国立能楽堂に展示を見に行く
光悦謡本の研究集会に参った次の日には、国立能楽堂の企画展示「近世大名家の能楽」を拝見に行ってきました。
50点を越える資料が所狭しと並べられており、これも興奮のしっぱなしでした。展示の監修をされた法政大学教授の宮本圭造先生が、前日の研究集会で資料を一つでも多く展示したいと仰っていた通り、展示には資料名程度で、キャプションなどなし。
その分、会場では16ページもある解説冊子が無料配布されており、これが無料とは思えない充実ぶりで、冊子のページを開き、解説と資料を見比べながら展示を楽しみました。
展示室内には、資料で触れている大名家の領地が日本地図で示されているのですが、ほぼ日本全国!
資料に興奮のしっぱなし
私の地元である現・兵庫県域でいえば、随一の大藩である姫路藩酒井家のほかに、尼崎藩の桜井松平家の資料もありました。兵庫県域は畿内である摂津を含みますし、全体的に畿内に近いこともあって、「西国への抑え」であった姫路藩のほかにはあまり大藩はなかった地域なんですが、明石藩の福井松平家、柏原藩の織田家、篠山藩の青山家などには能楽の話が結構ありますよね。
姫路のワキ方江崎家の関連で少し調べ始めている姫路藩の城内の番組もあり、酒井雅楽頭家が姫路藩に入部して以来の初代藩主・酒井忠恭(ただずみ)が載っていました。酒井雅楽頭家は代々金剛流をよくしていたそうで、金剛流はあまり「藩の能楽」への採用例が多くないので興味があります。忠恭の長男・忠仰(ただもち)には、観世流への転流を勧められたものの「父祖以来の流儀である」と断ったエピソードが、松岡心平/編『観世元章の世界』(檜書店、2014年)に収められた宮本先生の論考に紹介されていたことを思い出したりしつつ…。
また、江崎欽次朗先生が東京に行かれた際にご覧になって、ご先祖との関わりがあるかも、と興奮したという膳所城の能舞台寸法書もあり、私もまんまと影響されて興奮していました(^_^;) 私、膳所が独立した藩だということも知らなかったのですね。大津が天領だったので、今の大津市全体が天領だと思い込んでしまっておりまして…。
キリがないけれど、まだ書く
…と、一々述べていくとキリがないほどの量だったのですが、あと印象深かったものとしては仙台藩で編纂された能楽資料の中で、「金春大蔵流」の文字が目についたこと。金春家の分家である大蔵家を宗家として、仙台藩独自のシテ方流派としてあった…という話は本で読んで知っていましたが、こうして実際に目にするとまた感じ方が変わってきます。
それから幕末の水戸藩主の徳川斉昭による新作能や新作狂言も。井伊直弼にも新作能・新作狂言がありますが、直弼とは政敵ともいえる徳川斉昭にもあるという共通点が面白く感じました。幕末という時代も関係ありそうですね。…と本当にキリがないので、この程度で。
研究集会とあわせて感じたのは…やっぱり東京はええなぁ…ということでした。こちらの展示も3月27日(日)まで続いていますので、関東の方は是非ともご覧くださいませ。
国立能楽堂企画展示「近世大名家の能楽」
2016年1月6日(水)~3月27日(日)10時~17時。[月曜日休室(祝日の場合は翌日)]
会場:国立能楽堂資料展示室(東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1)
入場無料
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