研究集会「縦断横断 光悦謡本―慶長文化の精華を解析する―」

法政大学ボアソナードタワーからの眺め

写真は法政大学ボアソナードタワーからの眺めです

法政大学能楽研究所主催、法政大学ボアソナードタワー26階スカイホールで昨日催された研究集会「縦断横断 光悦謡本―慶長文化の精華を解析する―」へ、一昨日、夜行バスで東京へ向かいました。予定はしてなかったのですが、直前になって、やっぱり行きたい!とほとんど思い付きで参ったものです。

光悦謡本といえば、過去から現在まで数多く出版された謡本の中でも、最高の美品として有名です。でも、それだけではない。それをしっかりと「光悦謡本とは」の定義から始まって、観世流謡本として位置から、光悦謡本を含む嵯峨本の古活字や出版の背景、先行する謡本、表紙絵の流行など、盛りだくさんの内容の研究集会でした。

私が光悦謡本に無知なため、午前で概要を掴み、昼休みに同建物の14階にある展示を拝見し、午後からの研究発表を、深い解説として拝聴する形になりました。何度も各先生方が言及されていた、江島伊兵衛・表章『図説光悦謡本』(有秀堂、1970年)は読まねばならないなぁ…と痛感。

展示では、特製本・上製本・色替本・袋綴本など各種の光悦謡本が勢ぞろい! 何度か解説文は読んでいましたが、実物を比較して見ることができて、ようやくこういう区別だったんだ…と納得できました(^^;) 私の光悦謡本の知識ってそんなレベルなのです。

そのほか、制作に関わったとされる観世愛身・角倉素庵・本阿弥光悦の間の手紙、光悦謡本に使用されている雲母摺の料紙が使われている他の本など。伝松平伊豆守家本という謡本や、能・狂言絵巻なども出ていました。

個人的に面白かったのは、光悦謡本を模して作られた「版本」があったこと! 光悦謡本は古活字で刷られたものですが、これは全体を一枚の板で刷ったもので、こんなのが作られるほどに人気があったのでしょうね。あとは雲母摺の料紙が綺麗だなぁ…という幼稚な感想なのが情けなや。

発表の内容については、また各発表者の先生方がまとめられると思いますので、当日チラシにも載っていた発表題のみ記録として記しておきます。

研究集会「縦断横断 光悦謡本―慶長文化の精華を解析する―」

2016年2月27日(土)10時~17時半、於・法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー26階スカイホール
★「光悦謡本と観世身愛」伊海孝充(法政大学)
★「光悦謡本の活字と組版」鈴木広光(奈良女子大学)
★「『吾妻鏡』の刊行と嵯峨本出版文化圏」小秋元段(法政大学)
★「周縁から見る光悦謡本」宮本圭造(法政大学)
★「長頼謡本考」落合博志(国文学研究資料館)
★「伝雛屋立圃筆謡本について」柳沢昌紀(中京大学)
★「慶長前後の謡本の絵表紙流行について」佐々木孝浩(慶応義塾大学)
★「謡本の奈良絵巻・絵本」石川透(慶応義塾大学)
★パネルディスカッション 各発表者

研究集会は終わりましたが、展示自体は3月31日(木)まで行われています。謡本出版史上最高の美本群でありますし、その前後や周囲(光悦謡本に至る謡本群と、同様の料紙を使用した「貞永式目」、光悦謡本の残滓といえる謡本群)も含めて、見通すことができる展示ですので、是非とも。

光悦謡本の世界

Pocket
LINEで送る

柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

オススメの記事