とうとうたらりたらりら

篠山春日神社能舞台

元旦0時から行われる《翁》神事

皆様新年明けましておめでとうございます。

去年は仕事が全然片付かず、実家に帰る途中の電車内で年が明けてしまいましたが、今年は仕事も早めに終わり、無事年内に実家の町に到着。これなら篠山春日神社の能楽殿で元旦0時から行われる《翁》神事に間に合うなと、駅まで車で迎えに来てくれた妹と父をいきなり誘って、篠山まで行ってきました。

《翁》は能楽師によって行われますが、能ではなく神事、芸というよりは祈祷です。神体である翁面をかけ、神と一体化した翁大夫が両手を広げてこちら側を向いてくれるだけで、良いなぁと感じます。なんだか今年は良いことがありそうです。

ちなみにタイトルにつけた「とうとうたらりたらりら」は、『翁』で大夫が最初に謡う謎の文句です。意味は分かりませんが、呪文のようで大好きです。

とうとうたらりたらりら、たらりあがりららりとう

所千代までおはしませ、我らも千秋さむらはう

鶴と亀との齢にて、幸ひ心に任せたり

天下泰平、国土安穏、今日の御祈祷なり

千秋萬歳の、祝ひの舞なれば、一舞舞はう萬歳楽、萬歳楽、萬歳楽、萬歳楽

千歳の吐いた息が白く見えるという、非常に寒い中で行われた《翁》ですが、野外であり、神社が初詣客でごったがえす中に行われることなどが、より根源的な形のようにも思え、ありがたさが増すように思うのは錯覚でしょうか。

千歳・翁の部分だけで、三番三は行われない形なんですが、見終わったときには手足が冷え切っており、これぐらいが限界かと(笑) 車に乗り暖房をつけて、やっと一心地つきました。

連れて行った妹も「めっちゃカッコ良かった~」と満悦だったみたいで嬉しかったです。いつも「能なんか分からん」とつぶやいてる父も、建築好きだけあって、篠山藩十三代藩主・青山忠良が文久元年(1861)に奉納した能舞台には感心していました。

ともかくも、家族揃って新年を『翁』を観ながら迎えられたのは本当に良かったです。深夜なのに能楽バカの私に付き合ってくれてありがとう(^^)>父・妹

丹波篠山翁神事

◆1月1日(祝)0時~ 於・篠山春日神社能楽殿(兵庫県篠山市)
★観世流『翁』
 翁:梅若万三郎 千歳:梅若泰志
 笛:赤井啓三 小鼓:大倉源次郎・飯富孔明・上田敦史

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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9件のフィードバック

  1. とりあ より:

    あけましておめでとうございます。
    今年はゆげひさんにとって挑戦の年ですね。
    これから先、いろいろ大変なこともあると思いますが、自分を信じてがんばってください。

  2. ★とりあさん
    明けましておめでとうございます。
    お言葉ありがとうございます。
    今年から、いろいろ変わります。
    この、能楽の淵を手放してしまうこともその一つで…。
    せめて、手放した分だけの力は、新しいことに
    注ぎ込ませていただこうかと思ってます。

  3. 四國三郎 より:

    あけましておめでとうございます。
    はじめまして、四國三郎(しこく)と申します。
    とうとうたらりの件ですが、私は寿式三番叟で気になって
    調べていたのですが、
    下記のところで、意味が開設されていました。
    http://blog.arcturus-star.com/?eid=379509

  4. ようこ より:

    ★四國三郎さん
    あけましておめでとうございます!
    寿式三番叟、四國三郎さんは長唄ではなく、
    義太夫のようですね^^。
    チベット語説やら韓国語説やら….
    いろいろな解釈がある「とうとうたらり…」。
    個人的にはこれは意味のある日本語だと思っているので、
    漢字があてはめられているのを見ると、
    ちょっとうれしいかも。
    ぜひ一度、能の「翁」もどうぞ!

  5. 柏木ゆげひ より:

    ★四國三郎さん、ようこさん
    『寿式三番叟』、文楽で拝見したことがありますが、
    人形がきちんと翁面をつけて舞うのに
    とても感心してしまいました。
    能の〈翁〉は厳粛な雰囲気が漂いますが、
    二人で舞う三番叟は、片方が休憩してみせたりと、
    なかなかユーモラスですし。
    さて、「千里也多楽里」云々の話ですが、
    これは平安時代の書物だといわれる『法華五部九巻書』に
    載っている文句です。
    ですが、現在は『法華五部九巻書』は偽書だといわれているので
    これも〈翁〉の「とうとうたらり…」の言葉の意味を
    疑問に思った人物が上手く漢字を当てはめ、
    平安時代に仮託した、と考えるのが正しいと思います。
    私も以前、これを見つけて
    「翁の詞章の意味って説き明かされていたんだ!すごい」と
    興奮したものでしたが、残念ながら間違いだったようです。
    疑問は疑問のまま、取っておくのもまた楽しいとは思います。

  6. ようこ より:

    ★お師匠(=柏木ゆげひさん)
    詳しい出典ありがとうございます!
    それにしても機嫌なおしていただいてよかったですわー。
    それとも私が早朝ごとごとネットいじっているのは想定外でしたか?
    ところで話は変わりますが(一応「法華五部九巻書」つながり)、「翁猿楽」って「おきなさるがく」と読むのかと思っていたら、「おうえんがく」って読むんですね。
    とそんなこんなを書いていたら、お、郵便屋さんが!
    (半分私信です、失礼いたしました!)

  7. 四國三郎 より:

    ようこさん、ゆげひさん
    御解説ありがとうございます。そーなんですか、偽書なんですかぁ(^^;) いろいろ勉強になります、有難うございます。私は阿波なんですが、文楽の頭の大江巳之助師匠が正月の仕事初めに寿式三番叟を聞きながら仕事をはじめるというお話を聞いて、それを真似ています。今もBGMは寿式三番叟
    です(^_^)。阿波は淡路とならんで人形浄瑠璃の盛んだったところで、阿波の農村舞台は今でも残っており、最近は復活公演が行われています。私の母は人形師天狗久の3代目と同級生だたそうです。
    能は昨年、娘についていって拝見させていただきましたが、
    仕手の命を掛けた舞に心が震えました。いやー、今でも真剣に舞を精進しているのですね。驚きました。自分も仕事をあのように出来ているか?反省しきりです。また機会がありましたら行こうと思っております。また、ご指導、ご教示お願いいたします。

  8. 兎谷 より:

    明けましておめでとう御座います。
    篠山春日神社の翁!良いですね~行ってみたい!
    つい先日、梅原猛の『うつぼ舟Ⅰ「翁と河勝」』を読んだら、最後の方に、翁の詞章について書かれていましたよ…と、言っても新説っていうほどでは有りませんが。。
    フィールドワークの話とか、金春欣三氏を訪ねた話とか、本編とは違う部分が面白かったです。
    また、お邪魔します、その節はよろしくお願いします。

  9. ようこ より:

    ★兎谷さん
    明けましておめでとうございます!
    「翁と河勝」、面白そうですね!
    さっそく図書館で予約入れました。
    (↑買わずに済まそうとするやつ…^^;)
    こちらこそ、幽玄堂さんにもお邪魔します。
    よろしくお願いします。
    関東方面の情報は大変だと思いますが、
    頑張ってください。