花の乱

B00005IX07 花の乱 総集編
アミューズソフトエンタテインメント 2001-05-25
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 昨日に引き続き、借りてきたビデオ話。元々、冷やかしに行っただけのつもりだったレンタルビデオ店で、会員になって借りたきっかけは、この『花の乱』総集編があったからでした。

 『花の乱』は1994年度のNHK大河ドラマで、ビデオリサーチのHPによると歴代最低の視聴率らしいですけれど(汗)、私は大好きな作品なんです。室町幕府八代将軍足利義政の正室・日野富子を主人公にしたものですが、富子の出生が、母親が酒呑童子に凌辱されて産んだ子で、川に流されて捨てられたのを禅僧・一休宗純に椿の庄で養育され、後に生まれた本来の”富子”が失明するに至って身代わりとなったという設定になっていたりします。

 また、富子と義政が互いに五条橋で会う夢を見て惹かれ合うように陰陽師を使って呪術を掛ける話があったり、今参局(義政の乳母)と日野富子の間で後妻打ちが行われて、その際に権力志向の強い日野勝光(富子の義理の兄)の放ったスパイによって、今参局が行っていた富子の安産祈願の祭壇に、呪詛に使う黒い矢が据えられたりと、中世の持つ呪術的な側面を浮き上がらせた面がモロ好みなんですよね。

 主人公である富子と義政よりも、応仁の乱の東西両軍の総大将である細川勝元と山名宗全が印象的ですけれど(^^;) 陰謀家だったのに、終盤では澄んでいく細川勝元は特に好きでした。死ぬ直前に、龍安寺の石庭で語るシーンが印象的で。その細川勝元役が実は野村萬斎師だったことに気付いたのは『萬斎でござる』を読んでからなんですけれど(笑) 野村萬斎師といえば、みなさん『あぐり』を挙げますけれど、私にとっては『花の乱』です。

 というわけで見た総集編ですが、やっぱり私好み。残念ながら龍安寺のシーンは収録されてませんでしたけれど。呪術っぽい話と陰謀が上手く組み合わさっているのは凄いな、と思いました。まあ、ちょっと観念的な部分が多いのと、後半、山名宗全が切腹、細川勝元が暗殺、息子の義尚が戦死、義政も病死、幼い頃の故郷である椿の庄も壊滅…とひたすら暗くなっていくのは少々辛いですけれどね。

 メインではありませんが、ちょっとした場に舞や謡(歌)が登場したりするのが好みです。最初、いきなり鹿苑寺(金閣)での能『大江山』が登場するところから、私にはたまりませんし。娘時代の日野富子を演じる松たか子さんが、足利義政への輿入れの宴で、早舞を舞っている細川勝元(野村萬斎師)から扇を取り上げて舞う姿はさすが。萬斎師の舞姿ももう少し観たかったですけれど…(笑) あと、本来の”富子”である森侍者(檀ふみさん)の打つ小鼓に合わせて、足利義政(市川團十郎さん)が軽く舞う場面も良いです。

 ちなみに「能楽考証」が表章さんで、「能楽指導」が観世清和師だったようです。

■主な役名と配役
椿→日野富子:村嶋亜矢香→松たか子→三田佳子
足利義政:西谷卓統→(七代目)市川新之助→(十二代目)市川團十郎
今参局:かたせ梨乃
細川勝元:(二世)野村萬斎
山名宗全:萬屋錦之介
日野勝光:草刈正雄
日野富子→森侍者:大野麻耶→檀ふみ
伊吹三郎:黒田勇樹→役所広司
酒呑童子:(九代目)松本幸四郎
※(七代目)市川新之助=現・(十一代目)市川海老蔵

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『萬斎でござる』-『花の乱』

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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7件のフィードバック

  1. みゆみゆ より:

    私の使っているレンタル店・・・来月レンタルコーナー閉鎖(T−T)せっかく会費をこの前更新したのに、何よぉ!!と怒りと悲しみが・・・(^^;
    大河は図書館にビデオがあるので、たまに借ります。
    「花の乱」は放送当時は見ていませんでした・・・。
    成田屋親子も出ているし、萬斎さんも出ているから見たいです。
    そして、昨日、成田屋の地元公演を見てきました。

  2. mushi8 より:

    萬屋錦之助vs野村萬斎
    格好良かったですよねー!
    それに、今にして見ると、全体的に凄い豪華キャストです。
    わたしも『花の乱』のあの雰囲気が大好きで、いつか再放送しないかなぁと思っているのですが・・・。
    視聴率が伸びなかったのは、相関関係や戦況が分かり辛かったからじゃないでしょうか。戦の途中で東軍と西軍が擁立している将軍候補が入れ替わったりしますし。
    そんな無意味な戦乱がだらだら長引く中で、死に場所を失ったような、宗全や勝元の描き方は悲劇的だったなぁ、と柏木さんの文章を拝読しながら、思い出しておりました。
    >中世の持つ呪術的な側面を浮き上がらせた面
    今参局の冤罪事件などは、ほんとにあの時代ならではですよね。

  3. ★みゆみゆさん
    来月レンタルコーナー閉鎖ですか~。
    せめて更新する前に教えて欲しいものですね…。
    図書館に大河のビデオがあるって良いな~と思いました。
    私、大河ドラマは『信長』から『毛利元就』ぐらいが
    一番見ていたころでした。でも、次に総集編を借りるなら、
    中村勘三郎(当時は勘九郎)さんが主演だった、『元禄繚乱』
    にしようかと思っています。
    ★mushi8さん
    まあ、応仁の乱の時代って、それほどメジャーではないですよね。
    やはり戦国時代が人気というか。
    日野富子…といっても、一般では今ひとつ知名度が足りないかもしれません。
    初めは
    足利義政-足利義視-細川勝元vs山名宗全-足利義尚-日野富子
    ですが、これが途中で義視と義尚が入れ替わり、
    そして将軍家の家督が義尚に決定した後も、争いは終わらず、
    一気に虚無的なムードが広がって行く中に、
    宗全や勝元が死に、義尚が死に、義政も死に、最後は…
    無常の時代ですよね。

  4. こも より:

    私も花の乱からの萬斎さんのファンです。
    放送当時は誰からも認められなかったのですごくすごく悲しくなりました。
    でも、徐々に彼のよさがみなさんに認められてすごくうれしいのです!!
    いつか花の乱をもう一度やって欲しいと思ってます!!

  5. ★こもさん
    コメントありがとうございます~。
    私は野村萬斎師は、上でも書いていますが、
    後になって「ああ、『花の乱』の勝元って萬斎師だったんだ!」と
    気付いたクチなのです。
    『萬斎でござる』という本の解説でも、
    狂言評論家の方が『花の乱』のことを褒めてらっしゃいましたね。
    もう一度放映されても良いと思うんですけれど…
    いかんせん、大河ドラマでは歴代最低の視聴率らしいです(苦笑)

  6. こも より:

    プチ情報さんですが、(知っているかも)
    花の乱で勝元が鎧をつけて子供を抱えているシーンがあるのですがその子供は萬斎さんの甥ですよ。
    私は、萬斎さんの事が大ー好きであぐりも陰陽師もみました。
    実家のある高知には狂言の公演でもなんかいも来てたのでそれも総てみにいきました。(一度楽屋まで行ってサインをもらったぐらいです。)
    萬斎さんの魅力それはなんともいえないあの美しさだと私はおもうのです。
    なにをやっても似合うのでほんとに大好きです。
    ちなみによく萬斎さんのテレビをNHKがやってますよ!!
    萬斎さんの子供もかわいいです!!

  7. ★こもさん
    勝元が鎧をつけて子供を抱える? 勝元の息子役なんでしょうか。
    そんなところに野村萬斎師の甥っ子さんが登場されているんですね~。
    『あぐり』はあまり見ていませんが『陰陽師』は私も見ました。
    そのころには能や狂言も見るようになっていましたが。
    NHKの『にほんごであそぼ』は、2~3回拝見したことがあります。
    去年末に『鐘の音』をしてらっしゃるのを見た時には、
    目の下の隈が目だって…疲れてらっしゃるのではないか、と
    心配になってしまいましたが。
    狂言では萬斎師もいいですが、お父上の野村万作師が
    今年の正月につとめられた三番叟
    (能楽『翁』の中で狂言方が勤める役)が忘れられません。
    万作師の職人的な芸をまた見てみたいものです。