「能のことばを読んでみる会《巴》」無事終了しました

能のことばを読んでみる会《巴》

11名の方にご参加いただきました

3か月に一回のペースで催しております「能のことばを読んでみる会」。昨日(2/7)夕方17時半より、大阪市西区のMARK STUDIOにて、第9回テーマ曲《巴》を無事終了することができました。参加いただきました皆様には深く感謝申し上げます。

今回はなかなか申し込みがなく心配していたのですが、蓋を開けてみれば11名。一応のラインとして「10名の参加者」と思っているので、それはクリアできましたのですが、余裕をもって用意したたつもりの資料がちょうど11部だったので、内心ヒヤヒヤしておりました。

最年少参加者は小学校6年生!

今回、初めて参加いただいたのが、なんと小学校6年生の女の子! 今までの中で最年少の参加者です。とはいえ、既に太鼓を3年、謡と仕舞を2年お稽古しているベテランです。

最初に「巴御前ってどんな人か知ってますか?」と尋ねてみたら、「木曽義仲の家来の強い女の人で…」と完璧な答えを返してくれまして、リードする役目の私のほうが、タジタジでした(^_^;) 後生畏るべし、とはこのこと。

《巴》の本文をどのように読んだか

今回、能の《巴》はあくまで、武者として義仲に仕えていたものの、最期の最期で汝は女なりという理由で置いていかれた…そのことが巴の執心なのだ、ということを改めて確認しました。

その上で原作にあたる『平家物語』木曽最期の巻との比較をしつつ、『平家物語』では巴が長刀を使用している描写が認められないこと、義仲は自害ではなくて射殺されていることを、あえて《巴》では改変して、巴主体の視点にいることなどを軸にして読むことができたかな、と思います。

「能のことばを読んでみる会」では、できるだけ実際に上演される舞台に近づけたい、ということから、資料の中に『狂言集成』から和泉流の間狂言も入れてみましたが、今回の間狂言は長い…! そして、中では義仲が自害ではなく射られて討たれたなど、能《巴》より、むしろ『平家物語』に近い描写となっていることが印象的でした。結果として、期せずして『平家物語』の内容のおさらいとなりましたが、一方で能の本文と間狂言のことばが別々に成立したことを改めて感じました。

また能の技法としては、後場はほぼずっと地謡が謡い続ける形になっている《巴》ですが、場面場面で強吟と弱吟を切り替えることで、効果的に力強い戦語りと、情緒的な部分の切り替えがなされていることなども確認できたと思います。

終わった後、参加者さんたちに感想をうかがっていたら、吟が変化する位置が、流派によって少しずつ違うことに気付いた方もいらして、細かい資料を作ったかいがあったなぁ…!と嬉しくなりました。

おまけとして、木曽義仲関係の能を非現行曲(いわゆる廃曲)も含めてリストアップもしましたが、その中でも多い巴がシテの曲でも《御台巴》《衣潜巴》には、今の《巴》に御小袖を引きかづきとあることも含めて、終曲部に衣をかずく描写が共通してあることが気になりましたが、それに推定でもなんからの理由付けをすることはできず、今後の課題にさせていただこうと思います。

今回、この催しをするために、さまざまな本や論文を参考にさせていただきましたが、もっとも参考にしたのは源健一郎「義仲にまつわる女性」(鈴木彰・松井吉昭・樋口州男/編『木曽義仲のすべて』[新人物往来社、2008年]所収)です。同書に収められた文章はほかも面白そうなので順番に読んでいますが、当日までに読み終わらず、今も読書を続けています。

次回は日程・会場未定

次回についてはまだ日程・会場が決まっていませんが、今までのペースを守って、5月に京都での開催を予定しております。また、決定次第お知らせさせていただきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

Pocket
LINEで送る

柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

オススメの記事