さて、昨日書いた通り、NHK教育で放送されている瀬戸内寂聴さんの「世阿弥の佐渡を歩く」の第1回目を見ました。題は「突然の転落」。
12歳で時の将軍・足利義満に出会って以来、その寵愛を受け、当時の芸術家として絶頂を極めた能楽の大成者・世阿弥。しかし、晩年は圧迫を受け、息子にも先立たれ、さらに突然佐渡に配流されるなどと、決して幸福とはいえませんでした。世阿弥の生涯については「能楽WS 3日目」で書いたことがあるので、良ければお読みください。
瀬戸内寂聴さんはご自身の「最後の小説」の題材として「世阿弥」を選び、その取材のために佐渡を何度も訪れているそうです。寂聴さんは、能『夢浮橋』(梅若六郎師初演、2000年)や狂言『居眠り大黒』(茂山千作師初演、2005年)といった新作を書いてらっしゃることで、能楽界とのお付き合いもありますよね。
番組内で佐渡のいろいろな各所を巡りながら、寂聴さんのコメントが入ります。「後に対立することになった甥の音阿弥に対して芸論書などを伝えも見せもしなかった、それは世阿弥の反権力性だ」なんて話にはちょっと異論を感じましたけれどね。
世阿弥作の九州を舞台にした脇能(神さまが登場して御代を寿ぐ能)には、それまで南朝側の勢力圏であった九州を北朝側が平定したことを寿ぐ意味がありますから、世阿弥が反権力的だなんていえないと思いますし、音阿弥の子孫である現在の観世家に、世阿弥自筆の『風姿花伝』ほか古文書類が伝わっているのは、世阿弥からの相伝があったことの何よりの証拠ですもの。(「香雪美術館に行ってきました」参照)
でも、「佐渡で、京都や奈良と同じ地名を見つけて、それまで考えようとしていなかった懐郷の思いに、ふけってしまった」「権力者に寵愛されることによって、常に不安を抱えていた」「父の観阿弥や息子の元雅に対して、才能がないことをコンプレックスに感じていたのではないか」などと世阿弥の心情を想像されているのは、なるほどと感じて面白かったです。
世阿弥が佐渡での様子を元に作った謡い物『金島書』が、番組のところどころで画面に登場し、併せて現代語訳の朗読がなされましたが、一度読めば、世阿弥の心情がすっと心に染み入ってくるかのような素直な文章で、一度読んでみたいな、と思いました。それに、番組中に何度か能の映像があるのも嬉しいです。
それにしても、佐渡の両津港にある「小面の塔」はインパクトがありますね。こちらのページに写真があるので、番組を見ていない方は是非ご覧ください(笑) ちょっと怖いです…。でもあの塔を見に佐渡が島まで行ってしまいたい気にもなってしまう、不思議な物体です。
私にとって、寂聴さんは『源氏物語』関係の著作を通して、私が大学で日本古代史を勉強することを決めさせた方です。まあ『源氏物語』から国文学ではなくて日本史を選ぶのが、我ながら変わってるなぁ、と思いますが(笑) 『十人十色 「源氏」は面白い』にあった寂聴さんと氷室冴子さんの対談を読んだことが、『なんて素敵にジャパネスク』との出会いのきっかけですから、ホント私に大きく影響した方ですね(^^)
今日の22時25分から放送される第2回目が楽しみ。ビデオの予約も完璧です!
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→みゆみゆの徒然日記:世阿弥の佐渡を歩く
寂聴さんの「世阿弥」どんな小説になるんでしょうね?
楽しみです。
文楽を題材にした本もありますよ。瀬戸内晴美時代。
ゆげひ様にはちょっと刺激ありすぎな内容ですけどね(^0^)
去年の海老蔵襲名の時、松竹座のロビーでお目にかかり
握手をしていただきました(^^)v
ゆげひ様のお師匠さんのごつごつした大きな手ではなく、小さい柔らかい手でした(笑)
「小面の塔」はびっくりしましたー!ちょっと怖いです!
佐渡は行きたいとは思うのですが、なかなか実行できずです。
こちらと本家掲示板のおかげで、2回目を見ることができました。ありがとうございます。
見逃してしまった一回目も、こちらでかなり内容がわかって嬉しいです。
瀬戸内寂聴さん、対談も面白いですよね。
最近読んだのが「すばらしき女たち」という20年以上前に出版されたもの。
宇野千代、佐多稲子、円地文子等との対談が収められています。
爆笑です。
円地文子とか佐多稲子って、かたーいイメージがあったんですが、こんなに面白い人だったのか…きっと、寂聴さんが上手に引き出したんでしょうね。
ぴあに連載された対談を集めた「いま、いい男」も面白かったです。能楽界では茂山童司さんと対談してました。
>かえでさん
はじめまして。
横からごめんなさい。
「恋川」ですか?読みたくて探しているんですが、いまだ果たせず…
ますます読みたくなりました。
それにしても寂聴さんと握手!いいなーっ。
あの面の塔・・・柏木さんも見たいと思われましたか!!私のブログでもそういうコメントが書き込まれていたので、皆さんそう思われるのですね(^^)私も、これを見に佐渡へ行きたいと思ってしまいました(笑)
寂聴さんの小説も楽しみですね。
<花兎さん、
はじめまして。またシリーズの再放送が来月あるそうですよ(^^)
新潮文庫【釈迦(しゃか)】瀬戸内寂聴
瀬戸内寂聴先生は1922年生まれ。
2005年の今は83歳と
いうことになりますが、
笑顔の可愛らしさといい、
矢継ぎ早に繰り出される
お言葉といい、
お書きになる文章の
色つやといい、
とても80代とは思えません。
寂聴先生の生涯は
ド
>花兎さま
はじめまして。はい!「恋川」です!
私も古本屋さん・図書館といろいろと探しましたがありませんでしたので、ネットの全国の古本屋さんでゲットしました。
今は、そのサイトはお休み中です(涙)
もしよろしければ本をお貸ししましょうか?
友達に寝込むよ、と言われましたが
私は結構、平気で読みましたけれど(汗)
先月、南座で母が寂聴さんに握手をしてもらったそうです(笑)
★かえでさん
寂聴さんの「世阿弥」、楽しみですね。
実は私が読んだ寂聴さんの小説は、『女人源氏物語』だけで、
ほかのものは読んだことがありません。
あとはエッセイか対談ばかりで。
小説はいろいろ母から聞いて、怖がってしまったり…。
今度もかえでさんに「ちょっと刺激ありすぎな内容」
…気になりますが、コワモノですね(^^;)
それにしても寂聴さん、歌舞伎をよく見に行ってらっしゃるんですね~。
★花兎さん
案内した意味があって良かったです。
私の書いたのは、あくまで私の受け取り方ですから、
みゆみゆさんが書かれたものもお読みくださいね(^^)
確かに寂聴さんの対談は面白いです。
仰るとおり、上手いんだと思うんです。
『すばらしき女たち』『いま、いい男』、
また探してみます~。
ところでAmazonに古本ですが、『恋川』を扱ってますよ。
「ヤケあり」とか書いてありますが…。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041265061/
★みゆみゆさん
あの小面の塔…インパクト強すぎですよ!
割とああいったものを作ろう、という話はありそうですけれど、
実際に作ってしまうのは、佐渡スゴいなと思ってしまいました!
>かえでさん
ありがとうございます。
うれしいです!
柏木さんが教えてくれたところで手に入らなかったら(ネット通販に未だに慣れてないので、ミスとかするかも…なので)、お願いするかもしれません。
その時はよろしくお願いします。
それにしても、お母様も寂聴さんと握手ですか。
うらやましい限りです…
>みゆみゆさん
ありがとうございます。
来月ですね、忘れないようにしておかねば。
みゆみゆさんのところに、先ほどお邪魔いたしました。
楽しそうな話題がいっぱいで、また寄らせていただきますね。
>柏木さん
ありがとうございます。
amazon初挑戦してみます。