京舞井上流を初めて見に行ってきました

京舞井上流の提灯

能楽とも関わりの深い京舞井上流

京舞井上流は名前の通り、京都で成立・発展した日本舞踊の一種です。京都の年中行事「都をどり」など、祇園の芸妓さん・舞妓さんたちの舞といったイメージが強いですが。

京舞井上流は名前だけは、能楽との関連で前々から知っていました。というのも、今の井上流家元・五世井上八千代さんのご本名は「観世三千子」。シテ方観世流の能楽師・観世銕之丞師の奥様です。そして父上が同じく能楽シテ方観世流で人間国宝の片山九郎右衛門師。そして先代の井上八千代(井上愛子)さんが九郎右衛門師のお母上。そのまた先代も片山家の方…という感じに、とても片山家と関わりが深いのです。片山家の財団(片山家能楽・京舞保存財団)の名前に「京舞」の文字が入っているのも当然です。

その京舞井上流を初めて見に行きました。今月1日~6日まで連日催されていた「井上愛子(四世八千代)三回忌追善 京舞」という会です。最初の『東山名所』という舞から、華やかな着物を来た10人の女性が見事に揃った舞でした。もっとも見手の方は「うわー、私、祇園で舞を見てるんだなぁ~」と違う感動をしてますが(笑)

初めての祇園甲部歌舞練場

祇園甲部歌舞練場
京舞井上流は片山家との縁もあって、能と関わりの深いと聞いています。「踊り」といわず「舞」といったり、体の軸がぶれない舞い方、表情を使わないといったのは能と共通ですが、舞踊ということもあって、能よりも更に「物語」というのがはっきりしません。より純粋に、人間の身体表現によって風情を表現する、というものなのかな、と思いました。

あと女性による舞ということもあって、よりしなやかで色気があるように感じます。でも日本伝統の色気って、あからさまなものではなくて、抑えたところに出てくる。そんな感じでした。

一番インパクトがあったのは、井上八千代さんによる舞《長刀八島》。能《八島/屋島》に取材したものなので、親しみがあったというのもあるのでしょうけれど。最初、棹を持って登場して、能の前場・漁師が春の浦の情景を語る風情を表し、後半はまた修羅道の鬨の声と能《八島》と同じ歌詞で長刀を持って舞うもの。

能でいえば飛び回りや合膝といったような激しい型も多かったのに、全然、着物の裾も乱れないんですよね(袴も履いてないのに!) ピタッと止まる長刀の刃先、強いけれど乱暴ではない足運び。春の夜の波より明けて。敵と見えしはとグッと舞台上手を見込んだら群れ居る鴎と緊張が緩和するところなんて、ホント良かったです。

最後は井上八千代さんを筆頭に、井上流の名取が全員出演する群舞《夕顔》。一糸乱れぬ舞姿が見事でした。いやー良いもの見たなぁ。客席にも芸妓さんや舞妓さんがいたし、とっても祇園な雰囲気でした。

井上愛子(四世八千代)三回忌追善 京舞
◆2006年10月4日(水)16時~ 於・祇園甲部歌舞練場
★上方唄《祇園名所》照□満・佳つ文・真生・琴葉・満友葉・有佳子・鈴子・真織・小愛・若奈
★義太夫・上方唄《伊達奴》井上安寿子
★一中節《夢の夜》井上奈加子・井上照千代
★地唄《長刀八島》井上八千代
★地唄《袖香爐》井上竹葉
★義太夫・上方唄・地唄『夕顔』井上八千代ほか

花見小路で湯豆腐も

湯豆腐食べました
なお、京舞を見る前に花見小路沿いの店で、湯豆腐御膳を食べました。とっても美味しかったです。祇園堪能!

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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4件のフィードバック

  1. みゆみゆ より:

    素敵そうですね!
    一度、図書館で先代井上八千代さんのドキュメントを借りて見たことがあります。
    湯豆腐のお店も素敵ですね!
    京都行きたいです!!でも今年の顔見世は行けないと思います・・・。うーん・・・。

  2. 花兎 より:

    先日の芸能花舞台で先代八千代さんの舞う映像を見ましたが、かなり熟年の頃なのにびしっと・・・筋肉や骨格の動きが伝わってくるような、すごい身体技能だなあと思いました。でもって色気もあって・・・
    一度は生で京舞を見てみたいです(そして湯豆腐も)!

  3. amizあみ より:

    贅沢な祇園満喫
    わたしも歩いてみたいです
    んと・・なんだか違ってるかしら? (^^ゞ

  4. ★みゆみゆさん
    とっても素敵でした。
    会場の歌舞練場に入ると、芸妓さん舞妓さんが
    ズラーッと並んでお出迎えしてくれるんですよ。
    そして帰りは、当然お見送り。
    …こっちの方が照れてしまいました(笑)
    先代八千代さんのドキュメント、そんなのもあるんですね。
    見てみたいものです。大阪中央図書館で探せばあるでしょうか。
    今年の歌舞伎の南座顔見世は
    中村勘三郎さんの襲名披露ですよねぇ。
    …う、見たい。『京鹿子娘道成寺』もありますし。
    でも、休みがぎりぎりにならないと分からないので、
    チケット売り切れてしまいますよね…。無理でしょうか。
    ★花兎さん
    白洲正子さん監修、吉越立雄さん撮影による
    先代の井上八千代さんと、シテ方喜多流の友枝喜久雄師の
    写真集『姿』というのがあるのですが…
    写真でみてもホント素敵なんですよね、ご先代。
    せめて映像でも見てみたいものです。
    ちなみにその写真集に、曾孫(当代八千代さんと銕之丞師の娘さん)
    観世安寿子ちゃんの、3歳の可愛らしい舞姿も載っているんですが、
    今回、新しく名取「井上安寿子」となって、『伊達奴』という
    舞を舞ってました。今は17歳なんだそうです。
    …勝手ながら、ちょっとびっくり。イメージが3歳だったので(笑)
    湯豆腐は是非。
    そのお店で一番安かったので…(笑)
    ★amizあみさん
    コメントありがとうございます。
    歩くだけなら、タダですし(笑)
    京都にいらっしゃったら是非とも。
    四条通の南側は私も今回初めて入りました。
    今まで、ちょっと畏れ多くて(^^;)