善竹会 神戸狂言の会
◆2月19日(日)14時~ 於・湊川神社神能殿
今年に入ってから湊川神社へ能や狂言を見に行く回数が多いです。去年まではあまり行きませんでしたが、京都に行くよりは楽ですし、JRや神戸高速の神戸駅からすぐですし、実は(?)交通の便が良いことに気付きました(笑)
一番のお目当ては善竹忠一郎師が演じる『花子』でしたが、『附子』も『神鳴』も良かったです。私はやっぱり善竹家の狂言が好きだなぁ…。良かったのですが、『花子』の感想を書いていると長くなってしまいましたので、『附子』と『神鳴』の感想は省略させてもらいます。
★大蔵流狂言『附子』
シテ(太郎冠者)=善竹忠亮
アド(次郎冠者)=大藏教義
アド(主人)=善竹忠重
★大蔵流狂言『花子-替装束』
シテ(男)=善竹忠一郎
アド(妻)=大藏吉次郎
アド(太郎冠者)=善竹隆司
★大蔵流狂言『神鳴』
シテ(神鳴)=善竹隆平
アド(医師)=上吉川徹
地謡:善竹隆司・善竹忠亮・大藏教義・道下正裕
あらすじは「狂言『花子』の謡」に書いたので省略。妻に嘘をついて愛人の花子のところに出かけてしまう男が悪いのは当然なんですけれど、私が男だからでしょうか、「片時の間も離れられない」というセリフを妻が繰り返すのを聞いていると、独占欲の強い妻に、夫が窮屈な思いを感じているのだろうと少し同情。夫が気楽な相手である花子に会いたいと心が傾くのも無理はないかも、なんて思ってしまいます。
妻は夫が心配のあまり持仏堂を覗いてしまうのですし、太郎冠者に守り袋や巾着をやろう、疲れているだろうから休め、などと言っているのを見ても、基本的には心配りのできる優しい女性なんでしょうけれどね。妻は夫が自分を騙して、花子のところに行ったことを知ったとき、「ありように言えば、一日の暇をやらぬことはないのに、わらわを誑して…」と言います。まあ、正直に打ち明けたって許すとは思えないんですが(笑) 嘘をついて花子の元に行ってしまったことが何より腹立たしいんですね。
曲名になっている花子が舞台に登場しないのも象徴的です。花子の言葉は男の口を通してのみ語られ、花子は男の理想の女性であって、本当には存在しないのじゃないか…なんてふと考えてしまったり。まあ、考えすぎだと思いますけれど。
「狂言『花子』の謡」で謡の言葉を予習して行って本当に良かったです。少し文学的な表現が多くて、聞いただけでは分かりにくいだろう言葉も多かっただけに。謡の内容もそうですが、謡うこと自体が男の嬉しい気持ちを表現する手段なんでしょうねぇ。
善竹忠一郎師と大藏吉次郎師の組み合わせって大好きです。初めての『花子』をとても楽しませていただきました。大曲に相応しく各所各所でじっくり演じられてましたが、決して重々しいわけではない。こういうのが好きです。吉次郎師は次回の善竹兄弟狂言会(4月9日)にも来演されるそうで、嬉しいです。
演者の名前は伏せますけれど、私が初めて『釣狐』を見た時は演者の大変さだけは伝わってきましたが、一体どこが面白いのか分からなかったもので、それ以来「大曲」「秘曲」の類を見る時は少々怖いのですが、今回は見に行って本当に良かったと思えました。幸せな初『花子』鑑賞です。
聞いた話では「替装束」の小書は、出かける前と帰ってきたときの装束が違うことなのだそうです。前半は素袍の上(かな?←自信なし)に白大口をはいて頭に風折烏帽子でしたが、素袍の上(?)が本当に綺麗! 青地に何の模様だったのでしょうか? しっかり見取れなかったのが残念です。その下に着ている装束がチラチラ見えるのも素敵でした。
帰ってきたときに装束が違うということはワザワザ着替えてから花子のところへ行ったんですね…。花子への思い入れのほどが分かります(笑) 片袖を脱いでいるのは、事を終えた後のダラしない格好である表現だと思いますが、これもまたカッコいいんですよね~。
それにしても、やっぱり男が悪いよな~。「片時も離れない」という妻に対して「そなたがそう仰るもそれがしを思うが故、嬉しうは思へども」と言ってましたし…それだけ分かってるんなら我慢しろよ(笑)
「妻をたばかるのに男の知恵は増すと申す」…なるほど、名言です(笑)
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→ここだけの独り言:神戸狂言の会
→私発・世界行~華齢なる道~:善竹狂言会を見て狂言のメジャー化を思う
→チチチテテチ:昨日は狂言でした
いい「花子」を観る事ができてよかったですね!私はどうしても妻の身になって観てしまいますが、妻が「正直に言えば1日くらい」というところでいつもクスっと笑ってしまいます。嫉妬でムキーってなっているのに「ヤキモチじゃないわよ、嘘をついて行ったのが許せないのよ」って太郎冠者に訴えるところ、可愛いなあと思ってしまいます。正直に言ったら絶対家から出さないでしょうけど(笑)。
「善竹会 神戸狂言の会」を見に行って来ました。
ずっと楽しみにしていた忠一郎先生の「花子」を見て来ました。
しかし、
楽しみ!なんて言っていましたが、橋掛かりを歩む先生のお姿を見た途端思い出しました、この狂言が「楽しみ!」なんて気持ちだけじゃ見ていられないことを・・・。
初めて狂言「花子」を見
管理人さん、こんばんは~。
トラックバックさせて頂きました!
忠一郎夫×吉次郎妻の組み合わせは、本当に良かったですね。
そして、お二方とも装束がとても美しかったです。
一緒に見に行った後輩が、上演前にチラシの解説を読んで「このストーリーで品格を出すんですか?」(-_-;と不信がっていましたけど(笑)
よくよく考えれば、こういうストーリーで品格を出すからこそ極重習なのかもしれませんね。
いやぁー、いい会でした。
お初に御目文字致します。ブログ・掲示板とも毎日楽しくROMっておりましたが、私も「花子」の前半の装束に興味を惹かれたので書き込ませて頂きます。
私も狂言でああいう装束が使われるを初めて見ましたが、長絹かな?と思っていました。直垂なら裏地があるし、素袍なら胸紐が平緒だし、と消去法的に長絹と結論付けていました。鬘物の舞の時は羽織るだけですが、「俊成忠度」の俊成や、「班女」の吉田の少将が狩衣でない時の装束が、あんな風に腰で留めた着方をしていたような気がします。—特に「班女」については、おねえさんの名前が「花子」で、出会った場所も「美濃国野上宿」だったので、何か関係があるのかと思ってググって見たら、「花子」が秘曲とされる別の理由や、どうして「洛外にすまい」しているのか、どうして奥さんに頭が上がらないのか等についての謂れが紹介されていました。実際の鑑賞とは関係ありませんが、かしこきあたりのゴシップに関連するとは思っても見ませんでした。勝手にリンクしていいのかどうか分からないのでurlは止めておきますが、もし興味がおありでしたら(ご存知かもしれませんが)「花子 班女 狂言 秘曲」等でググればかなり上位に出てきます。—
で、前半の忠一郎先生の装束です。なんとなく長絹なのかな?と思っていましたが、柏木さんがご存知でないとなると自信がなくなってきました。ググっても装束については何も分かりません。書き込んでいるうちに更に気になってきました。どなたか御存知の方いないんでしょうか?
★peacememさん
こんにちは、peacemamさん。
いろんな『花子』について書かれた文章を読むにつけ、
『花子』を最初に見る時は、これぞと思う好きな役者で
観たいと思っていました。まさに期待通りの舞台で良かったです!
やはり、peacememさんは妻の身になって見られますよね~(笑)
客として、端から見ていると可愛いと思えないこともないですが、
やはり男に少し思い入れがあると、怖いなぁと思ってしまいます。
太郎冠者の「あのおかみ様は他のおかみ様と違って、
殊にわわしい方でござる」という恐れようもありますし…(笑)
でも「正直に言えば…」のセリフ、良く出来てます~。
★さおりさん
さおりさん、こんにちは。
コメントありがとうございます~。
善竹忠一郎師&大藏吉次郎師、また次も見たいです。
忠一郎師の装束のことばかり書いてしまいましたが、
吉次郎師が着られていた縫箔もステキでしたよね。
葛桶まで特別なものだったみたいですし…。
確かに男の浮気話以外の何でもないストーリーですものね(笑)
それで「品格」が問題になるなんて伝統芸能だからこそ、ですよね。
ただ笑いを取るなら、いろいろやりようはあると思うのですが、
上品に演じるのが狂言らしくて、私は好きなんですけれどね。
★鰻弁慶さん
初めまして。
毎日ご覧下さっているとのこと、ありがとうございます。
私はそんなに装束のことは存じ上げませんので、
鰻弁慶さんが考えられたように裏地云々と考えずに、直感的に
「素袍の上?でも、なんか違う感じ」というだけなので…(苦笑)
あれが気になって、自分なりに調べてみましたが、
『岩波講座 能・狂言 狂言鑑賞案内』に
替装束では長絹を着ることがあると書いてありましたので、
長絹で正しいのかもしれませんよ~。
『花子』にまつわるゴシップは
http://www5b.biglobe.ne.jp/~kabusk/sakuhin60.htm
のことですよね? 後水尾天皇と徳川和子との関係を
パロディにしたものだと…
興味はありますがホンマかな?と思いますけれど…。
読んでくださるのは何よりですが、ROMよりもコメントなどを
いただける方が何倍も嬉しいです。
また良ければ書き込みください(^^)
紹介していただいて、ありがとうございます。
私は狂言に関して知識が少ないので、このブログで少しずつ勉強していきたいです。
次回の善竹兄弟の会も楽しみにしています。
では、また寄らせていただきます。
チテさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
知識の多寡なんて関係ないですよ。
とにかく、舞台芸能ですもの、楽しむのが第一です(^^)
次回の善竹兄弟狂言会も楽しみですね~。