アツい夜&横山大観展

大濠公園

流されるままに楽しい夜

さて、先日書きました「アツい!囃子のBEAT!!」を堪能した後の話。もっこすさん・瀬山さんたち、九州の能楽部学生さんたちと夕飯をご一緒。その場に遅れて能楽師の某先生もいらっしゃり、何故か私の向かいにお座りになったので、ひたすらお話させていただきました。

今は九州で活動なさっていますが、修行は大阪でなされた方で、私が大学1回生の頃はまだ大阪にいらっしゃり、私の大学能楽部自演会にも出勤下さっていたのを覚えています。そんなところから、関西の能楽トークが弾む(笑) 住吉神社能楽殿について、興味深いお話も聞けて楽しかったです。

その後は、予約していたホテルに向かう…予定だったのをキャンセルして、そのままの流れで某宅へ上がり込み、グダグダの朝を迎えます(^_^;) 次の朝、持っていた愛読書『桂米朝集成』を忘れそうになるなど大マヌケをさらしながら、師匠宅の虫干しに参加するという九州の学生さんたちとはお別れ。…虫干し、ちょっと行きたかったような。

大濠公園で「横山大観」展

その後はテキトーに朝食を摂って、大濠公園にある福岡市美術館の「横山大観」展へ。地下鉄の大濠公園駅から歩いて10分ぐらいだったんですが、とっても気持ち良かったです。一番上に載せた写真が大濠公園の景色ですが、青い空に青い池! 安っぽい私は、これだけで南国リゾートに来た気分です。

大濠公園も福岡に来るたびに来てます。なにせ能楽堂があるので。九州学生能楽連盟の大会の時に賛助出演して、あそこで仕舞を舞ったんだよなぁ、と思うと懐かしいです。《敦盛》のクセが舞いたい!といったのに、地謡メンバーが「謡がムズい」と嫌がったので、直前に曲を変えたため、型を間違えそうになったのはヒミツです…。

横山大観といえば、近世日本画の大家。といっても、私は芸術オンチですから、高校の時の日本史資料集に載っていた「無我」ぐらいしか知らないんですが…とても良かったです!

以前、京都国立近代美術館の「須田国太郎」展に行った時は、画題に興味のある能デッサン以外の洋画は苦手意識を感じたのに、今回の「横山大観」展はすんなり自分の感性に染み行ってくるというか、とにかく「うわ~いいなぁ」とひたすら関心してばかりでした。洋画と日本画の違いでしょうか。

ともかく私は薄っすらとしていて透明感のある絵が好きなのは事実。でも前見た「江戸の誘惑」展で展示されていた肉筆浮世絵の類なんか、派手なものが多かったんですけれど、あれ?

最初の方に展示されていた「屈原」。私、圧倒されましたね。屈原は中国春秋戦国時代の政治家で詩人ですが、讒言で追放され、諸国を放浪している間に祖国が滅んでしまい、石を抱いて淵に身を投げたという非業の人。横山大観が、恩師の岡倉天心の境遇と重ねて描いたものだそうです。画題が画題だけに、全体的に暗くて鬱屈とした絵なんですが、感じる思いの強さに惹かれます。

それから能好きとしては外せない「井筒」。幼い男女が二人で筒井戸の中を覗きこんでいる可愛らしい絵です。私、歴史画が好きという点でも良い作品。『伊勢物語』では井筒で背比べをしているのですが、覗きこんでいるのは、もしかしたら能《井筒》からの発想かもしれませんね。でも筒井戸があれば覗きこみたくなるのは、人の自然な心理かもとも思いますが。

あと、数多くあった富士を描いた絵。「天長地久」「正気放光」「霊峰飛鶴」「霊峰富士」…。「誇り高い」という言葉がまさに似合う美しさ、綺麗さ。「正気」は水戸藩の勤皇儒学者であった藤田東湖の歌から取られた名前で、いわば「愛国心」を表す、と解説にありましたが、「愛国心」といっても、最近多い、外国に対して攻撃的な愛国心とは全く別物の、自分の祖国(政府は別)に誇りや自信や愛を持っていることを感じる愛国心を感じました。

出費を抑える小旅行だったはずが、ついつい図録を買って帰りました。ああ、一人暮らし始めてから4ヶ月。一番増えたのが図録かもしれない。というか、本棚に入りきりません(苦笑)

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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