世阿弥ゆかりの小べし見

世阿弥も使った?「小べし見」の能面

昨日は休み。最近は休みの日は、しがみついたって能に触れてやると思ってます(笑) というわけで、大阪観世会定期能へ行ってきました。演目は平野元章師の能《班女-笹之伝》に善竹忠一郎師の狂言《仏師》、観世清和師の能《鵜飼-空之働》でした。

で、今回印象深かったのは、何と言っても《鵜飼》の後シテに使われた面! 観世宗家に伝来する赤鶴(しゃくづる)作の「小べし見」でした。世阿弥の聞書を息子・観世元能がまとめた『申楽談儀』という本がありますが、そこに記された、世阿弥も使ったかもしれない、と言われている能面なのです。

出合の飛出、此座の天神の面、大べし見、小べし見、皆赤鶴也。…大べし見、天神の面、もっぱら観阿よりの重代の面也。…小べし見は、世子着出だされし面なり。余の者着べきこと、今の世になし。彼面にて、鵜飼をばし出し出だされし面也。異面にては、鵜飼をほろりとせられし也。面も、位に相応たらんを着べし
『申楽談儀』面の事

小べし見は、観阿弥以来使用されていた天神や大べし見とは違い、世阿弥が使用し始めた種類の鬼の面だといいます。ですから、世阿弥にとっては《鵜飼》はこの面でなくては!という思い入れがあったのかな…などと想像しています。。

その面を、世阿弥の遠い後継である現在の観世宗家・清和師が使用して演じる、というのは、私の歴史ファンとしての部分を強く刺激してたまりませんでした。こういうのは嬉しくなってしまいます。

後場の後半に、舞台の真ん中で扇を笏のように構えて安座している型がありましたが、袷狩衣を衣紋付にしていた装束によく似合って、閻魔大王の威厳が現れているような、なんとも素敵な型でした。

そういえば《鵜飼》の後シテといえば赤頭のイメージなのですが、今回は小書の関係か黒頭で演じられていました。全体が引き締まる感じで良いですね。シテ以外にも、地謡・囃子の好演もあって、面白く楽しい『鵜飼』でした。

大阪観世会定期能

◆2007年9月8日(土)13時~ 於・大阪能楽会館(大阪市北区)
★観世流素謡『融』国枝良雄・梅若修一
★観世流能《班女-笹之伝》
 シテ:平野元章
 ワキ:江崎金治郎 ワキツレ:江崎敬三・和田英基 アイ:善竹忠一郎
 笛:赤井啓三 小鼓:清水皓祐 大鼓:辻芳昭
 地頭:梅若吉之丞
★大蔵流狂言《仏師》
 シテ:善竹忠一郎 アド:善竹隆平
★観世流能《鵜飼-空之働》
 シテ:観世清和
 ワキ:福王茂十郎 ワキツレ:福王知登・喜多雅人 アイ:善竹隆司
 笛:野口傳之輔 小鼓:荒木賀光 大鼓:山本哲也 太鼓:三島元太郎
 地頭:大槻文蔵

※なお、「小べし見」「大べし見」の「べし」は「癋」という字なのですが、機種によって表示できない場合があるようなので、ひらがなに置き換えて表示しています。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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2件のフィードバック

  1. ami より:

    私もあの面好きでした
    ぐっとひきしまった口元が力強くて
    でもあくまでも静かで威厳に満ちている感じでした
    ご宗家はさすがというか
    どのお舞台を見ても感動いたします
    昨日は小書きつきであっという間に終わってしまって
    もっともっと拝見していたかったです

  2. いい面でしたね~。
    赤鶴の小べし見、重要文化財だそうですが、
    展示されているのを見るのではなく、舞台で使われているのを
    拝見できる機会ってのは少ないでしょうから、
    本当良い機会を見れたな~と思っています。
    「空之働」の小書は確かにいろいろ省略されてしまうので、
    もっと沢山見たかったという気持ちもあります。
    が、惜しいぐらいが一番良いのかもしれないと思うこともあります(^^)