能本をよむ会「大江山」

味方健先生の話題豊富な”トークショー”

今週水曜日は能楽師で同時に学者の味方健先生「能本をよむ会」へ行ってきました。会場はJR京都駅前のキャンパスプラザ京都。参加者はかなり多く50人近くいたんじゃないでしょうか。お年を召した方が多いですけれど、普通に研究的な話なども入るのに、味方ファンのレベルの高さを物語っているのでしょうか。

今回のテーマは〈大江山〉。源頼光による大江山の酒呑童子退治の話を仕立てた能です。味方先生は鬼退治ものとして「たわいもない」と仰りながらも、最初が一声から始まることや、地謡の中に小歌ノリがあることなど作者不詳ながらいい加減な人物ではないとおっしゃる。酒宴のあたりは山伏と童子の衆道の関係を臭わすし、修辞も凝っていると。

私自身の感想としては〈大江山〉は学生最後にお稽古を受けた謡で、最後の自演会でも謡った、思い出深く好きな曲だけに、味方先生がそう仰ってくださるとなんだか安心します(笑)

童子と山伏、天狗というと〈花月〉の話などもありますが、そのあたりのアヤシイ雰囲気が、能としての奥行にもつながっている気がします。実際に上演すると、ワキが人数が多くて大変だそうですけれど、、、。

配布資料の本文は野上豊一郎『解註 謡曲全集』のもので、喜多流の詞章でした。そんなわけで、観世流とは本文が違う部分もあるのですが、そこから明和改正謡本批判につながったりするのが凄いです。

あと渋川本『御伽草紙』の「酒呑童子」の絵もコピーして載せてらっしゃいましたが、これに登場する酒呑童子の恰好が、長袴に見えるところから、能〈大江山〉の替装束の場合と似ていて、なんらかの関連があるか、とのこと。

学問的な話だけでなく、実演家としての実感にあふれたこんな謡曲講義はほかにないと思います。〈大江山〉に直接関係ない話も結構あるのですが、それはそれでいろいろと興味深い話ばかりで。

次回は8月17日(水)14時半~、曲は〈楊貴妃〉とのことです。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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