茂山千之丞師にサインを頂きました

茂山千之丞師サイン

 今日、大槻能楽堂で催されました「納涼茂山狂言祭2005」でお会いした茂山千之丞師にサインをいただきました~。やった、やった!

 この公演は、一般から演目・演者のリクエストを募る「リクエスト狂言」なのですが、私が応募した茂山千之丞師『月見座頭』が、なんと採用されてしまったのです。採用特典はペア招待券&「楽屋訪問」!

 15分ほどでしたけれど、千之丞師から直接『月見座頭』に対する思いをお聞かせいただいて、とても価値ある時間となりました。

★狂言『月見座頭』
 旧暦八月十五夜の名月の夜、一人の座頭が月を見ることはできなくとも虫の音を楽しもうと言って、野辺に出かけます。すると月見に来た男と出会い、二人は歌を詠みあい、意気投合して酒宴となります。謡い舞って良い気分のまま別れますが、男は途中で立ち戻り、座頭に喧嘩をふっかけ引き倒してしまいます。座頭はさっきの人と違って情のない人もいるものだと言って、独り野辺で泣くのでした。

 千之丞師ご自身は理屈っぽい性格なので、こういう狂言は得意な方ではない、と仰りながらも、ジキルとハイドとまではいかないにしろ、人間誰もが持っている相反する二面性、善悪の両面をえぐり出した狂言なんだろう、座頭がシテとなっているけれど、実はアドの男の、二面性を写し出すための引き出し役に過ぎず、『月見座頭』で本当に揶揄されているのはアドの男なのだろうと。

 今回、千之丞師は私のリクエストによってシテですが、本当はアドが難しいとも仰っていました。もし千之丞師がアドを演じるなら、酒に酔った勢いで悪戯心が出た感じに演じたいそうで、台本には突き飛ばした後に「良い形(なり)の。良い形の」と得意げに言った後、「身供は知らぬぞ、知らぬぞ…」と幕に駆け込むのらしいですが、「良いなりの。良いなりの」は抜かして演じるかも、と仰っていました。

 台本通りに演じないという話から発展して、能や狂言というのは、繰り返し繰り返し上演されていく間に変化していくものだとも仰っていました。室町時代に演じられていた姿はどんなものだったのかは分からない。映像が残っている最も古いものは、祖父(二世茂山千作)のころのもの。だが、見ると今とは随分違う。師に教えられた通りに演じているのですが、自然と変わって行くのだそうです。

 それでも能や狂言、また歌舞伎といった伝統藝能は基本の「型」が成立している。例えば全員子どもが演じたとしても、それなりに面白い。それは、ここで三歩歩いてこう発声して…といった「型」があるからで、これが現代劇なら、子どもでは演じきれないものというのが分かるはずだ…なんて話を伺いました。

 少しこちら側が緊張してしまって、「千之丞師の講義を拝聴する」といった感じになってしまいましたが、楽しい時間でした。最後の時間に、用意して来た色紙にサインをおねだりさせていただいたのが、一番上の写真です。

 言葉は「藝」。千之丞師ほどの藝達者だからこそ、サマになるお言葉ですね(^^) 今日は本当に幸福な体験ができました。快くサインに応じてくださった茂山千之丞師、そして主催の(株)セクターエイティエイトに感謝です。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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10件のフィードバック

  1. peacemam より:

    おめでとうございます!よかったですね~。
    それにしてもリクエストが採用されるとは!羨ましい!
    東次郎さんも「クセのある役の方が面白くていい」と
    仰ってますよ。「武悪」を拝見したときに、公演後の
    お話で、主人をやることが多いのですが、やりたいのは
    太郎冠者だと仰ってましたね。

  2. 好みの演者で、好みの曲を、しかも正面席で見ることができる
    なんて贅沢な話です。幸運ですが、本当に良かったです。
    『武悪』はまた拝見したことがないのです…。
    これこそ、良い演者でぜひ見たい狂言だな、と思っています。

  3. 紅緒 より:

    千之丞師のお話を直々にお伺いできたのですか♪
    羨ましいです~(^^)サインに「藝」と書くところが
    流石ですね。カッコイイ!額に入れて飾ってしまい
    たくなるような素晴らしい色紙です。

  4. みゅみゆ より:

    すごーい!!(^o^)
    当選&採用&楽屋訪問&サインなんて、素晴らしいですね!!
    来月、近くのホールに妖怪狂言がやってきます。
    千之丞さんの解説もあります。
    『豆腐小僧』楽しみです。
    茂山狂言が初めての母を連れていく予定です。

  5. 挿頭花 より:

    おめでとうございます!
    良かったですね!!
    観たい曲&演者のリクエストて、考えるのも楽しそうですね。
    う~ん、狂言見たいよ~。
    (能閑期のためか、最近遠ざかっていて。)

  6. しろ より:

    サインGETおめでとうございます。
    いいお話が聞けたんですね~(*^^*)
    月見座頭、私も一度見てみたいです~

  7. おめでとうございます。楽屋訪問なんて一般ピープルには考えられないので・・・
    宝物ですね~♪

  8. ★紅緒さん
    前々から著書や実際の藝を見てファンではあったのですが、
    まさか自分が直々にお話できる機会を得るとは思っても
    みませんでした。
    PCの斜め上に飾って、チラチラ見ては悦に入ってます(笑)
    ★みゆみゆさん
    特典満載で、こんなことがあって、私、
    大丈夫なんだろうか、とついつい思ってしまいました(^^;)
    東京公演では新作の『豆腐小僧』がリクエストされたようで。
    私も機会があれば、是非見てみたいものです。
    ★挿頭花さん
    私は茂山千五郎家に関しては好悪が激しいので(笑)
    初めから千之丞師か千三郎師でずーっとリクエストしていました。
    (千作師も当然好きですが、あの方は別格なので(笑))
    ★しろさん
    前にリクエスト採用されたことのある
    しろさんのレポートは何度も読ませていただいて
    私はどういうこと質問しようかな~と
    いろいろ考えてました(^^)
    結局、『月見座頭』トークに終始しましたが。
    『月見座頭』、渋い曲ですから「笑い」を求めて
    狂言を見ていると戸惑ってしまうかもしれません。
    でも、味わいのある秋の佳曲ですので、ぜひ。
    ★あいらぶけろちゃんさん
    初めていただいた役者のサインで、しかも
    憧れの方ですもの、宝物にします~。

  9. むらさき より:

         はじめまして~
    楽屋訪問サインets とってもうらやましいです。

  10. むらさきさん、はじめまして。
    私も楽屋訪問だなんて、びっくりです。
    この幸運のツケがいつ来るか、と心配で(^^;)