和谷式 翁

 伊勢神宮と能の現行曲との関わりを前回書きましたけれど、現在の能楽は、大和(現在の奈良県)にあった猿楽の系統です。もちろん大和猿楽とは別に伊勢には伊勢の猿楽があり、神宮などを中心に活動していたわけです。そして現在、シテ方喜多流に籍を置いている和谷家は、元はその伊勢猿楽の家でした。

 和谷家には独特な『翁』が伝わっているのですが、それが来月23日、約四半世紀ぶりに伊勢神宮にて奉納されます。詳細は翁を勤められる長田驍師のサイトで紹介されると思いますが、ほかに関連する文章を見つけましたので、以下に引用しておきますね。

■和谷衡市「伊勢の能楽」(一部)
「はじめに申しましたが、呪師系の型が当家和谷に残っておりますので書いておきます。当家の翁は千歳・三番叟の他に、神楽と云う役が加わり脇方が勤め、三番叟はシテ方の少年が演じます。神楽は単衣狩衣、白大口に鳥兜を着け、翁が座に者くと正先より目付柱・脇桂の方等へ出、達拝を逆にするかの型をして拍子三ツ踏みます。由緒書に、世に和谷式翁と云い、古代の呪師猿楽の芸風が継承されて、今に残るただ一つのものであります。又少年に三番叟を舞わすのは、翁を特に神聖視した顕れかと思われます。」
引用元:http://www.ise.ne.jp/takigino/06-isenogaku/index.html
(『神宮奉納 伊勢薪能』より)
■(十四世)喜多六平太「白衣の翁」(一部)
「白衣の翁というのについて思い出したが、和谷の家には黒翁というのがあるそうだよ。それは装束でなく、面が真黒で大分変った面らしいよ。なにぶん流儀の籍には入っているが、ずっと喜多なんかより古い家だからね、そういう変ったものがあるんだね。翁の白黒なんて、話としちゃ面白いね。」
『六平太藝談』より)

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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5件のフィードバック

  1. SuzuP より:

    初めまして!!
    こんなブログがあるなんて、知りませんでした!!
    関西の方なんですね。
    私は東京のほうで、邦楽の学生さんや若手の方と一緒に自主企画という形で邦楽の演奏会をやってます。
    でも、まだまだ見る目ができてないのでたくさん勉強したいなと思ってました。
    ここのブログはすごく勉強になりそうです。
    これからたびたび寄らせていただきます。

  2. Nitta より:

    22~24日には内宮神苑で、舞楽も奉奏されますから、
    23日は能や舞楽ファンで賑わいそうですね♪

  3. peacemam より:

    こういうことを聞く度に「あ~やっぱり日本の文化は
    西が重いな~」と思います。悔しいですね。

  4. ★SuzuPさん
    初めまして! 管理人の「柏木ゆげひ」と申します。
    コメントありがとうございました。
    はい、関西で能や狂言を楽しみながら、
    つれづれを日記っぽく書いております。
    勉強になるだなんて…邦楽の自主企画をなされたりする方には
    こちらから教えを請わなきゃならないようなものですが。
    どうかこれから宜しくお願い致します。
    ★Nittaさん
    伊勢神宮のサイトを見てみたら、
    9月22日~24日は「秋の神楽祭」なんですね。
    「開催中には午前11時より内宮神苑の特設舞台(雨天の場合は内宮参集殿)に
     おいて神宮舞楽が一般に公開されます。
     また、この3日間、華道・能・狂言・献笛・吟詩舞・野点など
     全国の名家名流による奉納があり、どなたでも自由に
     参列・拝観することができます。」
    http://www.isejingu.or.jp/maturi/matubod4.htm
    とありました。『和谷式 翁』の奉納もその一環なんでしょうか?
    ★peacemamさん
    関西人から見たら、関東(東京)はいいな~と
    思って悔しいことがたくさんありますよ。
    能だって、国立能楽堂や横浜能楽堂などの公演、魅力的ですし。

  5. 上野旧姓伊野)左千子 より:

    和谷衡市様
    伊勢の能楽のサイトを見つけて懐かしく拝見しました。着々とお活躍の様子が伺えて嬉しいです。お体をお大切になさって下さいませ。
    上野(伊野)左千子
    (オーストラリアにて)