復曲能『巴園』WS参加者発表会

『巴園』参加者発表会

 復曲能『巴園』のWS参加者発表会、終了しました。寒い中、素人の舞台なのに多くの人たちに見に来ていただけて、ありがたいです。私の知り合いも何人か来て下さりました。終了後、急いで着替えて大槻能楽堂の入り口前に掛け出て来て、挨拶させていただきましたが、本当に嬉しい。

 写真でチラシの上に置いているのは、楽屋見舞にいただいた福豆です。…そういや、今日は節分だったなぁ(笑) 後輩からも「節分ということで。笑いながら食べてください」と楽屋見舞を渡されましたが…本当に開けたら思わずニヤッと笑える楽しいものでした。写真は最後に。

 その他にも、不意に先輩から「今日本番か。しっかりな」と短いメールが来て随分心強かったですし、大鼓の師匠にも激励いただきました。テンションがぐっと上がります。家に帰れば、お会いできなかった方からも「舞台見ました」とメールが届いています。人との繋がりって暖かくて嬉しいものですよね、本当に。

 舞台の感想としてはテンションが上がりすぎたのか、とにかく疲れました…。いや、私の出番は一瞬ですが、待ち時間にずーっと緊張しっぱなしで(汗) 装束を着ても面を掛ける前なら、チラリと舞台を覗いたりと落ち着いていられましたけれど、面もかなり早めに掛けますしたらーっ

 間狂言の方が役を終えた後、あまりの私の緊張を見兼ねたのか、そっと「お腹空きません?」と声を掛けて下さり、ちょっと笑いながら「大丈夫です」と答えて随分リラックスできました。大感謝。

 そうそう、間狂言の装束付けを隣で見ていましたが、やはり基本的に能と同じなんですねぇ。胴着の上に付け襟をして着付を着、狂言袴をはく。狂言袴は柄が特殊ですが、形としては普通の袴にかなり近い感じ。上に水衣を羽織って帽子をかぶり、面は善竹隆平師にお聞きしたところ「登髭」だとか。顔の横に付いている髭が上を向いていることが名前の由来だそうで、『賀茂』や『紅葉狩』『石橋』などのアイに使う、ほぼ間狂言専門の面なんだそうです。

 あと二人の子方の装束も初めて見ましたが…とても可愛い! 頭にかぶっているのは唐帽子として、体に着ている装束は見た覚えがないなと思って、後でお聞きしたら茂山千五郎家の『唐相撲』の装束をお借りしたのだそうです。茂山千之丞師『狂言役者-ひねくれ半代記』に載っている「カルサン」という装束でしょうか。茂山千作師・千之丞師兄弟のお母様が一着一着縫われたものだとか…。

 話を自分のことに戻しますと、舞台自体は一瞬で終わって分からなかったというのが正直なところです。とにかく懸命に舞うことはできたかな? 通し稽古や申し合わせで、大槻文蔵先生に何度も繰り返して「それじゃ舞台から落ちるよ」と言わせるような、周囲に心配をかける動きをしていましたが、とりあえず最後まで落ちずに済んで良かった(笑)

 舞台の後は、能楽堂内の食堂で軽く打ち上げ。太鼓の中田弘美師は「よく動けていた」と仰ってくださったので、及第点は取れたかな?と。ずっと稽古を付けてくださった上田拓司師や、急遽前ツレの代役になり後場の間は楽屋で世話をして下さった前田和子先生、何かといろいろお世話になった多久島法子さんなどとお話している間に、短い時間は終わってしまいました。

 それにしてもお気の毒なのが前ツレの方。懸命に稽古を積まれてきたのに、直前になって当日出演できなくなり、前田和子先生による代役となりました。前田先生が仰るには「申し合わせの前日に、突然電話が掛かってきてね」…ということは練習期間2日? しかし、(同時に当然なんですが)私たちより上手に演じられる。普段からの積み重ねがあるとはいえ、プロの凄さを見せ付けられました。

 打ち上げ終了後「二次会!」という話もあったのですが、家も遠いですし疲れていたので、残念ながら帰らせていただきました。帰り道、前シテ・後シテの方々と話しながら歩いていたら、途中でワキ・ワキツレの方々とも合流して立方集団になりました(笑)

 能楽WSの最後のプログラムは明後日の大槻能楽堂研究公演『巴園』。プロによる公演。先生方に話をお聞きしたところ、素人バージョンとはいろいろ演出が違うそうです。それは素人バージョンは途中から演出の変更などを停止して、稽古を深くすることに重点を置くようになったため。プロの公演では、より工夫に工夫を重ねられた『巴園』になるかと思うと期待が膨らみます。

 それから私、実は客観的に『巴園』を見たことはないんですよね(笑) 見たことがあるのは、自分の出演する最後の一瞬だけ。それも必死で舞っているので、周りを見る余裕なんてない。作り物に関しても、申し合わせが終わったときにやっと「こんなのだったんだ」と思ったぐらいでした。初めて客観的に見る『巴園』。上田拓司師の演技で見ることができるのが楽しみです。


 下は後輩からの楽屋見舞です。お多福と豆を象っているのかな? しかし、おたふくの顔が歪み過ぎ…。お多福の文字通り「笑門来福」とばかりに笑いながら食べました。後輩たちよ、ナイス!ラッキー

外鬼内福

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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8件のフィードバック

  1. みゆみゆ より:

    お疲れさまでした。
    なんだかすごい豪華というか面白そうなWSですね。
    私も拝見したかったです(^^)
    楽屋見舞いのお多福素敵ですねー。

  2. 花兎 より:

    お舞台成功、おめでとうございました。
    こちらで時々、WSの様子を読ませていただいていただけの私でさえ、なんだかじーんとくるものがあるので、参加なさった皆さんや関係の方々の感慨はさぞ、と思います。
    それにしても、おたふくさんも青龍もおいしそうです~。

  3. 紅緒 より:

    遅ればせながら、お疲れ様でした!(^^)
    今回は本当に貴重な経験をされましたね。
    これほど凄い企画はそうそうありませんよ~。
    そして、センスが光る楽屋見舞も楽しませて
    いただきました☆ステキな後輩をお持ちですね♪

  4. m より:

    お疲れ様でした。そして素敵な舞台ありがとうござました。
    はい、拝見しましたよ。
    仕事の都合で、うかがえるかどうか微妙(終電近くで終わることも多いので…)だったので、お伝えしてませんでしたが、
    無事間に合いました。
    会場に着いてから、開演しばらくまで何故か、
    私がえらい緊張する事に…(笑)
    これはみなさんのドキドキが移ったのでしょうかね。
    皆さん、なかなかお上手でびっくりしました。
    子方達はかわいかったですよね。
    でもしっかり型が出来ていて、まさに『恐るべし血筋』ですね。
    そして、ゆげひさん。いや~かっこよかったですよ。
    迫力があって、動きもきれいでしたよ。
    あの演技で、舞台全体がうまく締まったように思います。
    楽しく家路に着きました(とても寒かったですが(^^ゞ)
    本当にありがとうございました(^^)

  5. chat1996 より:

    お疲れさまです!
    「巴園」おもしろかったです 子方の二人とても可愛かったですねぇ
    次の日、伊丹能も行って二日連続子方の赤松くんにはびっくりしました
    ついついあの子を目で追ってしまいますね
    ゆげひさんとてもかっこよかったですよ!
    走って登場するとかここを読んで知ってましたが、すごい迫力でびっくりしました すごいですねぇ
    とてもよかったです ありがとうございます★

  6. ★みゆみゆさん
    コメントありがとうございます!
    能面・能装束をつけて、実際に復曲能を演じてしまうんですから、
    どれだけ豪華なんだ!?って話です。本当に堪能しました。
    お多福は大阪の御菓子司「絹笠」のものです。
    http://www.honke-kinugasa.jp/top.html
    サイトには載っていませんでしたが、節分限定だからでしょうか。
    ★花兎さん
    コメントありがとうございます!
    舞台が終わった直後はもう呆然とするばかりで。
    でも、精一杯稽古して舞台に出て、
    充実した時間を過ごせたなと思います。
    お多福も青龍も美味しかったですよ(^^)
    是非機会があればお試しください。
    …しかし、油断して置いていたりすると、全部妹に
    食べられてしまうので、今回は守り通せて良かったです(笑)
    ★紅緒さん
    本当に貴重な体験をしたと思っています。
    「前代未聞の能楽ワークショップ」という煽り文句に
    ウソ偽りはありませんでしたね。良かったなぁ~。
    楽屋見舞は確かにセンスが良いですよね。
    うーん、私も人に物を送る時には凝るようにしたいです。
    ★mさん
    WS参加者発表会をご覧下さったのですね。
    ありがとうございます!
    素人舞台ながら、楽しんでいただけたようで何よりです。
    子方さんたちの可愛さは反則だ、と思うぐらいです。
    世阿弥は『風姿花伝』に「先づ童形なれば、何としたるも幽玄なり」と
    書いていますが、本当になるほどと。
    装束を着付けられる前の、余裕があることは後シテの方に
    「あの二人と一緒に舞えていいですね~」などと言ってました。
    帰りは本当に寒かったですね。大阪駅でブルブル震えていました(笑)
    ★chat1996さん
    WS参加者発表会をご覧下さり、ありがとうございました!
    赤松裕一くんは、3日の素人『巴園』に出て、
    4日は伊丹能で『橋弁慶』と『船弁慶』に出演。
    さらに5日はプロの『巴園』で再び舞っていました。
    超売れっ子で、忙しいんですね…。
    幕から走り出て、飛び跳ね回って、帰って行くという
    能で良く言う「幽玄」からは程遠い役でしたが
    お誉め戴きまして、嬉しいです(^^)

  7. 巴園の傍らに住まいする仙人より より:

    こんにちは。舞台とWS面白かったですよね、と今更メールします。
    ゆげひさんはいっつもマイペースでやっておられて落ち着いてはりましたよね。あんまり落ち着いてるので、私は伺った年齢を信じてませんが。
    やっぱり、緊張してましたか?僕出番前は周囲の緊張をほぐす為に、ふざけたり、話しかけたりするんですが、今回はそんなのを許させない様な雰囲気があり、あんまり飛ばせず、あれぐらいが限界でした。まぁ、リラックス出来たようで良かったです。今回は全然緊張しませんでしたね、けどごっついプレッシャーを感じました。練習時間も8時間くらいやから、「ちゃんと出来るんかい、Y(わい=大阪弁で私)?」
    このまえ、DVDで自分の姿を観ましたが、その割にはちゃんと出来ていたので、こんなもんかと思いました。しかも、舞台上にはワキはおるけど、地謡がいなぁぁ~い!!あんな観客がどきどきする舞台を務めた自分は偉いです、と自分で言っておきます。
    では、また。左様なら。

  8. 巴園の傍らに住まいされる仙人様!
    書き込みありがとうございます~。
    本当にWSと舞台、楽しかったです。
    …終わってしまったのが残念なばかり。
    マイペースというか、ぼけーっとしているのは元々で、
    別に年齢と関係ないですよ(^^;)
    落ち着いて見えました? 私、全然落ち着いてなかったんですが。
    緊張しぃなんです、私は。ですから、お言葉掛けて下さったのが
    本当に助かりました。プレッシャーと緊張で、舞台に出ている時間より
    待ち時間に疲れてしまいました(^^;)
    DVDを見ると、地謡が前半後半で交代するために、間狂言の時には
    地謡がいなくて、なんか舞台上が寂しく見えますよね~。
    では、また。