展示「ワキ方福王流の謡と歴史―江崎家旧蔵資料を中心に―」に行ってきました

神戸女子大学江崎家旧蔵展

江崎家旧蔵資料の展示に大興奮

神戸女子大学古典芸能研究センター展示室にて現在開催中の、「ワキ方福王流の謡と歴史―江崎家旧蔵資料を中心に―」の展示

古典芸能研究センターが残念ながら土日休みなので、勤め人としてはなかなか参れなかったのですが、先日、なんとか平日の午前中だけ予定が空いたので、思い切って見に行ってきました。

もう、江崎家の歴史を調査中の身としては興奮の嵐でした! そして、私、随分と資料を見落としているなあと反省も数多。それでも参考文献として、私が書かせていただいた十二世江崎欽次朗襲名披露能のパンフレットの文章と、それを増補した能楽フォーラムでの私の発表資料も掲げてあり、嬉しく感じました。

私の発表では、歴代の概要を追うのに精一杯になっていたのに対して、展示ではさすがに資料というモノに拠っていることもあって、「この資料は、この時にまとめられたのではないか」といった注釈がついており、なるほど!と頷いてばかりでした。

そして、私がほとんど避けてしまっていた謡本類については、江崎家でのみ存在が確認できる《老楽》のほか、《宗忠》《桃青》《黒谷》《書写鏡》など稀曲を中心に掲げられていました。そして、これもわざわざ欽次朗先生に見せていただいた、綺麗な色替りの領紙に書かれた謡は、福王流二世宗家・盛義の手によるものだとのご指摘。…完全に見逃しで情けなや(汗)

これらの資料が江崎家に置いてあったころに、少し見せていただいていた九世欽次朗の、昭和17年の中国・満州演能旅行の資料(健康診断の結果の紙や切符など)も、九世がそれだけ大切な思い出としていたのではないか、と指摘があったのは、「確かにその通り!」とガラス越しに、首を縦に振りっぱなしでした。

面白かったのは、その時に九世が使っていたらしい名刺。「江崎金次郎」のお名前の隣に、カタカナでの中国語の発音とハングルが手書きで書き加えられていて、中国人や朝鮮人との交流を見越して書き込んだものだったらしいこと。

そして(禿頭)と書いて、そこにもハングルと中国語発音。最初のつかみのネタだったのでしょう。今の江崎正左衛門先生(十一世)も欽次朗先生(十二世)も飾らないお人柄ですが、それは九世からしっかりと受け継がれているのだろうか、と妙なところで、家、継ぐを以って家と成すの世阿弥の言葉を思い出しました。

とにかく、もう!嬉しくて!興奮のしっぱなしの展示でした。

直接ではないものの、間接的に関わりがあるものとして、かなりひいき目ではありますが、充実の展示ですので、ご興味のある方は是非とも。展示はあと2週間、31日(木)まで行われています。

ワキ方福王流の謡と歴史―江崎家旧蔵資料を中心に―

2016年2月15日(月)〜3月31日(木)10時~17時。[土・日・祝日休室]
会場:神戸女子大学古典芸能研究センター展示室(神戸市中央区中山手通2丁目23-1 神戸女子大学教育センター2階)
入場料:無料

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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