小鼓方幸流の成田達志師と大鼓方大倉流の山本哲也師による能楽囃子ユニット「TTR能プロジェクト」。その公演である「ライブ能inMitte」に初めて行ってきました。
会場のMitteホールは小さいものでしたが、その分出演のお囃子方たちがすぐ目の前! 3メートル、いや2メートルも離れていなかったのではないでしょうか。それだけに一回一回の打ち込まれる時の気迫や掛け声の臨場感は能舞台以上だったかも知れません。
TTRライブ能inMitte
◆12月2日(金)19時~ 於・Mitteホール
★素囃子『出端モジリ~八段之舞』
★素囃子『乱』 ★素囃子『酌之舞』
★素囃子『道成寺組曲』
(習之次第~大鼓一調~乱拍子~急之舞~ノット~祈リ)
出演:笛=竹市学 小鼓=成田達志 大鼓=山本哲也 太鼓=中田弘美
前半は「小書舞三様」と題して、小書(特別な演出)が付いた能で演奏される舞を三番。『高砂』で住吉明神が颯爽と現れ舞う『出端モジリ~八段之舞』、酒に酔った『猩々』が水の上で戯れ舞う『乱』、小書の多い『融』の中でも特に優美さを強調した『酌之舞』。
後半は「道成寺組曲」。亀井広忠師のCDにも収録されていた、能『道成寺』の音楽部分を組み合わせた演奏です。ゆっくりだけど重く始まる『習之次第』、竹市学師の笛の音を聞いているだけで(もちろん背後で拍を刻む大小鼓を含めてですが)シテが謡う「作りし罪も消えぬべし。鐘の供養に参らん」という言葉が思わず口からついて出そうになるくらい(もちろん、出してはいけないのですが)、雰囲気たっぷりでした。
続いて大鼓のソロ『大鼓一調』、そして小鼓のソロ『乱拍子』。今まで四つの囃子が入れ替わり立ち替わり掛け声をかけるような賑やかなものが続いたのに対し、一転してそれぞれ一つずつの楽器が無音の間をいかにして聞かせるかという演奏。特に『乱拍子』は小鼓の流派によって掛け声を長く靡かせる場合と短く切る場合とがありますが、幸流の成田達志師は後者。より「間」が強調されているように感じました。
前半が終わった時に山本哲也師が「音が出ている時は当然なんですが、『音のない時間』というのが本当に美しい音だと思うのです。それを感じていただければ…」と仰ってましたが、「音のない時間」と言ってもただ何もないわけではなく、次に何かが出ようとしているのを押さえ付けているような…そういった気の詰まった「無音」。ホント何物にも代え難い至福の時間でした。
『乱拍子』の次は、一転して激しい『急之舞』。笛も加わってノンストップで流れるように囃します。そしてまた一転して、一つ一つを刻むような『ノット』。神前や仏前で祈るような場面で囃される曲ですが、私、これ、いつも聞くたびに不思議と体が浮き立つようで大好きです。途中から太鼓が入って、最後の僧侶と蛇体の対決を表す『祈リ』。そして気持ちが高まりきったところで、音がふと止まる。その後拍手が起こるまでの、息のできない時間がたまりませんでした。
やっぱり大好きです、能楽囃子。本当に贅沢な時間を過ごさせていただきました。来年も引き続き催されるそうなので、絶対行くぞ~。
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→偏愛-音浴-紀行:無音から怒涛の音流
ゆげひさんが初めてとは以外でしたねぇ。
去年は全部聞きに行きましたが、今年はたったの2回しか行けなかったー!
乱れでも道成寺組曲でも、私は小鼓を打ち、シテもして大忙しでした(^0^)
本当に楽しかったですぅ。
日頃のストレスが解消される至福のひと時でした(^^;)
私も来年がんばって参りますぅ!!
柏木さん,おはようございます。
TTR能ライブ)
来年も是非体感したいですね。
(隣にいらっしゃったのが柏木さんかな?ははは。)
ライブでは「大鼓」と「笛」が特に苦しそうに見えました。
柏木さん,「大鼓」をされているのですね。凄い!!
まずは,能楽囃子にとても興味を持てました。
(もともと一噌幸弘さんの音楽を聴いて,
能に興味を持ったので,「当然」と言えば当然ですね。)
ただ,総合芸術の「能」に,言葉の壁を感じましたので,
そのあたりを低くなる術を探し,
能に近づきたいと思ってます。柏木さんのブログ&ウェブ
楽しみに拝見させていただきます。
あらためて感謝!!
初めまして。
鼓の成田さんに反応して書き込みさせていただきます。
私は小鼓をお稽古中なのですが、成田さんとは違う流派。
でも、一度、成田さんと友枝さんの「道成寺」を拝見し、その繊細さと勢いに感銘を受けました。
なかなか関西の囃子方さんを拝聴する機会がないので、ブログの記事はとても参考になります。
★かえでさん
はい、TTRライブ能に行くのは初めてだったんです。
いろいろと他の用事と重なることが多くて。
やっとの思いで行きました。
しかし「私は小鼓を打ち、シテもして大忙し」とは?
本当、楽しい時間でした。
★NAKAさん
>>(隣にいらっしゃったのが柏木さんかな?ははは。)
さて、どうでしょう?(^^)
当日、大鼓をつとめられた山本哲也師は、能楽大鼓の中でも
特に手の痛そうな打ち方をされると思います。
でも、そこが良いんですけれどね(笑)
笛の竹市学師も、全身を使って吹かれる様子は、
笛方の中でも特に激しいほうだと思います。
大鼓を習ってますが、凄いってことはありません。
下手くそなので(苦笑)
能や狂言というのは、見るのも楽しいですが、
習って、自分で演じるのがとんでもなく楽しいものなんですよ、実は。
能の言葉は…確かに難しいと思います。
ただでさえ難しい室町時代の書き言葉を、独特の発音で、
複雑な節使いで聞かされるわけですから。
ある程度の慣れは必要かもしれません(^^;)
また、能を御覧になって下さいね。
★monyaさん
初めまして。コメントありがとうございます。
成田達志師は、少しずつ関西以外でもお名前が
通っていってらっしゃるみたいですね。
私もお囃子の稽古(大鼓ですが)を受けている身ですが
自分の習っている流派のみではなくて、
良いものをたくさん見ていきたいものですね(^^)