『なんて素敵にジャパネスク』の4冊目、『続ジャパネスク・アンコール!』を読み終えました。これで瑠璃姫と高彬が結婚するまでの、マンガ化されている範囲は読み終わったことになりますが…。時々、マンガ版も読み返したりしてました(笑)
★「守弥のジャパネスク・ダンディ」
高彬と煌姫を契らせるという策略が失敗に終わった守弥は、瑠璃姫がこもる吉野に乗り込むが…(「守弥のジャパネスク・ダンディ」)
ついに守弥と瑠璃姫の直接対決。結果は守弥の惨敗ですが(笑) 守弥って高彬やその実家である右大臣家では強いけど、女性、しかも変わった姫君にはとても弱いらしい。瑠璃姫とか煌姫とか。守弥にとっては大変でも、その慌てぶりが面白い。読み直していて、私、守弥が好きなんだな~と自覚しました(笑)
瑠璃姫のことを考えている内、頭を打ったための記憶喪失も手伝って、「『よもや、わたしが瑠璃姫に懸想…?』そう考えたとたん、すっと首筋が熱くなるのが自分でもわかった」 この辺りの心理は、非常に親近感があります(笑) 恋愛感情は、少なくとも惚れっぽい私にとっては、ほかの感情と必ずしもきっぱり割り切れないもので、「もしや…」と一度ふと思ってしまうと、なんとも落ち付かない状態になってしまうのです。
守弥は最後に「若君が瑠璃姫にお弱いのも、わかる気がする」と言ってますが、守弥自身も弱くなって都に帰ります。堅物で朴念仁な守弥が瑠璃姫に返す言葉がおバカで微笑ましいです。
もっとも全編の主人公である瑠璃姫は、少し影が薄めです。吉野君事件の影響で、根性や気力が失せている状態らしい。あと、この話の最後、守弥が帰京した場面にて高彬が珍しく(笑)得意な琵琶をかき鳴らしていました。
★「小萩のジャパネスク日記」
流行り病で父母を亡くした小萩は、幼い姫の話相手として大貴族の邸に勤めることに。それが瑠璃姫だった。(「小萩のジャパネスク日記」)
瑠璃姫のお付き女房である小萩が瑠璃姫との出会いを思い出して記したという、日記文学のパロディ。小萩はあらすじとして要約してしまうと表には出ないし、マンガ版でもあまりカラーイラストにはならないような人物ですが、ストーリー展開の要となることも少なくない重要な人物。瑠璃姫の周辺にテキパキと采配を振るうのが似合ってます。
小萩は父母の死後、叔母夫婦の家に引き取られたものの、持て余されていたのですね。マンガ版ではあまり描かれていませんが。結局、叔父の出世の手段のように、瑠璃姫のお付きになったわけで、「いくら血のつながらない姪とはいえ、その姪をお邸勤めに出して除目で手ごころを加えてもらう約束を取り交わしていたなど、叔父として、あまりにひどい仕打ちでございました」と叔父を恨めしく思う部分がありますが、そこからか1巻で里下がりした時も「叔母の家」と言ってますね。叔父の国司としての収入で建てた家であろうことは確実なのに。
ところで1巻での小萩の里下がりに関して、高彬のお付きの者から言い寄られているとありましたが、誰なのかな?と思ったり(笑) 守弥ではないのは確かですから、政文か将人か兼助か…などと想像するもの面白い。高彬が外に行くときには、どうやら政文が付いているようで、政文だろうかと想像してますが。
ノンさんのコメントを受けて考え直し。確かに政文はプライドが高そうで違うかも。「ジャパネスク・スクランブル」(『アンコール』収録)で、守弥が瑠璃姫の手紙を握りつぶしていたことを高彬が知ったとき、代わりに文を任せた将人は比較的、瑠璃姫に理解があった方だと思えるので、彼が怪しいのではないかな…って何を懸命に推測してるんだか(^^;)
ところで、私も平安文学で最初に好きになったのが日記文学の一群で『蜻蛉日記』『紫式部日記』『更級日記』とそれぞれありますが、当時の人間の本音が書かれているようで親しみがあるのです。
★「瑠璃姫にアンコール!」
いよいよ都へ戻ることになった瑠璃姫。みなには内緒でこっそりと帰京するのだが、待っていたのは怒った高彬だった。(「瑠璃姫にアンコール!」)
久しぶりの瑠璃姫が主人公の話。「表の瑠璃姫、裏の夏姫」の言葉が登場しますが、裏の主役は夏姫です。
この話、短いわりに込み入っていて高校生で読んだころには事実関係だけは分かったのですが、夏姫と高彬の姉である聡子姫、涼中将の三人それぞれの感情が今ひとつ分からず、印象の薄い話でした。
しかし、今読むと随分受ける印象が違う。私自身がその後、恋愛も失恋も一応は経験したからでしょうか。聡子姫の「男と女のことは、どちらか一方が悪いというわけでもないのですわ、瑠璃さま。わたくしも、わがままでした。でも、悔やんでも遅いこともありますの」、涼中将の「綺麗ごとばかりではありませんよ。男と女の仲はね」 二度と戻らないだろう、と予感できる亀裂ってありますよね。だからこそ、いろんな執着に別れを告げて去って行く夏姫が鮮やかです。
夏姫は瑠璃姫のパラレル。もう一人の瑠璃姫ともいえる存在ですが、こういう凛とした女性ってステキですね。ちょっと怖いかな、とも思いますが。それにしても瑠璃姫の弟である融の乳兄弟で、伊予守の娘ということは、「高彬のジャパネスク・ミステリー」(『アンコール』収録)に登場した善修の姉なんですね。…似てない(笑) 融も瑠璃姫とあまり似てないですけど。
ふふふ。確かに柏木さんって考えてみれば
「守弥」っぽいですよね(^^)
このサイトを拝見していても、文章がとても思慮深く
時には用意周到とも思えるほど書き込み慣れされていますし
(管理人さんですもの。当たり前か・笑)マメマメしいのに
用意周到に用意されたであろう文章の中でも時々チラリと
見え隠れする素顔はとても不器用そう(失礼・笑)です。
守弥もそうですけれど本当は器用ではない(?)人間が教養
なり経験なりを身にまとって懸命に努力されている姿は
はたから見ていてとても微笑ましく感じます。
完璧でないところが「人間らしい」し、また違う意味で不器用
である私にも決して高見の見物ではなく、実感&共感できる
ところがあります。
守弥の教育が完璧に影響して育った堅物で朴念仁な高彬が
「瑠璃姫に弱い」のならば、守弥もやはり「瑠璃姫に弱い」
であろうと守弥vs瑠璃姫の直接対決の前に読者としてある程度
の予想はできた結果のように思います。
だって高彬が堅物で朴念仁なのは元々守弥の性格をそっくり
そのまま受け継いだだけですものね(^o^)
今後、瑠璃姫と結婚して「堅物で朴念仁」だったはずの高彬の
成長ぶり、活躍が何度読んでも好きです。
やっぱり男性も女性も付き合う相手の影響によってどんどん
変わるのね・・・真理だわ・・・と(^o^;)
今回や今までに出て来た会話か今ちょっと定かではないのですが
(後々の会話かもしれません・汗)
とにかく瑠璃姫と高彬がいい雰囲気になった時の会話で、
高彬「瑠璃さんはお坊ちゃんは嫌いなんだろうだろうな・・・
僕は確かにお坊ちゃんだけど、お坊ちゃんは嫌い?」
との問いかけに対して
瑠璃「お坊ちゃんも好きよ。だって実際あんたはお坊ちゃん
じゃない。」
という台詞は個人的に本当にとても好きですね。
人には長所も短所もあるけれど「それも含めてあんたが好きよ」
という瑠璃姫の想いがひしひしと伝わってきて。
後、この本に関しては「いつも元気で型破りな瑠璃姫」が吉野君のことにより傷つき、瑠璃姫らしからぬ儚さ、心弱さがきちんと
書かれているところもとても好きです(*^-^*)
さすが作家!氷室冴子さん!とご本人に(できれば)
本当にお伝えしたいくらい(笑)
完璧かと思われる人のボロの出方と元気印と思われている方の
心弱い部分は現代にも大きく当てはまることがあると思います。
「小萩のジャパネスク日記」に関してはその章は主人公が小萩
ですので、小萩の人柄が窺える書き方、特に平安文学が盛りの
「**日記」に通ずるような書き方に更に小萩の性格がより
わかりやすく理解でき笑ってしまう章でもあります。
ちなみに柏木さんが言ってらした右大臣家の従者で
「小萩に言い寄っていた男」というのは私の勝手な想像では
政文ではないと思っています(^^;)
政文はずいぶんプライドが高そうですし、小萩がいくら名門で
名高い内大臣家の女房であっても「型破りで物の怪憑きの姫」
と都中に噂されている瑠璃姫の直属の女房である小萩に
言い寄るなんて政文の性格的にはなさそう・・・
となると、将人か兼助辺りかな~?なんてマニアックな話(汗)
になりました(苦笑)
長々となりましたが最後に「夏姫」の話。
この本の中ではいちばん感慨深い話ですね。私的には。
特に柏木さんも書かれていたように夏と聡子姫と涼中将の3人
の複雑な想いがそれぞれ交錯している部分が私は好きです。
読んだ当初は聡子姫の「あまりにも純粋にわがままに育て
られた為」他人を思いやる気持ちが無かった、気づいた時
には夫との間に取り返しのつかないような溝が出来てしまって
いた・・・というあまりの不器用さに読んでいて泣けました。
夏の気持ちも涼中将の気持ちも聡子姫の気持ちも切なく痛いほど
理解でき、また「ウブ」だと思われていた高彬がその愛情の
難しさや他人に踏みいることの難しさを理解を示している辺りも「さすが伊達にエリート殿上人だけあるな」というのも、
垣間見え、う~ん・・・と考えさせられる作品です。
でも私が瑠璃姫の立場だったら、余計なお節介とは理解しつつも
「瑠璃のように行動は止められないだろうな(^^;)」とは
思いました。ははは(苦笑)
柏木さんが書かれた「夏姫は瑠璃姫のパラレル」というのには
「そういわれてみればそうだな~」と納得。
本当に最後のついでに。
善修にしろ、融にしろ「姉に似ていない」のは、
お姉さんがしっかりし過ぎて代わりに弟が甘えん坊(もしく
は不甲斐無く)に育ったのか、弟が天真爛漫過ぎて姉的には
「しっかりせざるを得なかった」のかどちらかかな、なんて
柏木さんの感想を読んで思いを馳せてみました(^^;)
今回はずいぶんと長いコメントで失礼しました~。では。
守弥はとても外見がハンサムなんだそうです。
新装版『アンコール』のあとがきで、氷室冴子さんが
「彼はたいへんな美男、しかも低音の魅力という最高の条件で
イメージしておりました。…今回新たにイラストを描いてくださる
後藤星さんにも、好きなように描いてくださいといっておきながら、
『守弥はハンサムです』と注釈をつけたような気がします」
マンガ版の文庫6巻巻末にある氷室冴子さんと山内直美さんの対談でも
氷室さん「守弥はともかく、すごいハンサムなイメージだったんですよ」
山内さん「キャラクターについて言われたのは守弥だけですよ(笑)
『ハンサムに書いてね』ってその一言だけ言われて。
ハンサムかぁ」
氷室さん「…そうするとやっぱり兄ちゃんの守弥の方が、ずれてるけど
いい男のイメージでね。そのハンサムがひょうきんをやるから
おかしいのですよ」
重ねて強調されてますから、相当なハンサムなんだと思います、守弥(笑)
私は不器用な方だと思います。いろいろ行きあたりばったりですし。
でも、文章を書くと、凝り性ですから一度書いた後に直したりして、
もしかしたら、考え深げに見えるかもしれませんが…。
守弥には親近感を感じるというのもありますけれど、
しっかり三枚目をやっている、そこが好きなんですね。
なんだといって、やっぱり頭良いですし。
「坊ちゃんは嫌い?」の会話は人妻編で、瑠璃姫が白梅院に
高彬を見舞った時の会話ですね。マンガ版の人妻編で読みましたから。
もうすぐ小説版でも出てくると思います。
そういえば書くのを忘れてましたけど、大きな事件や深い悲しみを
経ることで瑠璃姫や高彬が少しずつ、でも確かに成長していってるのが
感じられますよね。いつまでも最初と同じ、って変ですもの。
いくら「元気印」だとしても、いつまでも同じことを繰り返してるのを
読まされるのは嫌です(^^;)
「小萩に言い寄っていた男」に関しては、考え直して、
文章を少し直しました。政文でなければ将人ではないかと(笑)
最後の「瑠璃姫にアンコール!」では、聡子姫も涼中将も、
悪い人ではないから、なおさら切ないですよね。
もう少し、の部分が足らなくて、
取り返しのつかないことになってしまっている。
高彬のいう涼中将の「男の意地」というのも前読んだ頃は
分からなかったんです。高校生のころは「意地」と聞くだけで、
拒絶反応を起こしてました。今でもつまらない意地は多いとは思ってますが、
自分にも多少の意地があることを認識したもので、捨てたくとも捨てられないし、
それもまた自然なんだな、と思います。
似てない兄弟といえば、守弥と大江もあまり似てないですよね(笑)