観世流の能《竹生島-女体》、そして替の間狂言《道者》

大槻能楽堂2016新春能

新春スペシャル版能《竹生島》

昨日、大槻能楽堂の新春能を見に行ってきました。目当ては観世流能《竹生島-女体・道者》。「女体」は本来、金剛流・喜多流にのみある小書で、観世流では今まで演じられて来なかった演目です。

人から教えていただいたところによると、先代の観世宗家が先代の喜多宗家から贈られたものだとのこと。同じときに、観世流からは《松風-戯之舞》の小書が喜多流に贈られたそうです。

また、「道者」は和泉流のみある替の間狂言で、江戸時代全体でもほとんど上演記録がない、かなりの稀曲。詳しくは岩崎雅彦先生の「能『竹生島』の替間《道者》について」(『銕仙』549号掲載)をお読みください。

私は《竹生島》の新春スペシャル版、豪華な「珍しき花」だという感想でした。

実際の舞台を見て

橋掛におかれた舟に並ぶシテ・ツレ・ワキは《江口》を連想。春なれや花はさながら白雪のの謡で、シテが指し示す方向にツレ・ワキも向くのは、まさに同じ舟に馴れ衣だったと思います。

「道者」は、何と言っても最後の二組の肩車が圧巻。そのまま幕に入れるのか、上の人の頭が天井にぶつからないか不安でした(笑)

後シテは《絵馬》や《三輪》の小書の出立に似て、弁才天のはずなのに、天照大神のような雰囲気を感じました。仏教の天部はジャラジャラ着飾っているイメージなので、能でも天冠つけていた方が良いのでは?とは思いましたが、着けないのが観世流としての「女体」の特徴なのかもしれませんが…。

大槻能楽堂新春能

2016年1月4日(月)14時開演 於:大槻能楽堂
★観世流《翁》観世銕之丞・野村萬斎ほか
★観世流能《竹生島-女体・道者》
 シテ(漁翁/弁才天)=片山九郎右衛門
 ツレ(蜑女/龍神)=片山伸吾
 ワキ(臣下)=福王和幸
 ワキツレ(従臣)=喜多雅人・是川正彦
 オモアイ(能力)=野村万作
 アドアイ(道者)=深田博治・高野和憲・中村修一・内藤連
 笛=藤田六郎兵衛 小鼓=成田達志 大鼓=谷口正壽 太鼓=中田弘美
 後見=赤松禎友 地頭=上田貴弘

以下覚書。

作り物の宮は笛座前におかれ、台掛には波の模様。舟は橋掛三の松前に置かれる。

前ツレ蜑女は水衣を肩上げに羽織り棹を持ち扇懐中。ワキは舟で床机にかける。舟を下りる際に、ツレは棹を舟に置く。シテ漁翁の水衣の肩上げも、舟から降りる際に下げる。

御殿に入らせ給へばでツレが橋掛で扉を開く型をしてそのまま幕へ。シテは謡一杯に宮に入り姿が消えてから来序。

(ここから「道者」)
その来序でオモアイ能力が出、弁才天の謂れを語る。北国方から来た二組の夫婦の道者(アドアイ)が結びし講の末かけて、竹生島詣で急がんという次第で出、木の芽峠を今朝越えて、海津の浦より舟に乗り、行けば程なくこれぞこの、竹生島にも着きにけりという謡調子の道行。

竹生島が女人禁制かを能力に尋ね、弁才天は女体なので女人こそ参るべきだと答える。更に宇賀弁才天は頭上に夫を載せていると語る。数々の宝(蔵の鍵・宝珠・馬の角・数珠・何かの腋毛・二股の竹)を見せた後、

かくて祈念も過ぎぬれば、宝の拝見奉り、天女の姿をよくよく見れば、殿御を戴きおはします、我等も殿御を戴きて、いよいよ楽しくなるべしと、肩くまに殿御を載せ奉り、下向するこそめでたけれという謡となり、道者は妻が夫を肩車して幕に入る。能力も謡のあとに幕に入る。
(「道者」ここまで)

引き回しが下げられた宮には左右後ろに瓔珞が吊り下げられている。宮に白ボウジの上に茶色のリボン?が螺旋を描くように巻く。

後シテ弁才天は喝食鬘で左右に一筋ずつ鬘を垂らし、白狩衣・緋指貫、宮の中に安座した姿で現れる。持ち物は最初直刀。舞はイロエ?のカカリがついた盤渉楽。カカリから楽に移る時に、団扇に持ち替える。

下界の龍神現れたりの謡で龍神が現れ、早笛になってから一度幕に入り改めて出る。その間に弁才天は宮前の床机に座る。龍神は最初から打杖を構え、珠は左腕で抱え、ワキに渡す時のみ両手で持つ。

キリのシテ謡は弁才天が謡い、天女は宮中に入らせ給へばまでは弁才天が舞う。弁才天が宮に向かって下居すると、龍神が動き出し、謡も龍神の位に。天地にむらがる大蛇の形で龍神は幕に走りこむ。返シからは再び弁才天が舞い、両手に袖をかける脇能の決まりの型で舞い納め。

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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