「能のことばを読んでみる会」《船弁慶》に向けて、室町時代に成立した軍記『義経記』の重なる部分を読んでみました。
能《船弁慶》と同様に、都落ちした義経一行が西へ向けて船出すると嵐を起きるのですが、弁慶が
此の雲の景気を見て候ふに、よも風雲にては候はじ
と、この雲は実は平家の怨霊であると見破り、弁慶は矢を構えて、
『天津児屋根の御苗裔、熊野の別当弁せうが子、西塔の武蔵坊弁慶』と名告つて、矢継早に散々に射たりければ、冬の空の夕日明りの事なれば、潮も輝きて、中差何処に落ち著くとは見えねども、死霊なりければ、掻き消す様に失せにけり
と見事に退散させます。
しかし、また続いて
又黒雲の車輪の様なる
と新たな黒雲が出てきます。こちらは、先の平家の怨霊を退けた弁慶も
是こそ風雲よ
という本物の嵐。こちらには弁慶の法力も通じず、結局、住吉の浜に打ち上げられるんですね。
平家の怨霊と嵐を区別して見ているのが新鮮で、面白く感じました。
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