東寺/爆睡

東寺境内

 22日は珍しく土曜日で休みでした。そこで京都の友人を誘って、前々から楽しみにしていた川本喜八郎監督の人形アニメーション映画『死者の書』を見に行きました。京都みなみ会館という東寺近くの映画館なんですが、えらく早く着いてしまったので、まだ行ったことがないしと東寺を見物に。

 暑いことで有名な夏の京都ですが、東寺の境内に入ると涼しい。やはりアスファルトやコンクリートだと暑いんですね。金堂や講堂といった建物の中はますます涼しい。まさに静謐な空気という感じです。こういった古い仏像群を見ていると、新しいものにはない不思議な魅力を感じますが、中でも興味が惹かれたのは講堂の立体曼荼羅の端を構成する、五大明王。

 中央に不動明王。それを四明王が囲んでいます。それを見ていて、どうしても思い浮かぶのは能『船弁慶』。平知盛の怨霊を退散させるため、弁慶が「数珠さらさらと押し揉んで。東方降三世。南方軍茶利夜叉。西方大威徳。北方金剛夜叉明王。中央大聖。不動明王の索にかけて。祈り」という部分。まさにその配置なんですよね。

 全てが平安時代前期に作られた国宝! まさに圧巻。特に不動明王は、周囲を囲む四明王が三面六臂だったりする(大威徳明王に至っては足まで4本ある)のに対して、シンプルに顔もひとつ、手も二本。武器は右手に剣を持っているだけなんですが、それが却って強そう。こんな明王たちが現れたら、いかに平知盛でも祈り伏せられてしまうだろうなぁ…と思ったのでした。

 仏像以外にも境内の様子もとても良かったです。仏像としての魅力とは別に気になったのは大日如来を囲む四如来のひとつ「宝生如来」(笑) 能楽シテ方の流派の名前って、観世(観世音菩薩)も金剛(金剛波羅密多菩薩など)も宝生も仏さんの名前なんですねぇ。喜多は後で成立した流派ですから別物で、元は「北」だったと聞きますが、でも金春という仏さんはいなさそう…。古くは「今春」とも書いたらしいので、そちらで探すべき?

 で、肝心の『死者の書』なんですが…暗くて気持ち良かったものですから、寝てしまって、ところどころしか見れませんでした(^^;) 睡眠不足? 絶対もう一度見に行きます!

 その日は夜に大槻能楽堂のろうそく能で観世銕之丞師の『半蔀』も見に行ったのですが、こちらも熟睡でした(苦笑) 序之舞以降は見ましたが、当代の観世銕之丞師って「何の曲を舞っても強い」というイメージだった(だから強い曲ばかり見てた)のが、かなり良い意味に裏切られました。運びの安定感はとても良いですし。それだけに残念…。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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8件のフィードバック

  1. kaki3 より:

    『死者の書』気になります・・・
    またレポートお願いします。
    で、ろうそく能、2日めも行きたかったのですが
    片山定期能の方に出掛けてました。
    観世銕之丞氏はお気に入りのおシテ。
    謡も良いですね。
    大阪城薪能が楽しみです。

  2. ★kaki3さん
    『死者の書』は京都では7/31までの公開ですが、
    神戸で7/29~8/7まで、大阪で8/19~9/8まで公開されます。
    詳しくは川本喜八郎さんのオフィシャルサイトを見てください。
    川本喜八郎さんの人形は凄いですよ~。
    能関係でいえば、大津皇子役の声を観世銕之丞師が勤められ、
    エンディングテーマが先代の観世銕之亟師の『当麻』だったりします。
    また、8/8~11まで、京都みなみ会館で
    「Respect 川本喜八郎」という名前で
    傑作選の上映がありますが、『火宅』『道成寺』といった
    能をネタにした作品も上映されます。
    観世銕之丞師は、初めて見た『大江山』の前シテの出の時は
    その謡と姿に非常な衝撃を受けたのですが、
    その後見た『渇水龍女』で、どうも「妙に強い」というか、
    「強い役はいいけれど」というイメージができて、それ以降、
    『望月』『正尊』『仲光』といった直面の強い曲を選んで
    見に行くようなところがありました。
    今回の『半蔀』はちょっとイメージが変わりました。
    けれど、ほとんど寝ていた人間のいうことですが…。

  3. kaki3 より:

    『死者の書』の大阪上映地ってすぐ近所!
    面白そうなので必ず観に行きます。
    「Respect 川本喜八郎」も興味があります。
    出来れば観に行きたいと思います。
    いいものを紹介してもらえて感謝です。

  4. ありよ より:

    あれ、寝ちゃいました?
    私は、めっちゃドキドキしながら観てました☆
    「半蔀」を観たのも観世銕之丞先生を意識して拝見したのは初めてでしたが。
    率直な言い方ですが、「夕顔、可愛い~!!」
    もう、隣に置いておきたいくらい。傍にいて~♪っていうf^_^;
    そりゃ、源氏が六条行くついでに「つまみ食い☆」(←七五三さんいわく)して、
    御息所に「テレポテーション殺人」(←七五三さん談)されるのも頷けるくらいf^_^;
    お笛の竹市さんにも、ノックダウンでした。
    あの竹市さんの笛が、柔らかくて、丸くて。もう、切ないくらいに可愛いかったです!!
    観世銕之丞先生をうまいかんじにひきたててはって。
    体調万全で臨んだ私は、うっとりしながら観てました☆
    …で、私の二つ隣。
    あのマンガ家の成田先生が座られてました。
    お声、掛けるチャンスは逃しましたが(-.-;)気付いて一人、ドキドキしてました~
    脇正面、4列目くらいのお話でした~♪

  5. ★kaki3さん
    是非とも川本喜八郎さんの映画、ご覧になって下さいね。
    大阪市立図書館にも、川本監督のビデオが収蔵されていたりします。
    そちらで『道成寺』は見たんですが、すごかったです。
    ★ありよさん
    こんにちは。大江定期能以来の書き込みですよね。
    舞台の良し悪しとは関係なく、ホント最近は
    能を見に行っても寝ているばかりです。
    TTR能プロジェクト公演の『望月』で寝なかった方が不思議。
    少し疲れていたり、寝不足だったりすると能は見れませんね。
    ホント体調を整えて見に行かなければ、と思います。
    茂山七五三師、そんなことを仰っているんですか!?
    確かに仰っている通りですが(笑) 某の院に現れて夕顔を
    殺してしまった霊は、六条御息所の生霊か、
    元々院に取り付いていた霊か良く分からないという説も
    面白いですけれどね。
    私、成田美名子さんとは少しお知り合いなので、
    能の前の休憩時間に少しだけお話できました。
    でも少しだけ話したところで、横から割り込むように
    入ってきた方に邪魔されてしまいましたけれどね。
    …そちらも激しく残念。

  6. ろた より:

    はじめまして。「半蔀」は余裕で起きてました。
    ちなみに私は観能の前にはコーヒーを飲むことにしています。カフェインが効くまでに30分くらいかかるので、直前に飲むとちょうど良いかと。
    それはそうと「Respect 川本喜八郎」のことをはじめて知りました。
    見にいくつもりです。
    確か「火宅」だったと思いますが、川本氏はその能を見たことはなくて、あらすじからイマジネーションを拡げた、という話を聞いて以来、すごく気になっていたんです。
    東寺はいいでしょう。京都の著名な寺院はたいてい見ていると思いますが、なんだかんだいって東寺が一番好きです。
    次回は弘法市(毎月21日)に訪ねてみてください。東寺のもう一つの面に出会えます。

  7. Respect 川本喜八郎

    川本喜八郎監督の人形劇映画がまとめて上映されるイベントがあります。
    戦中ものとコメディで名高い岡本喜八(本名:岡本喜八郎)監督と混同しがちですが、こちらは人形劇の人です。

    http://www.100meterfilms.com/kihachiro.html

    上記サイトで得た教養。

    “あや

  8. ★ろたさん
    初めまして。コメントありがとうございます。
    私も能を見る時に、今日はダメだなぁ、と思うときは
    コーヒーを飲んでいるのですが、それでもダメな時はダメです(笑)
    何よりもコンディションを整えて見なければいけないですね。
    『火宅』だったかは忘れましたけれど、能を見ずに
    イマジネーションを拡げた、という話は私も聞いたことがあります。
    「Respect 川本喜八郎」にはたぶん行けませんが、
    どうにかして『火宅』を見る機会は手に入れようと思います。
    弘法市は有名ですよね。行ったことはありませんけれど。
    機会があれば是非とも。