野々村戒三。号は蘆舟、または芥叟
今、野々村戒三『近畿能楽記』(大岡山書店、1933年)という本を読んでいます。
古い本なので内容的にも時代遅れな感じもありますし、今となっては説が変わっているようなものも多いのですが、関西の昔の話を取り扱っている本としては貴重なので読んでいます。特に今はなき明治から昭和の関西能楽界の様子を、実際に見聞きしている文章という意味で力強さがあります。
しかし古い本なので、今は使われないような難しい書き方がされていて、時々辞書を引きながらの読書です。古い史料の引用部分ならともかく、まさか地の文で辞書を引くことになるとは(笑) 例をあげると
これが恰度勧進能の始まつた頃なので
キリの『石橋』をば、『七騎落』の次にくり上げ、四番目に直して、演じて畢つた。這間の消息に就いて『舞曲拾葉抄』の著者は、左の如く語つて居る
その淺野榮足が、怎ういふ人で
然し、此の至盛は病身で、捗々しく御能御用を勤むる事も出来ない所から
という感じです。まあ、読めなくてもだいたいの意味は推測がつくんですが、念のため辞書を引いているという感じです。
これらは良いとして、読んでいて詰まったのが『福氏門人録』という書物の紹介の部分。福氏、つまり福王家の門弟録なのです。その紹介の文章に中には、姓名のみの者もあるが、大部分は、住處、死亡年月日、山會出の年月などが、記されて居るとあるんですが。
「山會出」って何でしょう。一門の定例の会合か何かと想像したんですが、紹介されている中の「酒井市左衛門」という人の場合、寶永元申年九月ヨリ山會出。元禄午極月十七日門入とあって、入門より「山會出」の方が早い人などもあって、分からない。
本のどこにも説明はないし、辞書にも載っていません。ネットで検索してみても、現在の政治家の政治資金管理団体「陸山会」関連ばかりひっかかりますし…どなたかご存じの方がいらっしゃればお教えください。
追記
ご指摘いただきましたが、宝(寶)永(1704~1711)よりも「元禄」(1688~1704)の方が古い年号なので、「入門より『山會出』の方が早い」というのは、私の「文章に先に出る方が早い年号」という思い込みによる誤りでした。訂正させていただきます。
となると、「一門の定例の会合か何か」なんだと思われますが、決定的なことはやはり分かりません~。
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