を聞いているかのような気分になりました。
    「それで、それで??」という感じで(笑)

  3. ★みゆみゆさん、さおりさん
    コメントありがとうございます。
    そうですよね。その場でお話を聴いているような語り口。
    思わず相槌を打ちたくなるような。面白い人なんだと思います。
    >>でも今は自分が染められているっていうのには笑えました。
    そうなんですか(笑) でも、この本に書かれたお話から窺うに
    一見、大人しくとも芯の強い方っぽいですしねぇ。
    >>「中村勘九郎」時代の色紙、最後の一枚を奥さんに贈っていましたね♪
    そういえば! 思い出しました。良い話ですよね~。
    実は、この本を読み終えた後に、偶然テレビを付けたら
    また勘三郎さんについての番組で。
    『さらば勘九郎』という本の宣伝を兼ねたような番組でしたが、
    奥さんとの、婚約会見の映像が流されたりして。
    「プレイボーイ」「浮き名を流した」勘九郎さんに浮気されたら
    どうします?と記者に聞かれた奥さん、
    静かに「困ります」と答えてらっしゃいました。
    …静かでしたけど、浮気なんかしたら相当怖そうだと感じました(笑)
    >>あと、個人的に贔屓の仁左衛門さんの本もお薦めです(^^)
    今度、また見てみますね(^^)

  4. みゆみゆ より:

    確か、テレビでも奥さんの事をしょっちゅう語っているような・・・。以前「はなまるマーケット」に出演された時、喧嘩になると、物をなぐりあい、血が出る時もあるって・・・(^^:。でも、毎朝お出かけ前のチューは欠かさないらしいです。今も凄く仲良い夫婦なんて羨ましい限りです(笑)

  5. 奥さんの話って勘三郎さんの持ちネタなんでしょうか?(笑)
    「毎朝お出かけ前のチュー」
    …くそー、独り者いじめです。勘三郎さんって!(笑)

  6. さおり より:

    >静かに「困ります」と答えてらっしゃいました。
    うわぁー、すごい!すごい!
    さすが勘三郎さんの奥さん(笑)
    「この子を逃したら、一生結婚出来ない。」と本で語ってらっしゃいましたが、本当にそうだったんじゃないでしょうか。
    (勝手な憶測 ^_^;)

  7. なんだか、すごいですよね~。
    他の本でもいろいろ語ってらっしゃるのでしょうか。
    そのあたりも楽しみになってきました(笑)

  8. おったん より:

    好江さんの書いた『三人桃太郎中村勘九郎一家奮戦記」に子供の頃のこと、結婚前のことなどが詳しく載っています。
    芝翫さんの『福家族」は親の観点から見た勘三郎一家が書かれていて、なかなか読み応えがありました。

  9. おったんさん、初めまして。
    中村勘三郎さんの奥様も本を書かれているのですか~。
    また機会があれば、
    中村芝翫さんの本と合わせて読ませていただきますね(^^)