氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク(5)陰謀編』集英社、1999年
帥の宮との直接対決を決意した瑠璃姫は、守家や煌姫と手を組んである計画を立てる。新三条邸の人々を「子宝祈願」のために大和の帯解寺に行かせて、その隙に帥の宮を誘き寄せる、というものだった。すべてが予定通りに進行すると思われたが…。
「帯解寺」の名前が出たことで母親の浮かれようは予想の範囲内としても、高彬の照れは可愛いと思います(笑) 瑠璃姫は男女間のことはうぶなので、恥ずかしがっているけれど。
しかし、妹が持ってる最近の少女マンガにはセックスのシーンなどが普通に描かれているだけに(『NANA』『彼氏彼女の事情』では妊娠→結婚ルートが普通だし…)、瑠璃姫が「懐妊」「おやや」という言葉だけで恥ずかしがっている様子はかえって新鮮。いや、もし私だって言われたら照れて、恥ずかしがるでしょうけれど、高彬と二人でいる時まで恥ずかしがるのは、やっぱり80年代に書かれたものだから?
瑠璃姫は新婚だし、まだ子どもは欲しくない、ってのはそんなものでしょうか。ちなみに私の両親の場合、結婚記念日から第一子である私の誕生日までがきっちり10ヶ月だったりするので…我が親ながら律義だなあ、と思います(笑)
帥の宮との直接対決は瑠璃姫の惨敗でしたが、失敗の原因を守弥に押しつけてましたね。もっとも守弥の計画を採用したのは瑠璃姫なわけなんですが。煌姫が瑠璃姫のために甲斐甲斐しく活躍するのは、目からうろこが落ちるかのよう。
しかし、帝というのは凄いんだなぁ、と改めて思いました。融は五位の侍従でありながら、ロクに顔も見たこともなく、声もたまにかけられるぐらい。信頼厚い高彬だからこそ、鷹男の帝の顔を見ることができるのだと。
そういえば1巻のクライマックスで、暴れん坊将軍のように馬に乗った鷹男が左馬頭に対して「おまえなどに、そう何度も目通りを許しておらぬから、知らぬも道理だ」と言ってますよね。東宮時代でこうなのですから、帝となるとますますなんでしょうね。今はテレビで帝の顔も声も拝める時代ですけれど、ギャップがすごい。しかし、高彬は自分の妻宛ての戯れ恋歌まで「御製」と律儀です。
瑠璃姫と高彬の子が生まれて、もし姫だったら…今3歳の東宮の妃もあり得て、瑠璃姫の父・内大臣-高彬の系統が将来の政権を握りかねず、それを心配している一派もある、という話。瑠璃姫は想像だにしていなかった展開に、政治の世界の嫌らしさに対する反発もあって呆れ、嫌悪すらしていますけど、ここは歴史学専攻の私には楽しい話です。
平安時代、天皇との血縁こそが権力を握る手段で、関係系図を作ることは政治史研究の第一歩ですものね。『源氏物語』だって、光源氏の恋物語という表の面とは別に、右大臣家と左大臣家、光源氏と頭中将の権力争い(というか天皇家の血縁を握る争い)が重要なストーリー要素としてありますものね。
《陰謀編》の名前の由来でしょうが、平安時代ものとしてはメジャーな陰謀ですね(笑) 実際、陰謀自体は違うとしても、背景としては1巻に書かれた大海入道事件とほぼ同じですもの。
ね?ね?いかにも平安時代の陰謀らしく面白くなって
きましたでしょ(^^)?
今の政治も似たようなものなのでしょうが、表で堂々と動くより
裏でしっかりガッチリ汚く(反感を買わないようにそれとなく)
根回しする「卑らしい政治的動き」はやはり平安時代の政治を
上手に表現していると私も思います。
日本人的・・・(笑)?
政治以外にも氷室冴子さんは「落窪物語」の翻訳をなさっていたり、
平安時代、他にも「ジャパネスク」の後の作品でも平安時代より
更に遡った時代をテーマとした作品を書かれていたり、古代史に
ついては、庶民から貴族までの風土や習慣、細かい部分まで
「かなりお詳しい」ので柏木さんがおっしゃった「帝に対しての
周りの対応」に驚かれたのも共感できます。
私も目からウロコが落ちました(^o^;)
柏木さんのおっしゃるとおり、煌姫はどんどん読み進める内に
ホント親しみやすく好感度UPしますよね~(*^-^*)
これからもっと好感度UPするとおもわれます、乞う期待!
人が他人と関わることにより、どんどん変わっていく、また
能天気だと思っていた人の過去の苦労がポロリと出てくるのも
とても好きです。
それでも各々みんな頑張っているんだから!って感じで(^^)
あとSEXシーンなどが少女漫画でも割合と多く描かれて来ている
のは、読者の供給があるからでしょうねえ~。
(ちなみに私は「NANA」も「彼カノ」も読んでおりませんが 苦笑)
恋愛物語で今や若い子向けに性の描写は欠かせないんでしょう。
話は元に戻りますが、瑠璃姫がウブでなくとも、やっぱり夫である
高彬に(具体的な子どものタネの張本人)いわれてしまったら
やっぱり「恥ずかしい」ですよ(苦笑)前々回くらいにも書き
ましたけれど・・・(^^;)
新婚でも「まだ子どもは欲しくない」という気持ちも女として
とても理解できます。特に現代女性で仕事もあったら余計複雑な
気持ちですよね・・・。
結婚したら「子どもは欲しい、むしろ作るべきでしょ」という
雰囲気の柏木さんの価値観には驚きました。
結局、妊娠の苦しみを経て産むのは女性ですからね。
周囲の(夫などの)協力を受けて出産するとは云えども、自分の
仕事や積み上げてきたものを一時的にでも投げ打って、
出産&育児に専念するのは相当覚悟や不安がいると思いますよ。
子供という新しい喜びを得てもその後 復帰する時の代償は
大きいものだろうと推察します。
これは現代では尚更、昔でもある程度女性の永遠のテーマかもしれません。
これから帥の宮の大海入道とも吉野の君とも全く違う密やかで
切ない陰謀を柏木さんがどう感じるかとても楽しみです(^-^)v
うーん、実は今、割と忙しくて、家に帰ると疲れていて
すぐ寝てしまいそうな勢いなんです~。
でも、ブログを3日空けたくないと書いたものです。
本の感想は、読んでいる間に気づいたことを携帯電話のメールで
打ち込んで、それを元にちょっと書き加えたりするだけなので、
文章量のわりに楽だから、と。
でも、やっぱり眠たい時に文章なんて書くものじゃないな、と思いました(汗)
普段ならもうちょっといろいろ、練ってから書くのになぁ。
とか書きながらも、明日は「せぬひま」に行ってくることに
なっているのですけどね(笑) 茂山千作師の間語が楽しみ(^^)
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帥の宮の陰謀は見事ですけど、私の好きな平安時代の陰謀家といえば
藤原兼家(『蜻蛉日記』作者の夫、道長の父)です。『大鏡』などに
書かれた彼の乱暴な陰謀ぶりは、逆にスカッとしますよ(笑)
氷室冴子さんの『落窪物語』は高校生の時に読んでました。
ちょうどセンター試験の古文が落窪だったので、
「これ知ってる♪」と楽勝でした(笑)
小学館から出てる日本古典文学全集『大鏡』の、月報にも
氷室冴子さんが文章を書いてらっしゃったのを見た覚えがあります。
普通は学者さんとか、もっと名の知られた作家さんが書くんですけどね。
煌姫はコスいですけど、一本線が通っているから良いですよね。
>>恋愛物語で今や若い子向けに性の描写は欠かせないんでしょう。
私はやっぱり要らないとは思うのですけどね。
もともと、あまり生々しい話って好きではないほうですし。
『NANA』も『彼カノ』も、妹のをとりあえず読んでますし、
面白いとも思いますが、大好きとはいえない部分はあります。
>>結婚したら「子どもは欲しい、むしろ作るべきでしょ」という
>>雰囲気の柏木さんの価値観には驚きました。
そういうつもりで書いたわけではないのですが、
少し不用意でしたでしょうか? 私には分からないから、
「そんなものなんでしょうか」と書いたまでです。
上に書きましたように、私は父母が結婚して、そのまま
生まれましたし、私の知ってる方で最近結婚された方で、
今、お腹を大きくされている方も2人もいますし….。
そういうことから単純に思ったままを書いたのです。
もちろん、妊娠から出産まで負担を受けるのは女性ですから、
私は男ですし、少し考えが足りなかったかもしれません。
ですが、子どもを持たない夫婦がおかしいとか言うつもりも
全くないのですけれど。
瑠璃姫がまだ欲しくない、と思うなら、高彬も何が何でもとは
言わないでしょうし、それで良いのですよね。