大鼓の稽古 社会人編

 休み一日目。今日は大鼓の稽古。少し気持ちとして遠ざかっていた能に一気に引き戻された日となりました。なにせ研修中は精一杯で、練習をする余裕はなかったですから、今日は朝から暇さえ見つけては、大鼓の手附を見て謡を謡いながら手を覚えていました。

 お稽古場に入り挨拶をすると、師匠が私の就職を祝ってくださり、また熱いアドバイスを賜りました。稽古の実感として、不思議ですが、本当に自分の性格が良くも悪くも顕れるように思います。稽古を通じて私のことをよくご存知の、師匠のお言葉は非常に嬉しかったです。賜った言葉に込められた思いを裏切らないようにも頑張らねば、と。

 今日お稽古していただいたのは『天鼓-盤渉』。「盤渉」というのは笛の調子(音階)を表す言葉で、「楽」と呼ばれる舞部分が普段よりも高い調子で吹かれます。高い調子になると全体的にテンポがより良くなりますが、ただテンポアップするだけではなく、逆にグッと締まる部分もできて、つまりは緩急がより強くなるのですね。

 テンポアップということで、掛け声を普段より高めに、強く掛けることを心がけましたが結果は…どうも叫んでいた感じで、掛け声が後の方に伸びてしまい、どうも締りの悪い盤渉楽になってしまいました(苦笑)

 たった「ヤ」「ハ」「ヨーイ」「イヤー」の4種類しかない掛け声。しかし、こんな奥の深いものもなかなかないような気がします…。やっぱり大鼓の稽古は難しい。だからこそ、やりがいも楽しさもあるんですけれどね。

 次の稽古曲は『忠度』。薩摩守忠度といえば、右手を斬り落とされても、左手で敵の武者を投げ飛ばしたという平家一の剛の者。しかし、彼の無念は和歌にこそあった…という大好きな曲。

 謡を読んだり聞いたりするたび、彼の和歌「行き暮れて木の下蔭を宿とせば。花や今宵の主ならまし」に対応して、最後に「木陰を旅の宿とせば。花こそ主なりけれ」と結んだ作者・世阿弥のセンスの良さに感動してしまいます。それをまさか打つことができるだなんて! 頑張るぞぉっと。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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5件のフィードバック

  1. kitola より:

    ゆげひさん
    ご卒業・ご就職、おめでとうございます。
    街は新社会人、新入生の若い姿とパワーでとても新鮮ですね。これから先の方が長い長い社会人生活、どうか心身いつもクリアーな状態にして、楽しんでくださいね。
    実は私も昨年11月から仕事と精神面に余裕が持てず、お稽古をずっとお休みしています。先生より、いつも良くして頂いているお稽古場の方々にご心配をお掛けしている様で。。。
    来週のお稽古より復帰予定ですが、初心者に逆戻りです。さぁー気合を入れてガンバローー!!
    ゆげひさんも、初めての一人暮らし、何かと大変なことがおありだと思いますが、お体に気をつけて早くリズムに乗られます様応援しています。
    日記、ますます楽しみデス(*^_^*)

  2. ぼんぼり より:

    ゆげひさん
    ご就職おめでとうございます。仕事とお稽古との両立は大変でしょうけれど、これからの人生で能が自分を救ってくれることもあるのではないでしょうか。
    私も『忠度』が大好きです。あの歌の所へ来ると涙がほろほろでした。

  3. クリ~ムぺんぎん より:

    「盤渉楽」は大小と太鼓で全然雰囲気が変わりますよね。
    大小のときは、ただ「ノリよく」ではないと認識しています。
    たとえ「天皷」であっても・・・。
    「忠度」いいですね。大好きな曲。
    ラストが歌ってのが素晴らしい!
    囃子の稽古ではないことですが、後シテの一聲からの謡のアシライ、めっちゃ難しいですよ。
    また忌憚のないご批評、よろしくお願い申し上げます。

  4. Santal より:

    ゆげひさん、こんにちは。
    前々から、興味深く拝見しておりました。
    一度ご挨拶と思いつつ、私の方は最初から能楽関連のブログで出発した訳ではありませんのでなんとなく気が引けておりました。
    どうぞ、宜しくお願いいたします。

  5. ★kitolaさん
    ありがとうございます~。
    なんだか"フレッシャー"などと言われると違う気もする私(笑)
    まだ勢いに載っているだけですが、マイペースに
    楽しみながら、日々の生活に慣れて行けたらなぁ、と思ってます。
    偶然にも最初の方は、お稽古に通うことができそうですが、
    この後はどうなって行くのかちょっと心配な部分もあります。
    変わらず続けられたら良いなぁ、と。
    ★ぼんぼりさん
    ありがとうございます~。
    仕事と稽古との両立をしてらっしゃる方って、
    あまり存じ上げないのですが、なんか、ここまで
    入れ込んでしまうと、私の大切な一部なんですよね。
    絶対に切り捨てたくない部分です。
    能や狂言のために仕事を投げ出すつもりはありませんが、
    また逆もしたくないですね。
    『忠度』大好きと言っていただけて嬉しいです(^^)
    ★クリ~ムぺんぎんさん
    先日はお疲れ様でした。書き込みありがとうございます。
    はい、ただ「ノリ良く」ではないのは頭では理解している
    つもりなんですが、なかなか実際にはできません。
    それを体で会得しようとする努力が練習だと思ってますので、
    練習を重ねて行きたいと思ってます。
    次の『忠度』。手を見ながら謡を読むと更に良さが分かってくる
    気がします。後シテの一声から…の部分のお稽古が受けられるのは
    いつの日か分かりませんが、その日を夢見て励むことにします~。
    ★Santalさん
    こんにちは。初めましてですよね? 書き込みありがとうございます。
    そんなご遠慮なさらず、書き込みくださいね。
    そんな能以外は受け付けない!って人間ではありませんので(笑)
    どうぞ、宜しくお願いいたします。