ちゃっと!狂言のために通ったピッコロシアターのロビーに、農村舞台についての展示があったので、その文章を転載。
「農村舞台とは」
娯楽の乏しかった農山漁村では、氏神の祭りは一年中でもっとも楽しい一時であった。
江戸時代から現代にいたるまで、村祭りのときには村芝居が催されてきた。特に江戸中期から明治末期までは、村人たちは自らの手で歌舞伎や人形芝居を演じて楽しんだ。その村芝居の場が農村舞台である。
だから、農村舞台は神社境内にある場合が多い。それも舞台独自の建物としてより他の建物を舞台に兼用したり、併用したり、転用したりしている。それでも芝居に必要な機構は備えているのである。
「兵庫県下の分布」
兵庫県下の舞台数は全国でも上位である。その芸能別棟数は、能舞台46棟、歌舞伎舞台172棟、人形舞台4棟であり、分布はおおむね群をなしている。なかでも歌舞伎舞台は、質量ともに全国屈指であり、農村における民衆文化の豊かさを物語る資料として注目されている。旧国別の分布は、能舞台では摂津5棟、丹波1棟、播磨40棟、歌舞伎舞台では摂津22棟、丹波11棟、播磨47棟、但馬92棟、人形舞台は摂津2棟、丹波・淡路に1棟ずつである。
歌舞伎舞台に関しては「セリ」や全体がぐるっと回転するような仕掛けがあることを示した写真なども展示されていて、かなり本格的なもののようです。また、能舞台が兵庫県下に46棟もあるということは、庶民の芸能としての能や狂言も伝わっていたということだと思って嬉しくなります。
演じたのは専業役者ではなくて、村人たちによる素人役者だったかもしれませんが、確か姫路の方には、五流ではない『翁』が伝わっているという話を聞いたような覚えもありますし、能や狂言は今の「能楽協会」に繋がる流れ以外にも、もっと広いものだったのだろうなぁ、と想像するのは楽しいですね。
農村芸能としての能舞台が兵庫県にそれほど残っているのは驚きました。
舞台だけでなく、独特な農村能が中部地方の近場で残っているのは、「能郷猿楽」として岐阜県本巣市のが有名ですね。
岐阜県に猿楽が残っているのですね~。
能という形のものは分かりませんが、「翁」でいえば、
兵庫県内にはいろいろ残っているようです。
能舞台の分布と関係あるのかもしれませんが、
旧播磨国が特に多いようです。
私の小学生時代の登校集合場所の神社には立派な
能舞台がありました。当時の私たちは、朝からその
舞台で鬼ごっこなどしておりました。残念なことに
その舞台は雨風に朽ち果て、取り壊されてしまいま
した。
播磨、丹波、但馬は農村歌舞伎がさかんだったと
ころ。加西市の某在所は、住人の半数が石屋で半数
が歌舞伎役者だった、との伝承を有しているくらい
です。
加東郡社町の上鴨川住吉神社の神事舞は、能楽の
源流を考証する意味でも興味深いものだそうです。
養父市関宮の葛畑では、戦後断絶していた農村歌
舞伎が復興され、地域活性化のアイテムとなってい
るようです。
丹波の三番叟のなかには、明らかに人形の所作を
真似た所作がある(ビデオを見ましたが、糸を緩め
られた人形のように、がっくり膝をついたりします)
ため、猿楽→人形による三番叟→在地の三番叟との
伝播が確認できる例もあるそうです。
藤兵衛さん、コメントありがとうございます。
いろいろお詳しいのですね。
また、県内の伝統芸能にも触れる機会を持ちたいものです。