香雪美術館に行ってきました

弓弦羽神社の桜(1)

 神戸の御影にある香雪美術館に「観世宗家 幽玄の美」展を見に行ってきました。

 その前に。写真は香雪美術館隣の、弓弦羽神社の桜です。このところのポカポカ陽気に誘われて一気に桜が満開でした。桜というのは不思議な木です。一年のうち、この時期だけに集中的に目立って咲く。だから存在感がありますし、見る方も他の花とは少し違った感想を受けます。とりあえず、話題に触れずにはいられない。

 香雪美術館は朝日新聞社の創業者・村山龍平(号・香雪)のコレクションを元に美術館とされたもので、住宅地の中にあるこじんまりとした美術館でした。しかし、神社と隣り合う立地など、なんだか周囲が上品。神戸市でも繁華街の三宮などからは少し離れているので、気持ちよい土地です。


弓弦羽神社の桜(2)

 1階には能舞台の作り物のミニチュア。『熊野』の牛車、『小鍛冶』の台から始まっていろいろなものが。『井筒』の井戸の高い低いにも理由があることなどが分かって面白かったです。

 2階は『風姿家伝』第六花修や『花習内抜書』、『難波梅』の能本といった世阿弥自筆の古文書類がありました。実は伝書類を見るのは2度目、『難波梅』の能本は3度目です。能面や舞台姿の写真と一緒に、去年、京都相国寺境内の承天閣美術館で催されていた「足利義満公600年忌記念 義満と世阿弥の世界」展と同じものなんです(^^;) 古文書類も写真も2度目・3度目だから飽きる、というわけではないけれど、ちょっと物足りなさを感じたのは事実です。

 ちなみに「花修」は、正月にあった番組「坂東玉三郎の古典芸能図鑑」で、観世清和師が見せていたものです。「能の本を作ること。これこの道の命なり」というのは、最初に書かれているのですね。最初に書くほど、世阿弥は強調したかったんですね。

 ほかに能面、能装束、中啓、鬘帯、腰帯など。復曲能『松浦佐用姫』『箱崎』関係の小物と舞台写真も。やっぱり一番良かったのは能面。特に「慈童」の微笑みにはなんだか、引き込まれるものがありました。これが木なのか、と思わず手に取りたくなるような、魅了される無邪気なようでいて怪しい笑み。胸キュンです(笑)

 装束はいくつか元々のものと「写し」として最近新しく作ったものを並べて展示されていましたが、新しいものの明るく鮮やかなこと! 古いほうには、腰のあたりを締め続けるからか、痛みなどが見えましたが、落ち着いた色合いで、これが「使われ続ける」ということなのでしょうね。

 観世清和師と息子さんの個人的宣伝にはちょっと苦笑(^^;) 蛇足だなぁ。でも、観世清和師のプロフィールの隣に掲げてあった観世家家系図を楽しめました。こんなところが私ってマニアだと思います(笑) 養子関係のこともきちんと書かれていて「万世一系」的に正当性を主張しているものではなかったし、銕之丞家・喜之家・片山家のことも書かれていて、なるほどと。

 展示の量から言って料金は割高だとは思いますが、まあ、面白い展示でした。

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「観世宗家幽玄の美」(korimaさんblog)

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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1件の返信

  1. 美しき日本

     今朝はNYから帰国していた友人たちと原宿で呑み朝を迎えました。

    NYで滞在している彼らの口から出ることばに「日本人として」と多く耳にします。

    NYで生活しているなかで日本人とは何をもって日本人とするのかを考えること。

    アイデンティティの確立