京都と古代エジプト

 さて、まだ20日の話です。この日のメインイベントは、今までに書いた「きもので楽しむ日本の伝統」だったのですが、私の家から京都は決して近くありません。ですから、狂言を見るためだけに着物を着て京都ってのももったいないと感じ、早めに行きました。

 ちょうど、3月11日~21日の間は、京都市「伝統産業の日」となってまして、伝統産業関係のイベントが街中で行われていたほか、着物姿なら地下鉄・市バスが無料だったり、博物館などで無料もしくは入場割引が受けられたのです。そんなわけで、京都文化博物館で催されていた特別展「古代エジプト文明3000年の世界」に行ってきました。

 京都へは阪急電車。京都本線「烏丸」駅まで行って、普段ならそこから京都文化博物館まで歩くのですが、この日は地下鉄「烏丸御池」まで1駅移動。無料チケットをここぞとばかり使い倒してます(笑)

 京都文化博物館は京都の博物館でも、最も行った回数の多い場所です。高校1年か2年の時に、初めて自分だけで京都に来た時もここに来た覚えがあります。それが藤原定家の子孫である和歌の家「冷泉家」展だったというから、随分シブい高校生だったものだと思います(^^;) 今の歴史や古典、伝統文化に興味を持ち始めたころだった気も。

 夏には毎年、片山家能楽・京舞保存財団の装束展が無料で開かれ、片山九郎右衛門師による解説も聞いたことがあります。無料ってのが良いんですよね(^^) 夏には金剛家の能面・装束展も金剛能楽堂でありますけど、そちらは有料です。

 「古代エジプト文明3000年の世界」展ですが、日本各地に収蔵されているエジプトの文化財を集めて、展示したものだそうです。さすがに大英博物館に展示されているような、王の像などはありませんが、人形棺やミイラのマスク、葬祭文書である「死者の書」、呪符の類などが数多く展示されていて楽しめました。しかし、日本国内だけでこんなにあるなんて、本国からの流出は大変なものなんでしょうね。

 展示の中で神像が多かったのが、神話に興味のある私にはたまらなかったです。多神教で、いろんな神が習合するのが面白い。ギリシア系のプトレマイオス朝が支配した時代(紀元前332~30)には、エジプトのオシリス神やアピス神に、ギリシアのゼウス神やヘリオス神まで合体してしまうあたりはもう…! 神々が集合していくのは、その神々の信仰形態の変化なわけで、そういうのを考えることによって当時の人々の精神が垣間見られるかもしれない、と思うと興味が尽きません。

 私はエジプト史は全然分かりません。高校で世界史を取っていれば、せめて簡単な通史ぐらいは頭に入っただろう、と後悔するのはこんな時。一度、考古学の授業で講義を受けたこともあるのですが、基本を全然知らなかいので役に立たないのです(汗) ただ、古代エジプトと呼ばれる王朝だけで30代の王朝交代がなされ、そしてプトレマイオス朝、ローマ支配時代を経て今に続くイスラム時代。西暦が始まったのはローマ支配時代なわけで、イスラム帝国に飲み込まれた641年って、日本でいえばまだまだ飛鳥時代! …ものすごい歴史を持った国もあったものです。

 私の古代エジプトに関する知識と言えば、せいぜい「出エジプト記」ほかの新・旧約の『聖書』に登場することと、あとは大学で後輩に借りて読んだ、篠原千恵さんのマンガ『天は赤い川のほとり』に登場するぐらいでしょうか。

 「出エジプト記」は、映画『十戒』で有名なモーセの物語なのですが、エジプトの歴史でいうと、第20王朝のラメセス2世の時代(紀元前1263年ごろ)ではないか、ということです。ラメセス2世は「カデシュの戦い」でヒッタイト王ムワタリシュの軍勢を破り、ヒッタイト王女を娶るのですが、これは『天は~』の番外編で描かれていましたよね。

 もう少し前の19王朝末期に、ツタンカーメン(トゥトアンクアムン)王が亡くなった後、ヒッタイトの王子ザナンザがエジプトの次期王となるべく派遣されますが、エジプト国境に至るまでに何者かによって暗殺されるという事件が起こったことが当時の外交文書に記されているそうですが、これも『天は~』に記されてましたよね。

 『天は~』はかなり史実を取り入れているんだ、と驚きました。史実を無視せず上手く使ったマンガって、大好きです(^^)

 でも、主人公のユーリって、最初は中学生なんですよね? いろんな王子さまたち(後のラメセス1世?含む)に迫られ過ぎで、「お前ら、そんなに女子中学生がええんかい!?」とツッコミを入れたくはありましたが(笑) 当時は結婚が早かったとはいえ…。

 なんだか『天は赤い川のほとり』に関する記事になってしまいましたね(^^;)

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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1件の返信

  1. 京都文化博物館に行った

     京都文化博物館に古代エジプト文明3000年の世界という展覧会を見に行った。結構すごい人。並んでないと展示が見れない状態であった。また、何か行事があるのか着物姿の女性が結構いた。
     展示は、日本にある古代エジプト関係の美術品を一堂に集めたものです。日