夜叉ヶ池・天守物語 泉鏡花 岩波書店 1984-01 by G-Tools |
今月末に「能楽劇 夜叉ヶ池」を見に行きますので、原作を読んでみました。泉鏡花の戯曲は、坂東玉三郎さんが監督をされた映画『天守物語』や『外科室』を見たり、波津彬子さんがマンガ化された『鏡花夢幻』を読んだりしていましたが、原作を読むのは初めてです。
『夜叉ヶ池』は一度でも撞き忘れれば、たちまち村が大水に飲まれて滅ぶという伝説の鐘をめぐる夫婦の話。背景に、夜叉ヶ池に住む龍神・白雪姫の恋心があります。また、『天守物語』は播州白鷺城の天守に棲む富姫と、人間の鷹匠・姫川図書之助の恋物語。
読んで最初にひしひしと感じたのが、言葉遣いや情景が幻想的でとにかく美しい、ということ。泉鏡花は母方の親族が能楽師だったり、生まれた土地・金沢が能に関わりの深い土地であることから、作品に能の影響があると書かれているものを読んだことがありますが、まさになるほどと。鏡花の生の文を読むことでますますその思いを強くしました。
それから、わりとテンポがいいので、どんどんと読み進めて行くことができました。また基本的にはシリアスな展開を見せますが、『夜叉ヶ池』での白雪姫の眷族たち、『天守物語』での朱の盤坊のように、ひょうきんでコミカルな登場人物がいることも魅力のひとつといえると思います。
なにせ舞台を見るわけですから、どうしても『夜叉ヶ池』の方を気合を入れて読んでしまいましたが、誰がどの役をどのように演じられるか、と考えて読むと一層、実際の舞台が楽しみになってきます。やはり、白雪姫が梅若六郎師かな…? 北陸七道を水に沈ませる絶大な力を持つ龍神ですもの、上手に能の技術が使われたら面白いだろうな、と思います。
…って、梅田芸術劇場のページを見ていたら、主な4人は配役が書かれていました。白雪姫はやはり梅若六郎師。鐘守の萩原晃が野村萬斎師。晃を慕う娘・百合が元宝塚歌劇の檀れいさんで、晃の親友・山澤学円がバレエの小林十市さんなんだそうです。他に茂山千五郎家からも3人(茂山宗彦・逸平・童司)、劇団新派や上方落語からも…バリエーションが豊か過ぎて、ちょっと逆にちぐはぐなものにならないか、という不安もないわけではないのですけれどね
とりあえず、舞台が楽しみです。
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→I would prefer not to.:[本]夜叉ヶ池、天守物語
→つきうさ 萬(よろず)日記:『夜叉ヶ池』泉鏡花
泉鏡花といえば『歌行燈』を読んだことがあります。
言葉遣いや情景の描き方は僕もいいなあと思いました。
展開も劇的で、クライマックスにかけて盛り上げていく序破急のようなものを感じました。
とはいえ、知らない言葉が次々に出てくるので本と辞書と行ったり着たりでしたが。
この作品にも能がからんでいて、というか主人公が能役者で、『玉之段』が効果的に取り入れられています。
もう一度読み返したい好きな作品です。
これを読んだときから泉鏡花の作品をまとめて読みたいと思っているのですがなかなか実現できないでいます。
いつの日か・・・。
とにかく『歌行燈』、お薦めです!
私が高校生くらいの時にテレビで深夜放映されているのをみた映画『夜叉ヶ池』では、玉三郎が百合と白雪姫をやっていました。
生身の女性「百合」役は・・・丑三つ時にこわいものみてしまった、て感じでした。三つ編みお下げとかしてはかなげにほほえまれても!!抑えに抑えた演技ではあるのですが、そうすると、女装した青年にしかみえなくて、どうにも違和感がぬぐえなかったです。
白雪姫の場面は台詞も仕草も歌舞伎のお姫様そのまんまだったのでこちらは安心してみられたしたが、玉三郎ご本人は「百合」の「子守唄」に鎮魂歌の意味がある、とおもしろかったようです(とHPでおっしゃられています)。鎮魂をうたう百合役も能楽師の方でみてみたいですねぇ。
『夜叉が池』はとても気になっている舞台ですが、生憎仕事なので見に行けません・・・。舞台楽しんで下さいね!
私も原作を読みましたよ。鏡花の文章は時に難解な言い回しですけど、美しい世界にのめり込んでしまいました。
いつか玉三郎さんの『天守物語』の舞台が見たいです!
★もっこすさん
もっこすさんも泉鏡花を読んだことがあるんですね。
やはり我々能楽ファンとしては、能との関わりから
鏡花を見てしまう部分もありますが…それがまた
楽しいですよね。
『天守物語』に登場する朱の盤坊のセリフなんかは
狂言の山伏に通じるものがあって、それがちょっとふざけた
場面にぴったしで良いですよ(^^)
また『歌行燈』も読んでみますね。
★みおろらさん
初めまして、ですよね。コメント書き込みありがとうございます(^^)
坂東玉三郎さんが演じた『夜叉ヶ池』もあるのですね。
「能」ではなくて、他ジャンルとの交流による「能楽劇」である以上、
生身の女性である百合を、本物の女優さんが演じられる方が自然だとは
思いますけれど、生身であると同時に、激情に駆られた白雪姫の心を
子守歌によって安んじさせることのできる存在であったり、
百姓与十が語るように、背中に鱗があるだの、夜ばいものが寝床を覗くと
長い白蛇がまわりを巡っていたというような、どこか人間離れした
存在でもあるのですよね。
そういう意味では「能」として演じられても面白いかもしれません。
★みゆみゆさん
「能楽劇 夜叉ヶ池」は大阪は土曜日ですが、東京は月曜日ですものね~。
泉鏡花&能楽関係でいえば、12月21日(水)~24日(土)にかけて、
東京新宿で『海神別荘』があるんですよね。東京には行けませんが(^^;)
http://www.morisk.com/next2.htm
今年に入ってから出会った泉鏡花ワールドですが、
能楽関係や坂東玉三郎さんとの関係もあって、
深くのめり込んでしまいそうです~(^^)
また舞台を見たらレポート書くと思います。
はじめまして。leafと申します。
夜叉ヶ池を検索していたら、ここにたどりつきました。
私も今日、梅田芸術劇場に観に行ってたんですよ。
全体的にはとてもいい舞台でしたよね。
迫力もあったし、能あり狂言ありで充実した内容だったとは思うんですが・・・。
どうして開場時間があんなに遅れたんでしょうね?開演も遅れるし、ちょっと出鼻をくじかれた感じがしてしまいました。
足の痺れを切らせてよろめいてる人もいたし・・・。
(パンフレットを買ってないので、配役が詳しくわからないのですが茂山さんの誰かかな?)
四つんばいで舞台袖に戻る姿って初めて見ました(笑)
かなりの狂言を観てきましたが、あんなことがあるんですねぇ・・・(汗)
初めてのコメントで長々と書いてしまって申し訳ありません。もし、気分を害されたらごめんなさい。
leafさん、はじめまして。書き込みありがとうございます。
私も梅田芸術劇場で『夜叉ヶ池』を観ました。
私の感想はそのうち書きますので、その時まで待ってください(笑)
しかし、開場・開演の遅れはとにかく気になりましたね。
最初の仕舞を見た時には、少々イライラしてました(^^;)
足の痺れでヨロヨロしていたのは、たぶん、茂山童司さんでは
ないかな、と思います。私もびっくりしました(笑)
leafさんがご自身のブログに書かれた感想を拝読しました(^^)
また、私の感想を書きましたら、お邪魔させていただきますね~。