NHK落語名人選 (25) : 八代目 林家正蔵 (八代目)林家正蔵(彦六) ポリドール 1990-05-25 by G-Tools |
この数日、落語をCDで1日1番ずつ聞いています。昨日・今日と聞いたのが、この先代林家正蔵さんのCD。収録されているのは『山崎屋』と『中村仲蔵』です。両方とも爆笑するような噺ではありませんが、地味に風俗を丹念に描き出してくれる好感の持てる語り口です。渋い名演、って感じでしょうか。
『中村仲蔵』の主人公・中村仲蔵(初代)は江戸中期に実在した歌舞伎役者です。屋号は栄屋、俳号は秀鶴。役者の家の出身ではないらしいですが、厳しい身分制度・門閥の壁を乗り越えて、苦労を重ねて「名題(なだい)」と呼ばれる幹部級の役者まで上り詰めます。
そんな時、所属する中村座で『仮名手本忠臣蔵』が上演されることになります。しかし仲蔵についた役は五段目の斧定九郎役のみでした。五段目は「弁当幕」とも呼ばれ、客は昼食を食べていて誰も舞台を見ていない。しかも当時の斧定九郎役は無粋な山賊姿で、とても名題が演じる役とは言えなかったものだったそうです。
中村座を辞めて上方へ旅立とうかとも考える仲蔵。しかし「今までにないような良い定九郎をやってもらいたい、という意味じゃないの」という妻の助言を聞いて、柳島の妙見菩薩に日参しながら、工夫をいろいろ考えます。満願の日に蕎麦屋で見た御家人をモデルに、浪人風の色家のある新しい斧定九郎役を考え出します。
『仮名手本忠臣蔵』の五段目に登場する斧定九郎は家老の息子ですが、札付きの悪党で、勘当を受けて盗賊同然の暮らしをしています。定九郎は与市兵衛という老人が50両の大金を運んでいるのを見つけます。それは与市兵衛の娘・お軽が夫の役に立てるため、自らの身を売って用意したものでした。与市兵衛を刺し殺して、50両を奪って立ち去ろうとする定九郎。そこに猪が駆けて来ます。と、そこへ火縄銃の銃声が響き、やって来たのはお軽の夫・早野勘平。しかし、彼が撃ち取ったのは猪ではなくて、斧定九郎だった…というのが五段目のあらすじです。
八代目林家正蔵さんが語る舞台の場面は詳細で、目の前に浮かび上がってくるかのようでした。もちろん、私が一度『忠臣蔵』の五段目を見たことがあるから、というのもあるのでしょうが…。片岡愛之助さんが演じた斧定九郎の凄みのある悪人ぶりは、登場の短い役ではありますが、決して端役ではありませんでした。短いけれど、非常にインパクトのある役です。
そうした斧定九郎役は、昔の歌舞伎役者の工夫の上に成り立っているんですね~。この落語『中村仲蔵』で語られる話はあくまで落語ですから、事実かどうかははっきりしないそうですが、昔と今では斧定九郎の演じられ方がかなり違うことは確かだそうです。
もう一度、改めて『仮名手本忠臣蔵』の五段目が見たくなってきました(笑)
落語で仲蔵の噺があるのですね。
4〜5年くらい前でしょうか、海老蔵(当時・新之助)が仲蔵役の単発ドラマがありました。松井今朝子さん原作『仲蔵狂乱』というタイトルです。
最初は、白塗りじゃなかったのを、下っ端役者の仲蔵が工夫して上演した・・・というような筋でした。
こんばんは、みゆみゆさん。
コメントありがとうございます。
みゆみゆさんが前にご覧になった『仲蔵狂乱』と
話としては同じだと思います。
落語『中村仲蔵』の真ん中あたりに
「いよいよ初日。鏡に向かっていると白粉を塗っていると、
端の役者が『何だいありゃァ。エェ。栄屋の役は定九郎だろ?
定九郎は赤っ面だろ。あいつのことだから、何かやる気だな』」
なんて言葉があります。
客はあまりの良さに皆が誉めるのを忘れて、
うーんと唸ってしまう。
仲蔵は失敗したかと勘違いして、江戸の舞台も踏み納め、と
思いっきり演じるのでした。
あまり笑うような噺ではありませんが、
じっくり聞かせてくれる語り口が良かったです。
おっ、この録音、私も聞きました。
いいですよね~。
テレビで見た晩年の八代目林家正蔵師匠(その頃は彦六になっていたかな)も、木久蔵師匠が「笑点」で真似する「彦六師匠」も、「すんごく年をとったおじいちゃん」なので、その印象しかなかったんですよね。
でも、この録音聞いたら、印象が変わりました。
本当に名人だったんですね…
木久蔵師匠のHPを見てみたら「彦六伝」という噺をやっているそうです。
「ふるえるおじいさん」の真似には深い尊敬の念と愛情がこもっていたんですね。
http://www.toyota-art.jp/kikurakugo/
「笑点」で林家木久蔵さんが「彦六師匠」をネタにされているんですねぇ。
私、ホント落語も無知で、噺家さんの名前も殆ど知らずに
テキトーにCDを手に入れては聞いている状態なんです(^^;)
でも、この録音は良いですよね。聞けば分かるって感じです。
木久蔵さんの「彦六伝」もまた聞いてみたいものです。
とりあえず、次は上方落語で桂米朝さんの予定です。