あらすじで読む名作狂言50 小林責 安東伸元 児玉信 野村小三郎 藤岡道子 帆足正規 世界文化社 2005-08 by G-Tools |
前に紹介した「あらすじで読む名作能」の姉妹本。ホントは「そろりそろり参ろう」の掲示板で、こちらの「名作狂言」のことを教えていただいて先に読む気だったのですが、偶然「名作能」の方が先に手元にやって来たのです。ということで、ようやく読み終えました。
正直なところ、文章はpeacememさんが仰るように本文は「名作能」に比べてやや単調な感じを受けます。6人で執筆されたわりに変化がないというか。狂言入門書としては山本東次郎師の『中・高校生のための狂言入門』や、野村萬斎師の『野村萬斎 What is 狂言?』の方が私は好みですね~。しかし、嬉しいのは各狂言方の皆さんが「○○を語る」という題で、選ばれた狂言の曲について語っていらっしゃることです。
私のひいき・善竹家からは善竹隆司師の「『節分』を語る」。これって確か今年1月の会で演じられた曲ですよね…。これを読むと、やっぱり見ておくべきだったと見逃したことに後悔しきり。関西の役者ではほかに、茂山千三郎師の『右近左近』『朝比奈』、茂山千作師の『素袍落』『枕物狂』があります。
それにしても私、いろいろな狂言を見てきたつもりですが、この本に載っている曲だけでもまだまだ観たことがない曲が多いです。『枕物狂』や『庵梅』のような「三老曲」に含まれる大曲はともかく、『福の神』『靱猿』『武悪』『抜殻』『二人袴』『業平餅』『千切木』『簑被』『貰聟』『朝比奈』『節分』『無布施経』『御茶の水』『悪太郎』『八句連歌』…。『木六駄』『川上』『鎌腹』『唐相撲』も一応ビデオで見たことがありますが、生ではありません。「名作狂言」50曲中21曲も未見って…悔しいです。もっといろいろな曲を見たいですね~。
ところで、『業平餅』のところを読んでいると、
代金の持ち合わせがない業平は、「代わりに歌を詠んでやろう」と言い、小野小町の雨乞いの和歌の起こした奇跡に帝が餅を賜ったという故事を物語り、そのあげく、「女房言葉で餅をかちん(歌賃の駄洒落)というのはこの故事による」とこじ付けをいう。
とありますが、これを読んで、関西では餅の入ったうどんのことを「かちんうどん」と呼ぶことを思い出しました(子どもの頃からの好物です)。非関西出身者の友人には「なんで餅が『かちん』なの?」と聞かれるのですが、これでやっと説明できます。元は女房言葉なんですね。辞書によると「搗飯(かちいい)」の転なんだそうです。狂言って教養というか、プチ知識の源泉にもなるなぁ(笑)
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柏木さん、こんにちは。
>狂言って教養というか、プチ知識の源泉にもなるなぁ(笑)
演者と観客とに共通の知識がないと笑えないなんて、高度な笑い話だ・・・と思ったけれど、成立当時はそれが普通の事だったのでしょうね。
このシリーズの、能の方は持っていて、ちびちびと毎晩の楽しみのようにして読んでいます。
この本は持っていないのですが、帆足先生の名前を発見、読んでみたくなりました。
先日のせぬひまのWSではとても面白いお話をして下さいましたが、能ではなく狂言の方の著者に名を連ねているとは・・・。
「かちんうどん」って初めて聞きました!歌への賃金ですか!う~ん、知らないことってたくさんあるんですね。こちらでは「力うどん」ですよ、餅入りは。この辺に歴史の差が出ますね、どうしても。
最近は西の方へ旅行したくてしょうがないんですよ。元々中国・四国・九州の方面が好きで行ってはいるんですけど、もう住んじゃいたいです。今一番行きたいのは宇佐八幡なんです。行きた~い。
★挿頭花さん
こんにちは~。
>>演者と観客とに共通の知識がないと笑えないなんて、高度な笑い話だ…と
それをいうならば、能の方がよほどですけれどね。
『源氏物語』や『平家物語』ぐらいは知らないと、能のあらすじなんて
全く分からないものもあるじゃないですか~(^^;)
帆足正規先生は笛方ですが、新作狂言をいくつも作られている
狂言作家でもあるんです。私も帆足師作の『死神』や『維盛』は
観たことがあります。茂山千五郎家を中心によく演じられていますよ。
特に『死神』。
★peacemamさん
「かちん」が「歌賃」というのは、狂言『業平餅』のこじつけで、
ホントは「搗飯」の訛りなんだそうですが(笑)
「力うどん」という店もかなり増えてはきています。
どうぞ、西への旅にいらしてくださいませ。なんだか「DISCOVER WEST」と
JR西日本のキャンペーンの名前を思い出しました(笑)