アツい!囃子のBEAT!!

アツい!囃子のBEAT!!

九州へアツい!能楽囃子のライブへ

さて気が付けば8月も最終日ですが、この日記の内容は11日のことです。前にも少し書きましたが、8月11日から12日にかけて1泊で福岡に行ってきました。きっかけは、時々このブログに書き込んで下さる九州のもっこすさんから来たメールでした。

ご存知かと思いますが、今度8月11日に白坂保行先生がワークショップをなさいます。かなりアツいワークショップになりそうです。ゆげひさんもよかったらいらっしゃいませんか?

11日は大阪薪能で《翁》を見るつもりで休みの希望を出していたのですが、上司から「もうめんどうやから、お前は11・12で連休や」と言われ、これは福岡に行けとの天啓か!?(大袈裟)と、大阪薪能のチケットは12日に使うことにして、早速新幹線のチケットとホテルの予約をしたのでした。「トクトクきっぷ」で自由席より安い値段で指定席が買えたのがちょっと嬉しい(笑)

白坂保行先生は大鼓方高安流で、九州若手能楽師の中心的存在のお一人。初めて拝見したのは大阪の大槻能楽堂の舞台だったと思うのですが、その時以来、大好きな大鼓方のお一人です。2004年11月に九州の能楽サイト「柳の下」のWSに行って、少しお話する機会を得たのですが、その時「年に1~2回は大阪でも舞台を勤めます」と仰っていたので、それ以降せっせと通っています。

その保行先生が催されたWSというのが、一番上のチラシ。その名も「アツい!囃子のBEAT!!」です。チラシには大きな文字で五線譜に書けない音楽もあるとあり、小さな文字で3つの打楽器が刻むビート。笛の音は空気を切り、掛け声は魂を揺さぶる。能の囃子はエキサイティング 能楽殿がライブハウスに。この文句だけで、既にアツいですね!

福岡・住吉神社能楽殿へ

ただし会場の住吉神社能楽殿。ネットで検索しても、大阪府豊中市にある服部住吉神社の能楽殿(←大阪現存最古の能舞台…だったはず。数年前までは毎年服部薪能が催されてましたが、現在使用されず)が出てきたりして、今ひとつ位置が分かりません。結局、もっこすさんに博多駅まで迎えに着ていただきました。

住吉神社は博多駅から歩いて10分ぐらいでしょうか。もっこすさんとお目にかかって(私が一方的に)喋りまくっていたので、すぐ着いた印象です。ただ早く着き過ぎたために、まだ開場してません(^_^;) 入口隣にある住吉神社能楽殿の説明を読んだり、住吉神社の本殿を見に行ったりして、少し時間をつぶしました。

住吉神社能楽殿は1938年に建設されたもので、かつては福岡の演能の中心地だったそうですが、大濠公園能楽堂が建設されてからは使用されることはほぼなくなり、そのまま朽ちかけていたそうです。しかし、時々他ジャンルの公演が行われ、特にアコースティッック系のアーティストには「音のいい小屋」として口コミで広まっていたとか。

そして能舞台こそが本拠地である能楽師の方々も、1996年になってようやく福岡市能楽協議会を結成して、住吉神社能楽殿の保存活動を始められ、1999年には福岡市から文化財として指定されました。今回の「アツい!囃子のBEAT!!」は「能楽師と遊ぼう」という一連の企画の一つで、実は住吉神社能楽殿の保存・活用の一環でもあったんですね。

…さて開場時間になり、能楽殿に入りますが、よく見ると入口の扉に穴が空いてます。「朽ちかけてる」って文字通り!?

福岡・住吉神社能楽殿
中は上の写真のような雰囲気です。地謡座の裏に、貴賓席?なのか高欄付き桟敷があったりするのが印象的。客席は桟敷で、正面が4段、脇正面側が3段の段差がある、趣のある素敵な舞台でした。

ところで、文化財だけにこの能楽殿、空調がありません(笑) いくつか扇風機が置かれ、さらに夏の名物となっているらしい氷柱は置かれているんですが…それでも、めちゃくちゃ暑かったです。入口で配られたかちわり氷のサービスが本当に嬉しかったです。

福岡住吉神社能楽殿に置かれた氷柱

私は開場前から行ってたので、最前列に座れたのですが、その後ドンドンお客さんが入って来て、最終的にはこれでもかというぐらいの客入りになりました。途中で入りきれなくなったので、途中で会場整理が行われたほど。この人数のために、余計に蒸し暑くなったことは疑い様もありません。

しかしその暑さ以上に、魂から熱くなるような演奏でした! 多少暑かろうが、団扇をパタパタ扇いで空気を乱すのはもったいない。じっと集中して、味わわなければ大損。そんなことを自然と思う、そんな演奏。福岡まで来て良かったです~! まさにライブの良さを思いっきり堪能できました。

まさにアツい!囃子のBEAT!!

演奏されたのは最初に登場しての《早笛》。

そして出演者の紹介。笛は藤田流の竹市学師、今回名古屋からの来演です。関西での出演も多い方ですが、カッコいいんですよね~。小鼓は幸流の飯田清一師。太鼓は金春流の吉谷潔師。そして大鼓は当然、高安流の白坂保行師。それぞれの紹介の時に、軽くそれぞれの楽器を演奏なさったのが良い。演奏者ですもの、言葉で話すよりも、その楽器の音色こそが何よりの”紹介”だと思いますもの。

そして、簡単な解説があった後、《神楽》の演奏。序(始まり)は笛の独奏から始まって、小鼓・大皷・太鼓が順に入っていって、そして気づけば《神楽》特有の旋律へ入って行く。後で聞くと「スリ拍子」というそうです。最後の「直り」(笛の旋律の変化)以降は《絵馬》のように、急テンポ。これがまたカッコ良い。

次は《大小序之舞》~《太鼓入中之舞》~《盤渉早舞》~《男舞-瀧流之伝》~《早舞-クツロギ》~《神舞》~《急之舞》というメドレー。男舞と神舞の間が「この囃子、《融》で聞いた覚えがあるぞ」と思ったところ、クツロギだったそうで。能の中でも最もゆっくりな序之舞から、だんだんとテンポアップしてきて、最後は最速の急之舞まで繋げるというものです。

「大小」は大鼓と小鼓のことで、つまりは太鼓が入らない意味なので、太鼓は太鼓入中之舞から打ち出すんですが、男舞には太鼓が入らないので離脱して、またクツロギから入るというのが面白かったです。

最後は、お囃子コンサートでは定番の《乱序~獅子》。定番ですが、やっぱりカッコ良いですよね~。それぞれの囃子の気迫と気迫がぶつかり合いながら、一つの音楽を作って行く。まさにこれこそ能楽囃子。私、能や狂言では、あまり拍手はしないほうなんですが、これは拍手せずにはいられなかったです。

最後にはアンコールとして、創作能《博多山笠》より「櫛田入り」。博多の祇園山笠がどんな祭なのか、はっきりは知らないのですが、だーっと櫛田神社に走りこむんでしょうか? 私がこの囃子からそんな様子を想像したような、短いながら、勢いと気迫がビンビンに伝わってくる演奏でした。

ホント良かったです。短いながら良い夢を見に、福岡まで行った感じでした。終わったあと、もっこすさんや瀬山さんたちと一緒に次の日の朝までオールでしたし(笑) もっとも最近夜にめっきり弱い私は、早々にダウンしてしまったのですが。

でも、本当に楽しかったです。あまりに楽しかったので、大阪に帰ればまた仕事かぁ…と思い、福岡を去り難い気持ちにさせられました。実際、この後のお盆中連勤のために疲れ果て、更新ストップとなってしまったわけですけれど(^^;)

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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4件のフィードバック

  1. クリ~ムぺんぎん より:

    前列でとっても目立ってましたよ!
    演奏になると、ひとりまたひとりと扇ぐ手を止めて、しっかり聴いていただき嬉しかったです。
    そしてアツい拍手!感動しました。ありがとうございました。
    パンフの「左下ゾーン」の曲が聴いていただけるだけの「腕」になれるよう頑張ります!

  2. うわ~、クリ~ムぺんぎん様!
    コメントありがとうございます!
    本当に盛会でしたね。
    そして素敵な演奏ありがとうございました。
    私は…あの格好でしたから、目立つのも当然かも(^^;)
    本当に囃子を聴くために集まってきた客。
    そして、その期待以上の演奏を行ってくださった演奏者たち。
    それが組み合わさってできた熱い舞台だったと思います。
    本当に今思い出しても、良かったなぁとため息が(笑)
    「左下ゾーン」となると、序之舞・老女之舞etc.ですね。
    今回は激しい曲主体でしたから、
    そちらの曲もお聞きする機会を持てたらなぁ、と思います。

  3. 木白山 より:

    うわぁ~なんだか、良い夏休みだったようですね!
    九州ですか!夏はもの凄く暑そうですが良い所ですよね!
    それにしても、氷柱すごーい!!!
    能舞台に氷柱って,,,異空間がさらに異空間になっちゃいそうです。
    公演も素敵だったようですね!
    掲示板にあった、一人で能を観る会。
    私も関西在住でしたら、是非とも参加させて頂きたかったのです(^^;;
    う~ん。残念!

  4. ★木白山さん
    私の仕事、夏休みはないんですけどね(^^;)
    普通の二連休です。まあ、良い気分転換になりました。
    福岡は特に大阪との気候の違いは感じませんでしたが…
    もっと南の方だと違うかもしれませんね。
    氷柱は住吉神社能楽殿独特だと思います。
    しかし、空調なしの能楽殿というのはなかなか凄いですよ。
    今週金曜にも「能の四季&装束七変化」という題で
    催しが行われますが、たぶんまだ氷柱が活躍中だと思います(笑)
    「一人で観能する人の会」へ是非とも関西遠征を!(笑)