茂山千五郎家の宝

 昨日、22時からTBS系のテレビ局で放送された「世界バリバリ☆バリュー」に茂山千五郎家が登場するということなので見ました。もっとも実際に見たのは録画したビデオですが。普段からテレビを見る習慣がないので、観たい番組があるときは必ず録画なのです(^^;)
 私は「世界バリバリ☆バリュー」という番組は初めて見ますが、どうやら人を訪ねて「お宝」の値段をクイズにする、というもののようです。今回は「伝統を受け継ぐ一族」ということで、宇治の通円茶屋と平家の子孫だという旅館、そして茂山千五郎家が登場でした。一応書いておくと、通円茶屋は狂言『通円』のネタにもなってます


 先の2つの家では、なんだか由緒のあやしそうな「お宝」も出て来てました(ビデオなので、怪しそうな部分は早送りしてしまいました(笑))が、千五郎家は実際に使われている、もしくはかつて使われていた装束や狂言面・台本などを「お宝」として出しており、由緒は疑いようがありませんでした。
 もっとも、600年前の黒色尉面はともかく、江戸初期の縫箔があんなに綺麗に残ってるのかはちょっと疑問でしたけどね。(番組の詳しい経緯は、波華さんのblog「笙唱和坊」に詳しいですので、参照ください)
 そういった数々の家宝がある中にあって、千五郎家最高のお宝は「人間国宝」の茂山千作師なんだそうで(笑) そして、その千作師にとっての今の「お宝」は産まれたばかりの茂山正邦師の双子の息子さん! 曾孫ですね。家の芸である狂言を演じ、そして伝えていく人間が「宝」というのはなるほどなぁ。
 千作師・千五郎師・正邦師、そしてその息子さんの千五郎家直系の四代で『靱猿』を演じるのが千作師の今の夢なんだとか。予定は満3歳になる年。楽しみですね。
 茂山千五郎家が唱える「お豆腐狂言」の元を作った十世茂山千五郎(二世千作)の写真も登場していましたが、それがフロックコートにシルクハット姿だったのはびっくり。古いものにとらわれない性格をよく示したものなんでしょうねぇ…。
 ちなみに出題された「お宝」は、今は家宝並に扱われている『釣狐』の狐面。元は大蔵宗家にあったものですが、昭和22年(1947)に古道具屋に流れていたのを茂山千之丞師が買い取ったもの。当時でいくらで手に入れたのか? 答えは2,000円。千之丞師の著書『狂言役者-ひねくれ半代記』に載ってました(笑)
 昭和22年といえば大戦直後の混乱期。千之丞師も当時24歳ですが、その少し前に会社に勤めてた時の月給の2倍だったそうな…。月給2か月分で狐の狂言面というのは考え方によっては安いともいえるでしょうが、あちこちから借金してようやく手に入れたものということでした。
 ちなみに、千之丞師が舞台一本で生きることを決めたきっかけになった面なんだそうです。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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9件のフィードバック

  1. peacemam より:

    あ~残念。知っていたら観たのに・・・って私もゆげひさんと同じで「録画したのに」ですが(笑)。私は茂山さんのところはよくわからないのですが「千作師・千五郎師・正邦師」が直系なんですか。正邦さんは一度だけ拝見したことがありますが好きですよ。いつだか忘れてしまいましたが感想のところに「正邦さんはかっちりしていていい」というようなことを書いた記憶があります。再放送しないかな~。

  2. 茂山千五郎家は、何せ人数が多いですから(笑)
    茂山姓だけで11人。家の弟子たちもわりと広く活動されてますし。
    千作師→千五郎師→正邦師が千五郎家の直系です。
    正邦師は、後継ぎだからか千五郎家の中でも固めの演技をされる
    ことが多いですね~。でも、私は千三郎師(千作師の三男)が
    千作師・千之丞師兄弟を除いた中堅・若手では最も好みの役者なんですが(笑)
    声が嫌だ、という人もいますけれど、それを十分に覆すだけの芸力はお持ちかと。
    千五郎家の系図と、それぞれの役者については波華さんが作られた
    http://www.geocities.jp/pha_ntasmagoria/blue_moon/dengei/kyogen-shigeyama.html
    が一番分かりやすいかと思います。良ければどうぞ。

  3. peacemam より:

    いや~、可愛い家系図ですね。私も山本さんちの家系図を可愛く作ろうかしら。お豆腐狂言のHPというのがあるのですね、ちょっと覗いてくることにします。

  4. 亜綺 より:

    ずいぶん前ですが、同じ番組で、大鼓の大倉家の方も紹介されていましたよ。名前はちょっと忘れてしまったのですが……。

  5. ★peacemanさん
    山本東次郎家の家系図を作られるんでしたら是非!
    東次郎家の方々は皆さん名前が「則○」なので、全然
    覚えられないのです(苦笑) 実際に拝見したのが1回だけ
    (映像で2回)だから、という回数の問題もあるんでしょうけど。
    今日、地元の図書館にあった先代の山本東次郎『木六駄』の
    映像を見ました。また、自分なりに整理してblogに書きたいと思います。
    ★亜綺さん
    初めまして。コメントありがとうございます。
    大倉家というのは大倉正之助師のことですね。
    http://mbs.jp/baribari/069/page2.html
    今は大倉流の小鼓宗家は弟の大倉源次郎師が継がれ、
    大鼓の方も源次郎師が預かっていらっしゃいますけれど。

  6. 波華 より:

    ゆげひさん、こんばんは。
    遅ればせながらトラバありがとうございます!
    作った本人も忘れかけていた家系図を引用してくださってありがとうございます。お役に立てて何よりです。可愛いのはお友達が作ってくれたアイコンのおかげです。万作ファミリー、善竹ファミリーも作ってくれています。
    ところで源次郎さんと正之助さんって兄弟だったのですね!初めて知りました…。大蔵家って大鼓も小鼓も継いでるんですね。正之助さんの波乱万丈の人生、オドロキです。

  7. 狂言方の各家の可愛いアイコン、素敵です。特徴もよくとらえられていますし。
    大倉源次郎師はお名前のとおり、「次郎」なんですね(^^)
    大蔵と大倉。元は同じ金春座に属した「大蔵大夫」から名づけられた
    流派名で、小鼓/大鼓の流儀も古くは「大蔵」と書いたそうなんですが、
    今は「大倉」と書いています。
    私は大倉流大鼓のお稽古を受けているのですが、稽古時には師匠が
    大倉流小鼓の手を打ってくださいます。それで感じるのは、お互い
    上手く合うような手になっている、ということ。幸流という小鼓の
    流派と併せることになったときには、随分勝手が違って慌てました(^^;)

  8. みゆみゆ より:

    こんにちはー。
    私もぶっ倒れる前の日のこの番組、見てました(笑)
    面よりも宝ものの千作さん・・・和みました(^^)
    正邦さんとこの双子ちゃんもかわいい!!!
    私も正之助さんが出た回見ました。
    (ちょっとあの出で立ち&現れ方にはびびった。正直ちょっとひいた・・・・。)
    問題は大鼓の胴の値段でしたね。
    小鼓と同じくらいだったので、私は当たりましたが・・。。
    私は再現VTRで先代家元長十郎先生の張り扇飛ばしが出てきた時に「(先生がおっしゃっていたことは)これか!!!」と思いました(笑)

  9. >>面よりも宝ものの千作さん・・・和みました(^^)
    確かに! 舞台でも同じですけれど、千作師はその存在だけで
    ほんわかした雰囲気を持ってらっしゃいますよね。
    大倉正之助師の実際の舞台は拝見したことはないですが…、
    サイトなどで姿を見ると、ちょっとびっくりしますよね(^^;)
    故・大倉長十郎師の「張り扇飛ばし」はよく聞きますね。
    それが放送されていたとは…惜しいものを見逃しました(笑)