能のデザイン図典

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中森晶三・岩田アキラ『能のデザイン図典』東方出版、1995年

『翁』を含めた能を扮装別に分類して、写真が掲載された本。一応は神・男・女・狂・鬼の五番立の順に掲載されてますが、例えば、一般にされている分類上では三番目ものではない曲でも、女性をシテとする曲はほぼ共通の扮装なのですから、「女」の項に入っているといったように、随所に工夫の見られる本となっています。

『弱法師』の俊徳丸と『鵺』の前シテの幽霊がほぼ同じ扮装というのは、見てみれば当たり前ながら、なかなか指摘されているのを見ないように思うので、面白く感じました。ワキの扮装についてのページがあるのも良いですが、もう少し量があっても…と思わなくはありません。また登場人物の写真だけでなく、作り物や小物の写真があるのもポイントですね。

解説にある中森昌三師による能装束・能面ほかの分類は詳細を極めます。能を見るたびにこの本を開いては確認がしたくなる欲求に駆られるほどに。最後のページにはヘレン・ケイさんによる「NO:THE BEAUTY」という英文の文章と、写真につけられた番号に対応した英語の注があります。元より写真主体の本ですから、英語圏の人に能を紹介するのにも使えるかもしれません。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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