外科室

B00005EDFZ 外科室
原作:泉鏡花 監督:(五代目)坂東玉三郎
バンダイビジュアル 1992-08-20
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 前に泉鏡花原作、坂東玉三郎さん監督の『天守物語』のことを書いた時にいただいた、みゆみゆさんのコメントで知った映画です。同じ原作と監督…この『外科室』の方が古いですけれどね。

 小石川植物園の池のほとりで、すれ違い、互いに惹かれあった医学生の高峰と美しい貴婦人。その9年後、医学士となった高峰はその貴婦人(伯爵夫人)の外科手術を担当することになった。夫の伯爵はじめ、親族、公・侯爵などが立ち会う中で、うわ言で心の秘密が漏れることを恐れた夫人は麻酔を断固拒否。自若として麻酔なしで手術を受け入れた夫人は、高峰の手を強く握ってメスを自らの胸に深く突き刺し、高峰の「忘れません」の一言に微笑を浮かべて死に、高峰もその日のうちに後を追った…。

 あらすじにすると何でもないですが、私としては『天守物語』以上に楽しめました。小石川植物園ですれ違い、互いに惹かれ合う二人。その雰囲気が最高だったのです。理屈を超えて、訴えかけるセンチメンタリズム?とでも言えばいいのでしょうか。明治時代の華族、着物姿というのも盛り上げるのには満点の材料になっているように思います。

 個人的には良い能を見たときの感覚にも似ているように思いました。能だって、あらすじにしてしまうと、何でもないですけれど、良いものを見るとこれ以上ないぐらい感動してしまいますものね。

■主な役柄と配役
貴船伯爵夫人:吉永小百合
高峰:加藤雅也
清長:中井貴一

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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4件のフィードバック

  1. みゆみゆ より:

    外科室もご覧になられたのですね(^^)
    そう、特に派手なシーンとかはないのですが、
    雰囲気があって、素敵ですね。
    貴族役で玉三郎さんがお髭でチラッと出ているし、
    勘三郎さんも出ていたり、歌舞伎役者がちょい役
    で出ているのを発見するのも面白かったり。。。
    また鏡花作品を読んでみたいと思います。
    玉三郎さんもまた監督をすることはないのかしら?
    (舞台に専念したいのかしら?)

  2. 『天守物語』を返しに行って、邦画の棚を見ていたら、
    『外科室』もあったので、早速(笑)
    派手ではないですよね。ネットで『外科室』の映画の感想を
    探してみたら「内容がない」なんて書いてあるものも見ましたが、
    派手なものを期待して見たら、そう感じる方もいるかな、とは思います。
    でも、ドラマチックな展開を楽しむ映画ではなくて、しみじみとした
    二人の間に流れる雰囲気を楽しむ映画だと思います。
    なにせ原作からして観念的と言われてますから。
    坂東玉三郎さんは見事に映画化してるな~と感心するばかりで。
    舞台もステキですし、なにより本業ですけれど、
    また監督をされることも期待してしまいます(^^)
    貴族役で玉三郎さんが出てらっしゃるのですか!
    中村勘三郎さん(当時は勘九郎ですが)は、9年前のシーンで
    BGMになる琴を引く盲目の検校の役ですよね。渋かったです。

  3. より:

    高3です。
    おととい学校の授業でこの作品を見ました。
    明日この作品が表現しているものを作文に書くのですが、
    いまいちよく分かりません。
    もし何かアドバイスがあったらお願いします・・(_`)

  4. 俊さん、こんにちは。
    学校の授業で、『外科室』を見たりするんですね~。
    もう"明日"は過ぎてしまいましたが、作文はいかがでした?
    「この作品が表現しているもの」を書くって
    難しいですね。しかも授業ですしね。
    私は、どちらかというと「もの」よりも
    雰囲気に酔っていたので…うまく言えないです。
    俊さんが感じられたことを素直に書かれれば良いと
    思いますけれど…。
    お役に立てず申し訳ありません。