日本の工芸に関する講義を受けていたら、「七宝」というものを教えていただきました。七宝とは、仏教での浄土を形作る7つの宝のこと。「七珍」ということもあるそうです。経典によって微妙に違いますが、
『無量寿経』:金、銀、瑠璃、玻璃、硨磲、瑪瑙、珊瑚
『法華経』:金、銀、瑠璃、玻璃、硨磲、真珠、瑰
の7つとなっています。瑠璃と玻璃はガラスの別名でもありますが、この場合は瑠璃はラピスラズリ、玻璃は水晶のこと。ついでに硨磲はシャコガイの殻のことで、仏教では七宝の一つに数えられたほか、大きいために(2メートルになるものもあるそうです)、ヨーロッパでは殻を教会の聖盤として用いた場合もあったそうです。
で、七宝の品々の名前、これ、能の謡を稽古したことのある方には、何か聞き覚えがありませんか? そう、『鶴亀』(喜多流『月宮殿』)の謡にあるんです! 観世流の場合、初心謡本上巻の最初に載っているので、ほぼ最初に稽古を受ける曲だと思います。『鶴亀』の皇帝(中国唐の玄宗皇帝とされる)の宮殿を描写して、徳を讃える部分です。
地「庭の砂は金銀の。庭の砂は金銀の。珠を連ねて敷妙の。五百重の錦や瑠璃の枢。硨磲の行桁。瑪瑙の階。池の汀の鶴亀は。蓬莱山も外ならず。君の恵みぞ。ありがたき。君の恵みぞありがたき
皇帝の宮殿がただ豪華なことを謡っているのではなくて、七宝の名前を込めることで仏の浄土を現世に作ったという意味合いもあったのでしょうね。蓬莱山に例えていますが、蓬莱山は仙境。仙境も浄土も似たようなものだったんでしょうか(^^;)
私の知る能楽トリビアがまた増えました(笑)。ちなみに「七宝荘厳」といって、七宝を使って仏像などを飾る手法があるそうですので、お寺で仏像を見る時には興味も持って見てみたいな、と思います。
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