能楽入門〈2〉能の匠たち―その技と名品 横浜能楽堂 山崎有一郎 葛西聖司 明石和美 小学館 1998-12 by G-Tools |
横浜能楽堂で1997年に行われた公開講座『能の匠たち』を元に構成した本です。横浜能楽堂関係のチラシは関西でも時々見ますが、その精力的な活動の様子は関西からも魅力的に思えます。離れているために行けないことが惜しいほどに…。
ところでこの『能の匠たち』は能面・装束・扇・楽器・鏡板・能舞台といった、能に欠かすことのできない道具や設備などについて、紹介しています。それぞれに関係した能楽師インタビューはもちろんのこと、あまり取り上げられることの少ない、それらの道具や設備の製作に携わる「匠」たちが主役として取り上げられています。
能面の二代目堀安右衛門さん、扇の十松屋福井、楽器の宮本卯之助商店etc. 公開講座で司会を務めた葛西聖司さんによるエッセイは、受け身の立場で「能の匠」たちのことを紹介しており、とても楽しめました。
最も楽しめたのが装束について。唐織や厚板といった能装束の種類について初めて分かったと感じたのがこの本だったのです。何よりも江戸期の装束復元を試みる山口憲さんについてのページにあった、
ひとことでいえば不経済。逆行だ。しかし能楽の奥深さの秘密は、その逆行、不合理、不都合の中にある
という言葉。
能や狂言の世界には色々なところに不経済・不合理・不都合な前時代的にも感じられる「もの」や「こと」が残っています。その中には変わるべき悪習だと感じる「もの」がある一方で、今一般的には消えつつある(または消えてしまった)、無くしてはならない「もの」も数多くあると思うのです。それが装束からも言えるという事実に少し感動をしてしまったのでした。
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