なんて素敵にジャパネスク(7)逆襲編

なんて素敵にジャパネスク(7)逆襲編
氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク(7)逆襲編』集英社、1999年

 帥の宮の攻撃を受け死にかけた瑠璃姫は、偶然にも煌姫に助けられ、高彬の別荘である鴛鴦殿に身を隠すことに。帥の宮に反撃するための策を練る瑠璃姫。だが、そこに高彬の妹・由良姫が、瑠璃姫の弟・融と一緒の牛車に乗って現れて…!?

「ここはどこ。あたしは瑠璃。死んでたまるか」

川に落とされた瑠璃姫の死に物狂いのセリフ。なんというか、瑠璃姫って主人公だけあって、頭も良いし機転も利くし、行動力もあるのですけど、いくら型破りとはいえ、平安時代の姫君。やっぱり経験が絶対的に少ないのでしょうね。それ経験でも実力でも上を行く帥の宮の前には無力。でもそんなところが、この『ジャパネスク』の面白さだと感じています。

ところで、融が話題の由良姫と駆け落ち?してくるところは、なんだか大好きです。「うん、やっぱり、頼られるっていうのは、いいもんだよね。ぼくもようやく、一人前になった自覚がでてきたというかさ。ガンバらなくちゃって気になっちゃって」 うんうん、分かる。融くんに激しく同意(笑) だって、同世代の可憐そうな女の子に助けてください、って頼られたら、思わず力出ますよ。男冥利に尽きます。

さらにその後、それまで散々「愚弟」と言われ続けて来た融が、なんだかしっかりしてきているし、なんだか私まで弟の成長を見守るような気持ちになったりして、ちょっと嬉しかったり。だけど、ハナからなんだか上手く行きそうな気がしない片思いばかりなのが、融くん、可哀想ではある(笑)

最後は「逆襲編」の名前通り、帥の宮との再びの対決。

ふいに帥の宮の目がカッと光り、凶暴な殺意をひめて見開かれた。
殺されるのではないかと身をすくめたとたん、カタンと妻戸が揺れる音がした。
ハッとしてふり返ると、高彬の半身が、かすかにあいた妻戸のむこうに見えた。
自分はここにいるぞと、あたしたち、とりわけ帥の宮に、わざと見せているような態度だった。

高彬は帝の信頼厚い右近少将。武官で、公達の中では一、二の使い手だってことを思い出す部分。…とても渋くてカッコいい!今までずっと瑠璃姫を叱っているか、蚊帳の外で心労のために寝込んでいるか、そんな出番ばかりなものだから、こういう出番がしっかりあって高彬ファンとしては嬉しいばかり。ロクに事情も知らされてなくて、いろいろ言いたいこと聞きたいことも多かっただろうし、直前まで非常に不機嫌だったというのに、それでも、いざとなれば無条件に通じ合えるなんて、この夫婦ステキです。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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6件のフィードバック

  1. こんにちは。
    これ、かなり気になってます。まだ連載中なんでしょうか?
    読みかけの連載漫画が増えるとめんどくさいし、大人はコミックスで纏め読みだよなぁ、とか言い聞かせつつ我慢しています。
    でも、マンガ喫茶で見つけたら手を出してしまうかも。。。

  2. 見たままに切り取る京都のsunaさん、こんにちは(^^)
    コメントありがとうございます。
    私が感想を書いている『なんて素敵にジャパネスク』は小説版です。
    これが原作で、次の8巻目で完結しております。作者は氷室冴子さん。
    それを山内直美さんという漫画家さんがとても上手に漫画化された
    漫画版『ジャパネスク』もございます。
    小説版の最初から、主人公の瑠璃姫が結婚するまでを描いていて、
    文庫版(全6巻)か愛蔵版(全7巻)が手に入りやすいと思います。
    ちなみに、今年から「人妻編」として続きが連載され始めましたけど、
    http://blog.livedoor.jp/yugehi/archives/12645788.html
    少し絵が変わっていて、好みが分かれるところです。

  3. より:

    初めまして、こんばんわです桐と申します。
    なんて素敵にジャパネスクで検索したところ、ここに飛んで参りました。
    ジャパネスクの記事を見て嬉しく思いまして、ここにカキコみをしてしまいました。大変失礼いたしました。
    ジャパネスクの大ファンなので、ここにも読んでおられる方がいると知ってとっても嬉しく思います。
    最終巻の解説も楽しみにしてます。

  4. ノン より:

    わ~お。「ジャパネスク」のコメントがたくさん!
    今まで私が大抵一番乗りで嬉しいような、決まり悪いような気が
    していましたが(^^;)ただの柏木さんと私の内輪盛り上がり
    じゃ偏っている感じがしますし、他の方も読んでいて下さって
    いたんだな、というのが実感でき嬉しいですね!
    桐さんは「ジャパネスク」ファンということで気が合いそうです(*^^*)
    見たままに切り取る京都さんはマンガしかお読みにならないタイプですか?
    これはあくまで私の憶測ですが(参考までに)
    柏木さんの感想を読んで惹かれたということと短いコメントを
    拝見した限りを考えると、見たままに切り取る京都さんは
    何となく「マンガ版では物足りなく感じられるかも」と勝手に思いました(^^;)
    勿論マンガ化されている山内直実さんの「原作を壊さずにかつ
    オリジナリティー(マンガらしさ)も加える才能」は素晴らしいです!
    もし宜しければマンガ版も小説(原作)もあまりお金のかからない
    方法、言っておられたマンガ喫茶や原作は図書館利用などで
    両方チラ見してみて気にいった方を読まれてはいかがですか?
    などと思いました。
    管理人でもないのに、出しゃばってすみません(汗)柏木さんo(_ _*)o
    さてさて。今回の柏木さんの感想、ほぼ同意(^o^)/デス。
    「ここはどこ。あたしは瑠璃。死んでたまるか」はかなり好きな
    台詞のひとつです。
    殺されてかけて、今本当に正に死にそうなのに、妙なところで
    底意地が出たり変に却って冷静になる人間の心理がすごく現れて
    いるな~と感心してしまったりします。共感します。
    誰しもありませんか?
    変なところで焦っている自分と妙に冷静な自分が同居している
    という瞬間(笑)
    以前に書いたようにこの巻の煌姫の台詞、大好きです(^^)
    嫉妬でわめきつつ、瑠璃が生き返ったのを喜びつつ、すすり泣きつつ、
    自分の勘を自慢しつつ、友情を告げつつ・・・(笑)
    人間の縮図をモロさ以外すべて表現していますよね(^^;)
    ある程度、平均的な常識よりズレていようが、あくまでまっすぐ!
    素直で飾り気がなく、常にタフであるところが感服します。
    自分のいいように解釈するところも、ポリシーを揺るがず、譲らず、
    自分をまず一番に考えるところは見習いたいな~。
    煌姫は身分と財力のある人の玉の輿など狙わなくとも、
    「人殺しの正妻より盗賊の愛人」と作品中で本人申告とおり、
    むしろ目指さなくとも、本人さえその気があれば「立派な盗賊になれるよ!絶対!」と思った私でした(苦笑)
    柏木さんの感想どおり高彬の格好良さ復活も読みどころのひとつですよね。
    切戸の向こうにさり気なく控えてくれているところは素晴らしい!
    本当にそういえば高彬は武官で腕もかなり立つと思い出させる
    瞬間です。
    理由が解らなくとも瑠璃のピンチも察して控えているところが
    「ああ~、さすが汚い世界も見て肌で感じた真のエリート平安貴族なんだな」
    と改めて思い感心した部分でもありましたね。
    ああいういざとなったら、暗黙の了解でも分かり合えちゃう、
    どちらかが相手を信頼しているからこそ納得済みで譲歩し合える
    夫婦は確かに羨ましいですね☆
    融は・・・(^^;)可愛いながらも、いつも「叶わぬ恋を
    (又は難しい恋ばかり)しちゃうのね」と少々苦笑いしつつ、
    同情してしまいます。
    最終巻の柏木さん的感想、私も楽しみにしております!

  5. より:

    こんにちはです。
    またまた、お邪魔してしまい失礼いたします。
    私は、ジャパネスクは文庫本と小説を持っております。
    リアルタイムで読んでいたころは、中学生でちょうど高校
    受験の真っ最中で親にそんなもん読んでないで勉強しなさい!とよく怒られた記憶がありますが、平安書物と知ると
    許してくれました。
    私もミーハー的な感覚みたいにジャパを好きなので、
    ここでジャパネスクを語るとちょっと感覚が違うように
    感じ取られたら申し訳ないです。
    でもジャパネスクという物語をすごく分析されていて、すごいなぁと思います。高彬ファンの私としては、高彬の格好良さ復活も読みどころのひとつ。という言葉を聞いてとても嬉しくなってしまいました。
    つたない文章ですが、失礼いたしました。

  6. ★桐さん
    初めまして、コメントありがとうございます(^^)
    「解説」を書いているつもりはありません~。
    感想です。あらすじを書いてるのも、
    読まれる方に少しは分かりやすいかな、と思ってです。
    『なんて素敵にジャパネスク』は、
    平安時代の勉強にも使えるだけのしっかりした世界背景が
    描かれているのも魅力ですよね(^^)
    瑠璃姫のような「ぶっとんだ姫」を描くには、きちんと、
    「ぶっとんでいない一般社会」を知ってないと書けませんもの。
    分析的ですか(^^;) だとしたら、私の性格ですね。
    ミーハー的に好きなだけなんですよ。
    私は男ですから、高彬や融の気持ちに共感したりしながら
    読んでます。鷹男の帝は、ちょっと違うかな?(^^;)
    ★ノンさん
    「ここはどこ。あたしは瑠璃。死んでたまるか」ってセリフは
    なんか印象に残りました。どうしてかはよく分からないんですが、
    そんなものかな、と思ってます。
    高彬が妻戸の外で控えているシーンは、分からないだらけなりに、
    一番分かって欲しいことは言葉に出さずとも通じ合っている、
    それを察することができて、しかも渋く決めている高彬がカッコ良いですし、
    瑠璃姫とのコンビネーションがステキですよね。
    融は、好きですね。私、一番親近感を感じるのは実は融です(笑)